最終日と延長戦
本日2話目です。
最新話から来た方は御注意下さい。
15話 - 最終日と延長戦。
騎士に連れられ、館の応接室へ向かうと、そこにはリリーさま、レイラさま、そしてショコラさまが揃っていた。
「遅くなりました。」
「いえ、来ていただけて感謝いたします。」
ショコラさまが律儀に頭を下げ礼を言ってくるが、今はそれどころじゃないだろう。
「それで現在はどのような状態でしょう?」
「部屋には先日渡されたメガネだけが残されていました。ノエルの姿はなく、窓が開いていたことからそこから進入して連れ去られたようです。」
メモ用紙のようなものを見ながらレイラさまが答えてくれる。
なんとまぁ。。。
メガネをかけてないから目印も反応しなかったのか。
「目印がなくなったのが痛いっすね。。。」
正直帰る前日とかいうこのタイミングで事が起こったのは何か仕組まれている感じがする。
「門兵や街を巡回している騎士からは不審人物は見当たらなかったとの報告も受けております。」
「。。。人を連れ去った時なんかに隠しておける、もしくは隠れておけるような場所というのはこの街にはあるのでしょうか?」
貴族の屋敷の地下とかそういうのはありそうだけど。
っていうか、犯人は豚くんの関係者なのかね。
これでまったく違う人だったら笑えないっすな。
「街の端の方に倉庫街があります。隠れるとかならそこが怪しいかと。。。曲がりなりにも彼は技師であり、商人でしたし。」
「やはり今回の事件はあの豚くんが主犯だと?」
「断定は出来ません。が可能性は限りなく高いです。」
ですよねー。
リリーさまはさっきから窓の外をじーっと見て物静かにしている。
。。。ものっそい無表情で。
触れないで置こう。
うーん、どうしたものか。
とりあえず場所だけでもわかればな。。。
『くすくすっ。精霊ちゃんはいりませんかー?』
腕を組んでどうにか場所を探し出す術を考えていると耳元でこっそりといった言葉が聞こえる。
きた!!!これで勝つる!!!
「いる。ものすごいいる。助けて欲しい」
急に独り言を始めたと思われみんなに急に顔を見られるが、精霊が出てきてくれたということがわかってからみんなが詰め寄ってくる。
おいおい、そんなに一気に来るなよ。俺の身体は一つしかないんだぜ?
『くすくす。そんな展開はこの先もありませんよ。』
あ、はい。
「すまん、ノエルちゃんが攫われた。まずは場所を探し出すのに協力して欲しい。対価はなにを渡せばいい?」
『くすくす。いつものように魔力でいいよ。他の子達にも声かけるからちょっと多めにもらうね』
「好きなだけもっていけ。ノエルちゃんが危ない場合は守ってやってくれ」
『くすくすっ。了解。』
身体からごっそり魔力を持っていかれる感じがして、膝をつく。
うほぅ、これ残り1割もないぞ。。。
精霊はキタキタキター!とか言いながら探しに行ってしまったようだ。
声が遠のいていく。
持っていきすぎだろう、精霊よ。。。
「睦さん、今のはやはり?」
「はい、精霊に探すのを手伝ってもらうようにお願いしました。何かしらの返答があるまで準備をしておきましょう。」
「わかりました。それにしても私の身内に手を出すとは。いろいろ思い知らせてあげないといけないですね。」
黒いっ。ものすごくにこやかな笑顔でそんな台詞を言われると背筋が寒くなる。
リリーさまは準備をしてきます。といって部屋から出て行ってしまう。
なんの準備だろう。。。
レイラさまは騎士隊を集めてどんな対処も出来るように。と命令をしている。
ショコラさまだけはニコニコしながら他の人がしていることを椅子に座って眺めている。
「あの、ショコラさま?」
「あら、ごめんなさいね。こうしてないと。。。うずくんですよ。」
「えっ」
「愛娘が。あの人の大事な娘が。不遜な男の手で触られているかと思うと。」
「えっ」
「あの人の残していってくれた刀が早く。。。早く。。。と訴えてくるんですよ。」
「えっ」
「うふふ。。。。」
いつ手にしたのかわからない刀の鞘に頬ずりをし始める。
あ、これ触れたらあかんやつや。
見なかった振りをして精霊の帰りを待とう。。。
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それから小一時間ほどしたところで、耳元で再度精霊の声がささやくように聞こえた。
『くすくす。みぃつけた。。。』
!?
こえぇって!
