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第119話 エルフの里へ

 

 今日はシスターズはジョンボルバードと遊ぶ予定。オレは東の森のダンジョン前でボルト達人外組と一郎達ゴッドゴブリンのレベリング。

 今までの経験から行くと、半日もボルト達が暴れたら、一郎達はレベル20~30は行くだろう。今のステータスを確認する限り、そこまでレベルが上がると、平均2000は軽く超えそうな気がするね。


 普通の魔人相手なら俺の武具を着けてしまえば負ける事も無いね。


 結果、ま、予想通りというか、いつも通りというか、魔物は分からんということだ。


 レベルが30を超えたのはいいんだ、そのぐらいはオレも思ってたさ。

 普通、進化すると思う? ゴッドゴブリンって最上位種だと思うじゃん!

 なんだよ、ゴブリン(メイド)って。


 レベル30で全員進化しちゃってさ、背は伸びるわ、ステータスは大幅アップするわ、一郎以外全員女になっちゃうわでさ、もう意味が分かんない。

 だって二郎とか三郎って名付けたんだよ、それが女になってんだよ。進化で性別が変わるなんて誰が予想できんの。


 オレの中の進化って言ったら、上位種のオーガになるとかさ、鬼になるとかさ。そういうのが普通の進化だと思うんだよ。なんだよ、ゴブリン(メイド)って。ゴブリンメイジなら知ってるけどさ。一郎なんかゴブリン(執事)だし。

 オレのファンタジー感を返してくれ!


 進化で背も大きくなったゴブリン達は、服がもう合わなくなったから、オレのいつもの黒色Tシャツを出して、防具は造り直してやったよ。


 そしたら今度は戦闘に参加して、結構な数を倒すんだよ。時間も終盤だったから、そんなに多くは無かったけど、それでも一人十体は強そうなやつを倒してたよ。

 やっぱり強くなったな。そこは予想通りなんだけどね。



 ダンジョンに帰ると、三階層目でセンの手ほどきを受けてたね。オレも見てたんだけどさ。

 武器は皆、槍を持ってたよ。本当は薙刀がいいらしい。

「メイドの武器は箒ですから」だって。

 ゆくゆくは箒で戦いますので、伝説の箒を造ってくださいって……

 そんなの造れねーよ。見た事もねーわ。

 薙刀ぐらいは造れるから造って渡しておいたよ。

 収納バッグを持ってるんだから、その都度持ち替えればいいじゃない。


 一郎はレイピアだった。執事の嗜みです。と言ってたけど、そういうのって知らないし。お前達の勝手な思い込みだろ?


 途中からは帰って来たシルビアも参戦していた。

 いつの間に……


 でも、これだけ見てきたというのもあるけど、同じ剣のような武器でも扱い方の違いが分かってきた。

 センは斬るが主体。シルビアと一郎は突きが主体。シルビアも斬る事はもちろんあるけど、センのそれとはどこか違う。

 センに聞いてみると、剣は叩きつけるように斬る、刀は引くように斬る。同じ斬るでも別物だと教えてくれた。


 だから、シルビアが刀を持っても刃こぼれをすぐするので、剣を持たせていると教えてくれた。技の発動にも剣の方がやり易いらしいんで、このまま剣を使わせる方針だとか。


 バカだと思ってたけど、剣聖の称号は伊達じゃないんだね。色々考えてるじゃないか。



 シルビアにも、ジョンボルバードとはどうだったかと聞いてみたら、『ピーちゃん』と名付けたそうだ。


 体長二メートルオーバーの鳥がピーちゃん? おかしくね?


 ピードレンバッファ、通称ピーちゃんだそうだ。

 んー、いいのか悪いのか、よくわからん。

 今日はシスターズ全員で、それぞれ自分のジョンボルバードを決めて、背中に乗せてもらって飛んでもらったって喜んでたよ。

 ま、デカいからね、人一人ぐらいなら乗せても飛べるだろうさ。楽しそうで何よりだよ。



 翌朝、ようやくエルフの里に向かって出発できた。色々ありすぎたから、出発を延期しようと思ったぐらいだよ。


 一郎達には料理をたっぷり渡してあるから、後の事をお願いして出発した。

 料理の素材も欲しいと言ってたから調味料なども含めて鍋やフライパンなど一式渡しておいたよ。



 それで、まずは近いとこまでと思って、垂直落下型洞窟まで転送して、そこから地上に上がればすぐに行けると思ってたんだ。


 崖には魔物がたくさんいたね、忘れてたよ。降りる時も落ちるって感じの降り方だった事を思い出したよ。


 一度戻って出直そうと思ったら、皆して問題無いって言うんだ。

 安全第一はオレだけ?


