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第105話 港町

日付が変わってしまいました。

間に合いませんでした。

すみません。

 食事中にミランダリィさんの王都帰還は却下された。

 ミランダリィさんは現在魔人に連れ去られた事になっている。そのミランダリィさんが戻って来たら、後の勇者の子はどうなってるのか騒がれる恐れがあるから今は辞めておこうという事になった。


 魔人討伐は行ってもいいんだけど、先に船に乗ってからでも遅くは無い。だから、まずは船に乗って、それから魔人討伐に関して考える事にした。


 魔人の手掛かりとしては、ミランダリィさんの屋敷の地下で見た魔法陣。

 それと二人の魔人が言っていたセブンという魔人の名前。前回、迷いの森のレジン山に魔人討伐に行った時に、イレブンという別格の魔人の横にいた奴だ。もう一人ワンもいたな。

 あの時よりはボルト達も強くなってるし、今はセンも仲間に加わった。普通の魔人ぐらいならキャリッジシスターズでも対応できるだろう。

 問題は、あの魔法陣がどこに繋がっているのか、今でも作動するのかだな。



 港町ベイナンに入ると、船着き場にやって来た。

 桟橋には沢山の船が係留されていた。ほとんどが客船のようだが、荷物は港に沢山積み上げられている。

 あ、収納バッグや収納ボックスがあれば、大した荷物にはならないもんね。収納容量に差はあるだろうけど、船で遠くへ運ぶんだから沢山運びたいだろうし、収納容量の大きな物を持ってるんだろうな。


 俺の【ズーム】で見れる範囲内で、一キロ先ぐらいだと思うけど、そっちの方は魚の水揚げがされてるみたいだ。

 この世界だと魔物が水揚げされてたりするんだろうな。うん、やっぱりそうだ。『魔物の死骸』とか『魚の死骸』とか表示されてるよ。



 大きな客船だと100メートル以上の長さの物もあったりしてマストも二本や三本付いているものもある。外海に行く船なんだろうな。


 港町フォッスル行きはすぐに見つかった。

 帆なんか付いて無い、手漕ぎの船だった。ガレー船って言うんだったよな。でも、それなりに大きくて、長さは二十メートルぐらいあって、オールも片側十本出てるね。たぶん、奴隷が漕いでるんだろうな。

 ここは湾内という事もあり、波も穏やかだから近場だったら漕いだ方が確実なんだろうね。だって港町フォッスルって向こうの対岸だろ? 見えてるもん。

 【ズーム】の範囲外だから五キロ以上あるんだろうけど、あそこなら手漕ぎのガレー船の方が早いかもね。帆だったら風が無いと走れないもんね。


 このガレー船、見た感じだと三層からなる船みたいだな。上の甲板は荷物や馬車を置いておく所で、その下が客室か。最下層が漕ぎ手だな。


 料金や空きがあるか確認のため、桟橋に隣接している建物に行こうとしたらハヤテから待ったがかかった。


「主様、あれに乗るんすか?」

「そうだと思うけど」

「ちょっと勘弁してほしいっす」

「え? なんで?」

「あれって、あの柵みたいな嫌な感じがするっす」

 柵って、町を囲っていた柵? ボルトが聖水と同じって言ってたやつ。

 この船ってあの柵と同じ木で造られてるのか。そりゃ海にも魔物がいるから、そうするのが安全なんだろうね、色々考えてるね。


 でも、ハヤテが乗りたくないって言ったらオレが乗れないよ? キューちゃんだって嫌がるだろうし、センもダメだろうな。


 結局、先に人組が船で渡って、人外組は夜になったらハヤテに飛んで渡ってもらう事にした。だってあれだけフネフネって言われたら乗せてやりたいじゃないか。オレも、一キロだけ船の旅を満喫したよ。

 【御者】に帽子を被らせて無賃乗船だ。だって、乗った奴がいなくなる方が大騒ぎになるだろ? 帽子を被らせると忘れられると言っても、そこはオレの良心ってやつだよ。決して乗船賃を渋ったわけじゃないからね、いやホント。


 夜までは時間もあったし、水揚げ場を見学する事にした。

 たくさんの魚や海に棲む水系の魔物が水揚げされ売られていた。ここからメキドナや王都に運ばれるんだろうね。

 オレも買おうかと思ったんだけど、皆に止められた。

 今夜渡る時に獲ってくれるって言ってたよ。皆にしたら行き掛けの駄賃程度の事なんだね。



 特にイベントも無く夜を迎えた。初めての港町だと、何か起こると思ってたんだけどね。何も無かったよ。「人魚が釣れたぞー」とか、ちょっと期待してたんだけどね。


 キャリッジシスターズ(プラス)は、もう宿で寛いでいるって連絡があった。

 オレの仲間って皆『念話』が使えるんだよね。この前、魔道具屋で通信魔道具を買ったけど、オレ達には無用の長物だったよ。

 どこまで届くか検証はしてないけど、ボルト曰くこの大陸の端と端でも話せると言ってた。ホントかね。

 因みに、ダンジョン内でも届くそうだ。

 結構高かったんだけどね、あの魔道具。



 夜になり、人気(ひとけ)も無くなって来たのでハヤテに飛んでもらった。

 港と港のちょうど真ん中ぐらいに来た時に、ハヤテがホバリングのように海の上で静止した。


 まずはキューちゃんから。雷魔法を一発。ボルトには負けるが、大きな雷だった。


 プッカ~と魚や魔物が浮いて来る。浮いてきたものはオレが収納。小型から中型の魚や魔物だった。

 いや~大量大量! ん?