『くすくすっ。わたし精霊ちゃん。今あなたのうしろにいるの。』
おい、そこ違うだろう。
頼むからいまだけでいいから真剣にやってくれ。
『くすくす。冗談ですよ。倉庫街の奥から2番目の小さな倉庫。そこにいますよ。オークっぽいのと一緒にいたよ』
よしきた。
「みなさん、精霊から連絡が来ました。やはりと言っていいか、倉庫街だそうです。」
その言葉を聞くや否や、各々無言で部屋を出て行く。
だからこえぇって。
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刀を持って先頭を歩くショコラさまの後ろにリリーさま、そして騎士を引き連れたレイラさま。と続いて倉庫街へ歩いていると、夜にもかかわらず街にいる人達は何事かと興味を持ってこちらを見る。
大名行列っていうより、この並びは院長総回診とかのほうがしっくりくる。
そして問題の倉庫の前につく。
連れてきていた騎士さんたちを倉庫の回りに配置。
音が出ないようにそれぞれは金属鎧をつけないで来ている。さすがだね。
ここに向かう途中に話したんだけど、内部に突入するのは俺とショコラさまとリリーさま。
レイラさまは表で騎士達の号令を取るらしい。
倉庫の脇の扉の施錠を確認。
よし、かかってない。
音をたてないようにこっそり開ける。
倉庫の中は明かりがついていなくて真っ暗。
だが先の方に見える小部屋からは明かりが見えていて、なにやら高笑いが聞こえる。
あぁ。。。
典型的な悪役フラグ乙。
明かりの見える小部屋の前まで音を立てないように移動し、扉の前で3人は待機する。
ショコラさまもリリーさまも中から聞こえてくる声を聞いて能面のような無表情になっている。
暗闇の中でうっすらと明かりに照らされるその顔。。。とても怖いです。
腰につけているナイフを構えて扉をあける。
あ、蹴破ったりしないよ。僕はお上品だからね。
『くすくす。ダ・ウ・ト』
やかましい。
というか水ないと出て来れないんじゃないのか?精霊よ。
『くすくすっ。あれだけ魔力もらってるからね。』
さいですか。
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私がベッドですやすやと眠っているノエル嬢の頭を撫でていると急に扉が開く。
何故だ!何故お前達がここにいる!!
この倉庫は私の名前ではない名義で借りている倉庫で早々簡単に見つかるはずもないのに!
「。。。おまえさん、背中が煤けてるぜ」
メガネとやらの考案者のレンズとかいう若造が私に対して何かを言っている。
その後ろには元領主のリリーさまとその義娘のショコラ様が冷たい目をして私を見ている。
もう言い逃れはできまい。
「こんな夜中になんの御用かな?」
「ノエルちゃんを引き取りにきました。大人しくこちらに渡していただけませんか?」
口調は丁寧だが、右手に持っているナイフに力が入っているのは見逃せない。
こちらもベッドに隠してあるナイフを持ち、いまだ寝入っているノエル嬢の首に近づける。
「何をおっしゃっているのやら。ノエル嬢はここで私と暮らすことになったんですよ?」
ナイフを首に近づけているからか若造達はこっちに寄って来れない。
「そもそも私達はお互い愛し合っているんですよ?見てみなさい。この寝顔。本当に私のことを拒絶しているのであればこんなに安らかに寝ていないでしょう?」
まぁ睡眠薬で眠らせているだけなんだがな。
ある特定の解毒薬の匂いを嗅がせないと絶対に起きないほぼ劇薬のような睡眠薬だ。
しかもしれはこの部屋にはない。
レンズとかいう若造はくっ。。。とか言いながら持っているナイフに力を加えているがこっちには向かって来れない。
まだ若いな。
すると後ろに立っているショコラ様が若造の前に出てきた。
武器を構えて。
「もう一度言います。ノエルから離れなさい」
「何を言います、お義母様。もっと祝福してくださいよ。」
ノエル嬢のことが大事ならこのまま二人で過ごさせてくれればいいのに。
これから大事な初夜なんですよ?
ショコラ様は無表情のまま私達二人を見ている。
そして諦めたようなため息をつき武器を鞘にしまう。
あぁ、やはりわかってくれたんですね。
「上級神官魔法。完全なる癒し」
ショコラ様がボソッと呟いた瞬間、ノエル嬢の身体が光り始める。
まさか!
