第106話 セブンのアジト
朝食後、皆の意見を聞いてみたが、予想通り満場一致で転送魔法陣を使う事になった。分かってたけどね。
ミランダリィさんにも確認したが、元々屋敷のあんな所に魔法陣など無かったという事だ。新たに掘られた洞穴みたいだったしね。どこから掘って来たのか分からないけど、【使い】のネコで確認した時には魔法陣までしか確認してないからね。
転送魔法陣だった事だけは解析できている。どこに繋がっているのかは分からないが、魔人の関係する所に繋がっているのは間違いないだろう。
転送先がまだ稼働しているかってのもあるけど、こればっかりは起動してみないと分からない。
それで誰が行くか、なんだけど……
こちら側で魔法陣の大きさを大きくしても、向こう側の魔法陣が小さければボルトは転送できない。だから、向こう側に誰かが大きく描く必要があるが、描けるのはオレとルシエルだけ。
オレもこの魔法陣だとはみ出すから、必然的にルシエルが行く事になる。
ルシエルだけだと危険すぎるから、誰かに付いて行ってもらわないといけない。
メンバーは、ルシエル、セン、キューちゃんの三人で行ってもらって、すぐに大きな転送魔法陣をルシエルに描いてもらって一度戻って来てもらう事にした。護衛としてセンとキューちゃんに付いて行ってもらうのだ。
町から出て、街道から少し外れて人気のない所を探す。
切り立った崖があったので、キューちゃんの土魔法でボルトも入れる大きな洞穴を掘ってもらった。
洞穴の中でルシエルが大きな魔法陣を描き準備完了。これで向こう側にも同じ大きさの魔法陣を描けばボルトも転送できるようになる。その横にオレがミランダリィさんの屋敷の地下で見た転送魔法陣を描いた。
キューちゃんに魔力を通してもらうと、転送魔法陣が起動した。向こう側の魔法陣も作動していたようだ。
すぐに転送されて行った三人。待つ身としては心配で堪らないが、ここは待つしかない。
センとキューちゃんで対応できない相手ならシルビアやライリィが行ってもどうしようもないのだ。
ミランダリィさんの屋敷の地下で見た転送魔法陣は忠実に再現した。大きさも同じだ。
この大きさだとボルトが小さくなってもはみ出してしまう。ハヤテでもはみ出す。ここは待つしかないのだ。
待つ事十分。ようやく三人が戻って来た。ルシエルが描いた大きい魔法陣で戻って来たという事は、無事向こう側にも魔法陣を描けたのだろう。
でも遅かったな。魔法陣を描くぐらいなら、一分もあればルシエルにも描けたはずなんだけど。
「良かった、無事だったんだね。遅いから心配してたんだ、誰も怪我はしてないようだね。」
「ははっ! 首尾は上々にてござる」
まぁ、三人とも無事でなによりだよ。
「なんでこんなに遅かったの? 広い場所が無かったとか?」
「いえ、魔法陣は向こうに行ってすぐに描きました。その後少し偵察してたんです」
ルシエルが代わって答えてくれた。
偵察ね、まぁそれぐらいはするか。そういうパターンの指示は出してないだけどね。
キュキュ『そんなにいなかったよねー。もっと“どっばーん”てやりたかったよねー』
え? キューちゃん? どっばーん?
「そうです。あの程度なら何も警戒する必要はありませんでした」
え? ルシエル? 何言ってんの? 偵察じゃなかったの?
「長船には勿体ない相手でござった」
え? 長船ってセンの刀の事だよな?
「もしかして、お前達……」
「はっ! 露払いは済ませましたゆえ、あとはお館様に足を運んで頂くだけでござる」
『なんだか物足りなかったよねー』キュキュー
「ご主人様……」
……倒してきちゃったのね。で、ルシエルのそれは何? 赤い顔して頭を下げて、何を待ってんの? あ! 撫でてーってやつ?