ザッパーン!

グオオォォォォーーー


 なんかデカいのが出て来た。


クラーケン:LV43。


 クラーケン? よく聞く海の王者的なやつ? いやいや、ここは内海だからこんな奴がいるのっておかしいだろ。船も沢山いるのに、今まで襲われなかったのか?


 このクラーケン、なんか怒ってない? あ~、キューちゃんの雷魔法で攻撃を受けて怒ってるんだな……オレ達のせいじゃねーか!

 ボルトは海の上だから出て来れないし、飛んでるからオレ達は安全だろうけど、怒らせたままじゃ港を攻撃されるかもしれないから、このままって訳にもいかないよな。


『ほぅ、少しはマシな奴が出て来おったな』

 どこにいるのか分からないけど、ボルトの呟きが念話で聞こえた。

『ボルト、どこにいるの?』

『主殿の真下でございます』

 あ、ホントだ。海の上に影があるよ。オレの影かボルトの影か分からないけど、あそこにいるんだな。


『ボルト、あいつをこのままにはできないと思うんだよ。何か倒す方法って無いの?』

『御意、お任せください。セン、足場を作れ』

「仕方あるまい、お館様のご希望でござる。某が手を貸してやろう【銀世界】!」


ピキピキピキピキピキピキ……


 センがユニークスキル【銀世界】を使うと、海面が凍って行き直径五十メートルぐらいに渡って凍り付いた。ボルトの足場としては十分すぎる広さだ。


『おい!』

 なにやらボルトが文句を言っている。

「某もお館様の前でいいところを見せたいでござるからな」

 センはそう言うとひらりと荷台から飛び降りて行った。凍ってる海面に降り立つと、スタスタとゆっくり歩くセンの目前には凍り付いたクラーケンがいた。

 そう、クラーケンはセンの【銀世界】で既に凍り付いてしまっていた。


 センは刀を一閃して凍り付いたクラーケンを真っ二つにした。

『ぐぬぬぬ』

 見せ場を取られたボルトが悔しがる。


 バチバチバチバチ……


 ボルトも凍った海面に出て来たが、身体中帯電しているのが見える。よほど悔しかったのかもしれない。

 でも、これってアカンやつだろ。


『ボルト! この内海でデカいのを放っちゃダメだぞ。フリじゃないからな、絶対ダメだぞ』

『ぐぬぬぬぬー』

 まじダメだから。こんな所でボルトの特大雷魔法なんか放った日にゃ、どこまで被害が及ぶか分かったもんじゃないよ。


ガオオオオオォォォォォ――――ン!!


 咆哮を上げると沖に向かって走り出すボルト。


 お、おい! ここは海の上だって。

 え?

 海面を走って行っちゃった。お前、水の上を走れたの?


 あ、光った。沖でぶっ放したんだな。


 その間に、センは荷台に戻って来て【銀世界】を解除。真っ二つにされたクラーケンはオレが収納。他にもまだ浮いていた魚や魔物がいたので収納していると、ボルトが戻って来た。


『主殿、先程のクラーケンなどの雑魚とは違い、大物を獲って参りました』

 そう言ってボルトがデッカイ魔物を何体も出した。


 ボルト達にも収納バッグを持たせてるからね、そこから出したんだろうね。

 ボルトとハヤテには皆が持ってる収納バッグと同じタイプを首輪に付けてるし、キューちゃんにはパルが持ってる小さな収納バッグを首輪に付けてる。センにはポシェットタイプにして腰に巻かせている。センは事ある毎に刀や剣を欲しがるから、収納バッグに入れさせてるんだ。


 で? なにそのデカい魔物達は。カニやエビみたいなものもいるし、前に倒した沼の主みたいに長いのもいるし、カジキみたいなものやサメみたいなものもいるけど、全部魔物の死骸ってなってるから何て魔物か分かんないよ。カニやエビって死ぬと浮いてきたっけ? ま、魔物だしね、そういう事もあるかもしれないね。


 それよりも……

『ボルト、お前水の上を走れたの?』

『否、水の上など走っておりません』

『え? いや、だって』

『影を出して、影の上を走っております。先程編み出しました』

『へっ?』

 さっきの怒りで編み出した技って事でいいのかな? 影だから空中は走れないだろうけど、水の上なら走れるんだ。


 ボルトが獲って来て海に浮かべた魔物の死骸を収納して、そろそろ行こうと思ったら最後にボルトが大物を出した。


 さっきのクラーケンに似てるけど、倍はあるだろう大きさと、足がニ十本ぐらいあった。

『此奴はテンタクルスという魔物でございます。クラーケンの上位種ですな』

 クアーッハッハッハー

 高らかに笑うボルト、ご満悦のドヤ顔である。


 ボルトとセンの視線がぶつかる。

「ガギググググ…」

 いや、もういいからね。そんなとこで張り合わなくていいからね。もう十分だから、十分海の幸は確保できたから。


「お館様、今晩一晩お暇を頂きたい。某、少し用事が……」

「却下」

「フェ?」

 フェ? じゃねーし。どうせ張り合ってもっと大物を獲って来ようとしてるだけだろ? もういいって。


 渋るセンも一緒に海を渡り、ようやく皆が泊まっている宿に到着した。


 明日はミランダリィさんの屋敷の地下で見た魔法陣を試すか、このまま南下するか。皆の意見を聞いてみよう。

 魔法陣で決まりのような気はするけどね。試すにしても安全のために作戦を考えないとね。



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