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ショコラさまが回復魔法を使った直後にノエルちゃんは目を覚まし、周りの状況を把握しようとするようにキョロキョロと辺りを見回す。
俺らをその視界に見つけると、ベッドから飛び降りてショコラさまの所に走り寄る。
「ノエル、身体でおかしいところはない?」
「うん?だいじょうぶだよ!」
ノエルちゃんを抱っこするために一度しゃがみこみ、抱えて後ろでリリーさまとでノエルちゃんを豚くんから隠す。
「さて、ノエルちゃんはおまえではなく母親を選んだようだが?」
「。。。。」
プルプルしている豚くん。略して豚プル。
「おまえが。。。」
おうふ。目が据わったな。
「おまえが来てから全てが狂ったんだ。。。」
「そんなわけないだろう。元々避けられていたんだよ。気づけよ」
「違う!ノエル嬢は本当は私のことを好きなはずなんだ!私がこれだけノエル嬢の事を好きなのに!!!」
ナイフを握り締め、さらにプルプルし始めた豚くんは下を向いて一人激昂している。
「ノエル、あのおじちゃん嫌い」
ショコラさまにだっこされているノエルちゃんから驚愕の発言があり、とうとう豚くんがキレた。
「私のものにならないならみんな殺してやる!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ナイフを振りかざし、ノエルちゃんを抱っこしているショコラさまのほうに突っ込んでくる豚くん。
そしてその間にいる、俺。
「危ないっ!」
ショコラさまとノエルちゃんをかばうように抱え込む。
そりゃ間に立ってればそうするだろうさ。
。。。
背中が熱いな。
。。。
目の前ではショコラさまとノエルちゃんが驚いた顔で俺を見ている。
。。。
後ろでは死ね!死ね!と言っている豚くんの声が聞こえる。
。。。
背中の熱いのが一箇所だけじゃなくて数箇所になってきている。
。。。
抱えこまれているノエルちゃんが涙目になっている。
ごめんよ。怖がらせちゃって。
。。。
あぁ、床が血だらけだ。
贅肉っていう鎧も役に立たないものだなぁ。。。
あぁ、こういうときはこう言うんだっけ。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ。。。。」
。。。
なんにせよ。。。みんな無事でよかった。
。。。
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「いやあああああああああ。おにいちゃああああああああああん」
私達をかばってくれていたレンズさんの背中に何回もナイフの刃が立てられている。
痛みでのか、出血でなのか、私達に覆いかぶさるように気を失ってしまったレンズさんの横でノエルが泣いている。
傷を治してあげたいけどさっきの完全なる癒しでほとんど魔力が残っていない。
こんなことならもう少し魔力を残しておくんだった。
レンズさんの横で簡単な治癒をかけてはいるが、本格的な治療が必要だろう。
ヘイムワトルというこの豚がレンズさんの動きがなくなったことに気づいて血だらけのナイフをぶら下げたままハァハァと荒い息遣いをしている。
「は。。。ははは。。。これで障害が一つなくなったよ。さぁノエル嬢。私の元へ。。。」
「いやっ!!」
「ノエル嬢。。。私のものになってくれないなら。。。貴女も死んでください。」
ノエルはナイフを構える豚の前に立ちふさがる様に立つ。
「来てっ!」
その瞬間、ノエルの周りに私達でも見えるさまざまな色の光の球が浮かぶ。
その数はざっと50。
魔法かと警戒した豚はそのまま後ずさり、なにやら指に付けている道具に口付けをする。
すると豚の周りでキンッという音が鳴り響き、うっすらと豚自体が光りだす。
「魔法ですか?いいですよ。この障壁は魔法を完全に無効化する結界です。」
ノエルを見ながら舌なめずりして血だらけのナイフを構える。
「さぁお別れです。私もすぐに追いますのであの世ででも一緒になりましょう。」
もうあの豚、完全に狂人だわね。
「死ね!!!!!!!」
「やっちゃって!!!!!」
豚の突撃と、ノエルの号令は同時。
ノエルの周りに浮いていた光の球はキュィンという音を立てて次々と豚に当たっていく。
魔法障壁を張ってあるにもかかわらず、光の球は豚に激しい勢いで当たっていって吹き飛ばされたその姿はズタボロになっている。
そのままノエルはレンズさんの隣に座りこんでえぐえぐと泣いてしまっている。
後始末は私の仕事ですかね。。。
あなた。。。使わせてもらうわよ。
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部屋に差し込んだ光の眩しさで目が覚めた。
いつのまにかベッドに運ばれていた。
周りを見回しても知らない部屋なのでそのままベッドの上で呆然としていると、部屋の扉が開いてメイドさんが入ってくる。
メイドさんキタコレ!
しかもメガネ着装済みだと。。。!
「あら、レンズさま。もう起き上がって大丈夫なんですか?」
「あ、はい。お手数かけました。」
うううん、このザマスメガネに合わさる冷たい目。
癖になるぅ。
「では御館さまたちに伝えてきますね。その前にこちらをどうぞ。」
そういって手渡してきたのは水が入ったボウルとタオル。
顔を洗ったりしておくためのものだろう。
ってことはここはレイラさまの館か。
俺に手渡すとすぐさま部屋から出て行くメイドさん。
やはりロングスカートのメイドは正義だね!