 まぁ、ボルト、ハヤテ、キューちゃん、セン。誰がやっても殲滅するんだろうさ。

 オーバーキルね、よく見てるわ、それ。皆でやっちゃうんだね。


 でも、これでも魔物はいなくならないんだよな。次に来たら、また同じだけいると思うよ。ダンジョンじゃないのにね。



 地上に上がると、念のためここにも魔方陣を設置してからエルフの里を目指した。

 メイビーの話だと、ここからだと一時間程でエルフの里の結界に着くという事だ。結界まで行けば、里の中心までは一時間程掛かるが、メイビーの村までは三十分程度らしい。


 メイビーが出身の村を説明してくれた。

 メイビーが育った語り部の村はエルフの里でも閉鎖された村で、エルフの里の者が訪れる事は無い。偶に警備の者が村の外を通る程度だ。

 村は里の中心からは大分離れた所にあり、何かの行事が無い限り、里の中心に行く事も無かった。

 行事とは、里の王や女王の代替わりや、跡取りなどへ歴史の教育などに出ていくだけで、語り部の村から出るのは一年に一度もない。しかも行くのは一人なので、メイビー自身も中央部へ行ったのは数えるほどだ。


 だから、メイビーは自分の育った語り部の村への思い入れはあるが、エルフの里への思い入れは大して無い。

 逆に、エルフの歴史を知る語り部の村人メイビーは、中央部の者達への忌避感とダークエルフの長老達への嫌悪感が高く、エルフにもダークエルフにも関わりたくないという事だった。


 そんな話をメイビーから聞いていると、エルフの里の外周の結界に着いた。

 以前に見た、パルの故郷である妖精の森の結界と凄く似ていた。


「メイビー、これってエルフの里の結界で合ってる?」

「はい、間違いありません。ここからは私しか通れないと思いますので、先に行って結界を通れるように頼んできます」

「いや、いいよ。たぶん大丈夫。ちょっとルシエル?」

「はい」

「この結界って、たぶんパルの故郷の妖精の森の結界と同じじゃない?」


 ルシエルは荷台から降りて、結界に触れてみる。

「ご主人様、同じです。これなら結界の一部を解いて中に入れます」

 だろうと思ったよ。どっちも森の妖精だからね、同じ技を使ってると思ってた。


「気付かれないように入りたいんだけど、できそう?」

 泥棒じゃないよ、悪さをしに行くわけでもない。メイビーが中央を嫌いだって言うから、語り部の村にだけ寄ろうと思っただけ。

 エルフってプライドが高そうだからね、気付かれないうちに入って出て来た方がいいかなって思ってるんだ。オレの偏見だけどね。


「はい、大丈夫です。この程度ならすぐに解けます。このまま解きますか?」

「私もやりたい」

 あっ、そう言えばシルビアも結界師を持ったんだったな。でも、行きは慣れてるルシエルにやってもらおうかな。


「そうだったね、シルビアも結界師を持ってたね。じゃあ、帰りに頼むよ。行きは慣れてるルシエルに任そう。ルシエルの解除する所を見るのも参考になると思うよ」

「そうね、わかったわ」

 シルビアはすぐに聞きわけてくれた。それからはルシエルから目を離さないように集中していた。


 ホントうちの連中はオレの言う事をよく聞いてくれるんだ。ダンジョン以外はね。ダンジョンってそんなに楽しいもんかね。


 ルシエルはオレが通れるぐらい結界を切り、ハヤテに引かれてオレが通り抜けると、また結界を修復した。

 見事なもんだね、頼もしいよ。

 シルビアも「むー」と唸って感心していた。

 帰りは頼んだよ。もし失敗しても結界の外だからダッシュで逃げるけどね。


 メイビーの案内してくれた道は、結界から語り部の村に近い所を選んでくれたので、中央部の近くを通る事無く語り部の村に辿り着いた。


 今の所、俺の【ズーム】には何も映って無いね。エルフも魔物も映ってないよ。魔物もいないって平和な里なんだな。結界のお陰なんだろうな。


 村に入ると、遠目にエルフがこちらを伺っていた。

 見るだけで誰も寄って来ない。


 ムッホー! エルフがいっぱいだ! レベルはそんなに高くないね。でも、皆若いなー。見た目が二十歳前後の人ばかりだよ。あの中にも二百歳超えとかもいたりするのかな。エルフっていつまでも見た目が変わらないって、オレのファンタジー知識ではそうなってるんだけどな。

 でも、こりゃいいわ。見てるだけでも最高だね。オレここに住みてー。


 あれ? 荷台からの視線が痛いんですけど。なんで皆ジト目なの? オレの心の歓喜の声が出てしまった? いやいや、何も出してないはずだ。【御者】もいつも通りポーカーフェイスだよな。皆なんでジト目になってるんだ。


「ご主人様」

「は、はい。なんでしょう、ルシエルさん」

「今、良からぬ事を考えていませんでしたか?」

「い、いえ。なにも」

「では、なぜ荷台が揺れたのでしょうか。いつもは全く揺れませんのに」

 え? 揺れたの? それはオレには分かんないよ。荷台がいつも揺れて無いのだって知らないんだから。


「……」

「馬車さんサイテー」


 別にいいじゃねーか! オレだって男なんだしよー。つい目が行く時ってあるんだよ。


 皆からの痛い視線の攻撃を受けながら、メイビーに案内された一軒の家に着いた。

 ここまで通って来た道は、ホント長閑な所で、緑が濃く、小鳥もたくさん飛んでいた。

 こんな所でのんびり過ごせたらなーって思わせる、雰囲気の良い村だった。



「ここが私の家です。どうぞ入ってください」

「いや、先に行っておいでよ。オレ達はここで待ってるからさ」

「そんなわけには……」

「いいからいいから。色々話もあるだろうしさ、少しぐらい長くなってもいいから先に挨拶しておいでよ」

「……はい、わかりました」


 渋々納得したメイビーだったが、その顔はもう笑顔になっていて、少し目も潤んでいる。何年振りかは聞かなかったけど、レベル2男爵に捕まってたんだ。それだけでも家が恋しかったと思うよ。もっと早く連れて来てやればよかったな。


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