こっちは心配してたんだけどね、ま、無事ならいいか。でも、今後の事もあるから注意はしておかないとな。
「三人共、無事だから良かったけど、待ってる者達は心配してるんだぞ。抜け駆けもいいけど、そこも考えないとダメだよ。とても良くやったとは言えないぞ」
「むぐ、面目ござらん」
キュキュ『えーやっつけたのに~』
「申し訳ございません……」
センとルシエルは謝ったが、キューちゃんは納得行かなかったみたいだ。
でも、キューちゃんはともかく、ルシエルにはセンを止める事はできなかっただろうな。
ルシエルにはよく頑張ったと頭は撫でてあげた。もう一つ注意したい所だけど、さっきも注意した所だし、また注意するのは可哀相かな。センやキューちゃんが無茶をしても、ルシエルは戻って来るように後で言って聞かせよう。
折角、大きな転送魔法陣を描いてもらったし、センの勧めもあったので全員で転送魔法陣を使い、転送先に行ってみた。
転移した先は、広い部屋だった。
天井も高く、大きな広い部屋だった。30メートルぐらいの長さの壁で、天井も10メートル以上ありそうだ。
魔物はいなかったけど、アイテムや武具が散らばってるね。
……ちょっと違うけど、この雰囲気……知ってるかも。
「ボルト、ここってあれだよね?」
『御意、ダンジョンですな』
だよねー、【ズーム】で壁を無視した映像がハイアングル視線が見えてるもん。ベヌディアダンジョンの時と同じだよ。隣の部屋にはたくさん魔物が見えてるよ。この部屋に散らばってるのはドロップ品かな? でも魔石は見当たらないね。
しかし……ちょっと雰囲気が違うんだよなぁ。この部屋って凄く広いし。
「ご主人様、私もさっき来た時にも思いましたが、この場所はダンジョンのセーフエリアに似ております」
なるほどー。それでちょっと雰囲気が違ったのか。
「そういう事だったんだね、ルシエルありがとう。でもセーフエリアにしては凄く広すぎない?」
「それはダンジョンですから」
……ダンジョンだから不思議な事も当然のようにあると。一言で片づけられちゃったね。ま、疑問が解消してスッキリしたよ。
という事は……
「ルシエルー、いつも通りわたしが先頭でいいのかニャ?」
「いつもと違ってボルトさん、ハヤテさん、センさん、キューちゃんが加わりますが、先頭はライリィでいいと思いますが……どうでしょうかご主人様」
こうなるよね。やっぱりか、もう行くのは決定なんだな。
順番をオレに聞かれてもわかんねーし。ダンジョン経験二回だし。あ、ゴブリンダンジョンがあったか。これで四回目だな。
と、その前に。
あそこに見えてる牢の中に捕らえられてるのは勇者の子だろ? 解放してあげるのが先だね。
ミランダリィとキャリッジシスターズに人質解放をお願いした。ルシエルだけは、先行して来たメンバーだからこっちに残ってもらった。
「セン、ここに魔人っていなかったの?」
「はっ、なにやら【魔眼】を使って来た者がおりました。その者はルシエルの【魔眼】で相殺され【天眼】で逆にお返しを食らってたようでござるな。某は【龍眼】がありますゆえ、まったく効きはしませぬが」
「【龍眼】?」
「はっ、【龍眼】とは高ランクの龍なら誰でも持っております」
「それならハヤテも?」
「はっ」
だって【鑑定】で出て無いじゃん。なんで?
《【龍眼】は内容が特定出来ないので出していません》
特定出来ないって、結構メジャーなスキルのような気はするんだけどね。
《【龍眼】で出来る事は、精神干渉、精神異常耐性、鑑定、未来視、千里眼など、使用者によって得意なものが違います。熟練度が上がるからといって、出来る事が増える訳では無いのです。【龍眼】と表示すると勘違いをする恐れがありますので、出していませんでした》
確かに、【龍眼】としか出なかったら思い込んじゃったかもしれないね。
センは何が出来るんだろ。
「センの【龍眼】は何が出来るの?」
「はっ、某は【鑑定】と【精神異常無効】でござる」
「見せてもらっていい?」
「はっ」
センが【龍眼】を発動。
センの目が金色になり蛇の様に縦に細くなっている。
「先程の奴は【魔眼】を使って精神干渉に使ってきたようでござるが、某の【龍眼】が自動発動し奴の精神攻撃を無効にしたのでござる」
なにそれ、【龍眼】や【魔眼】を持ってるだけで、そんなバトルになるんだ。
《completion of data input》
あれ? なんで英語? なんか胡麻化そうとしてない? 普通にデータ入力完了って言えばいいのにね。
センの【龍眼】を解析できたって事ね。ちなみにハヤテは【鑑定】と【精神異常耐性】と【千里眼】だそうだ。あんまり使う事は無いって言ってたけどね。
「で、その魔人はどこに行ったの?」
話が脱線してしまったが、ここには魔人がいたんだよね。
「はて、どこでござろう」
「あ」
覚えて無いセンに対して、何かを思い出したルシエル。ルシエルの向ける視線にオレも意識を向けてみると、壁が凍ってて何か張り付いている。
あ、いた。セブン・キューベック:LV63。
他に意識が行きすぎてて気付かなかったよ。前に会ったときから比べてレベルはあんまり上がってないみたいだね。
これなら装備の分もあるし、ルシエルでいい勝負になるかな。
でも、壁に氷付けされてるって事は、キューちゃんがやったんだろうね。
HPは殆ど残って無いけど、なんとか生きてるね。他の魔人の事とか聞けるかな?
「キューちゃん、こいつを氷から出せる?」
キュキュ「できるよー」
キューちゃんの火魔法で氷が溶かされ魔人が氷の中から解放された。
あっ! 止どめ?
セブン……死んじゃった。
死体となったセブンはみるみるうちにダンジョンに吸収されて行った。魔石も残らなかった。
ダンジョンで生まれたやつじゃ無いから魔石も吸収されちゃうのかな? またナビゲーターの舌打ちが聞こえたよ。
参ったな、何も聞けなかったよ。
他の魔人の情報が欲しかったのにな。でも、勇者の子の解放はできたし、後は王都に戻るだけだね。
その前に皆ダンジョンに行くって言うんだろうね。
はぁ~
すみません、色々な事が重なり何も手が付けられませんでした。
大変遅れて申し訳ありませんでした。