振り返るときにふわりと浮かび上がるくらいのがちょうどいいよ!
とか思いながら顔を洗い、タオルで拭いた後、タオルを濡らして服の間から身体を拭く。
そういや背中の痛みがまるでなくなってるけどどうなっているんだろう?
ショコラさまあたりが回復してくれたのかな?
なんてことを考えていると、先程メイドさんが出て行った扉からまずはノエルちゃん、そしてショコラさま、レイラさま、リリーさまの順に部屋に入ってきた。
「おにいちゃん、大丈夫?」
ノエルちゃん用に作られたぴったしのサイズのメガネをつけ、首を斜めにかしげながらベッドの横で心配そうに見ている。
そのノエルちゃんの頭に手を置いて撫でながら「大丈夫だよ」と伝えるとノエルちゃんは破顔するほどの笑みで微笑んでくれた。
事案発生ちゃうぞ!!
可愛いけども!!!
このままベッドに引きずり込みたく。。。はならないな。
もう少し年齢がいってからがいいな。
「レンズさん、怪我は治しましたがお体の具合はいかがでしょう?」
「あ、やっぱりショコラさまだったのですね。ありがとうございます。身体は何もなさすぎて逆に不安なくらいですよ」
「ならよかったです。」
ショコラさまもほっと胸をなでおろした感じの表情をする。
えっと、なにこれ、そんな表情されるほど重傷だったとか?
「睦さんは3日も目を覚まさなかったんですよ。心配にもなるでしょう。」
「おおう、そんなに意識を失ってたんで。。。。。すか?」
おい、ちょっとまて、3日?
事件があったのは『帰還日』の前日。
そこから3日。
。。。帰還日越えてるやんけ。
慌てて魔法の鞄からチケットを取り出すと、物凄い光量で点滅している。
やべぇ、タイムリミット越えるとこうなるのか!
「あああああああ、俺もういかないと!」
「どこへですか!まだ身体は治りきってないんですよ!」
ショコラさま、堪忍してくだされ
「説明している暇ないんですよ!ほら、点滅がどんどん早くなっているでしょ!!」
「なんでしょうか?それ?なんの魔道具ですか?見たことないですけども。。。」
ああああああ、もう。
「リリーさま、説明しておいてください!」
「はいはい、睦さんは神威さんと同じ世界の人なのよ。じゃあ気をつけてね。」
リリーさまはクスッと笑いながらショコラさまを引き寄せてくれている。
「ノエルちゃん、またね。いい子にしてるんだよ?」
「はい!お兄ちゃんもまたね!」
あ、やばい。涙が。
「ではこんな格好で失礼します。みなさんと会えて本当に楽しかった。ありがとうございます。」
ノエルちゃん以外の3人に向かってベッドの上で頭を下げる。
「もう無理はしないでくださいね」
レイラさまもね。
「ノエルのこと、ありがとうございました。御身体に気をつけて。」
ショコラさまもノエルちゃんと仲良くね。
「睦さん、いろいろありがとうございました。頑張って。」
リリーさまももう無茶しちゃダメ!
「では、またです」
激しく点滅をしているチケットを手に取り、こっちの世界であったあれこれを思い出し、記憶に残すように反芻する。
いろいろあったなぁ。。。
いい旅行になった!
「帰「ブブー」。。。。。。還?ってあれ?」
。。。
手で持っているチケットの点滅は終了しており、表面には何も記載されていない。
いや、赤で大きく×が書かれている。
え、なにこれ、どういうこと?
。。。ってあれ、これマジ?
もしかして俺、帰れなくなった?
「睦さん、さっきのは。。。?」
恐る恐るリリーさんが聞いてくる。
「あはは。。。」
俺の方が聞きたいよ。。。
ベッドの向こうでは3人がきょとんとした顔で俺のことを見ている。
やめて!見ないで!
あのお別れ寸前のいい雰囲気を返して!!
「。。。帰れなくなっちゃったみたいです。」
苦笑しながら答えると、3人は「な、なんですってー!」と慌てふためいている。
慌てている人を見ると冷静になれるって本当だったんだね。。。
「あの。。。それで。。。。ですね。」
うーん、すごい言いづらいな。
さっきあれだけ綺麗に終わろうとしてたのに。
でもまぁしょうがないよな。
「これからもまた。よろしくお願いします」
その言葉を聞いたみんなは笑顔で答えてくれた。
後はエピローグを書いて第二章完結となります。
早ければ今晩、遅くとも土日にはアップする予定です。
お楽しみに。




