精霊使いと精霊の友
12話が書き上がりました。
どうぞー
12話 - 精霊使いと精霊の友
「ストーカーですか。。。?」
「そのすとぉかぁ?というのはわかりませんが、付き纏わられていて困っているのは確かです。」
横でリリーさまとノエルちゃんのきゃいきゃい言ってる声が聞こえる中、ショコラさまから言われた相談ごととは、さっきの豚君のこと。
どうやらこのノエルちゃんを狙っているらしい。
なにか珍しい品物を見つけるたびに登城して、ノエルちゃんに会おうとするらしい。
まぁ正直会うために珍しいものを用意しているといった感が否めない。
で、さっきの沙汰でこの街から出て行くようにと言われた事を教えると、逆に最後になにかをしでかすんじゃないかと思っているようだ。
なるほど。それは確かに怖いかもしれない。
とくにあぁいう追い詰められた豚は。
。。。。
でも俺になにをしろと言うんすかね。。。?
俺が出来ることなんてメガネを作ることしかできないぞ?
メガネに付与をつけまくって身を守れるようにするか?
害意を持った人間が近づいたら勝手に展開される結界とか身を守る系のがいいかなぁ。
。。。だがまてよ?
たしかにメガネにいろいろ付与すればそれを口実にこの子にメガネはかけてもらえる。
ただでさえ可愛らしいこの子にメガネをかけさせたときの破壊力は強そうだ。
だがそれは逆に考えると豚君以外の興味も引いてしまうということ。
諸刃の剣か。。。どうしたものか。
「あの。。。」
おっと、一人で考えこんでいたからショコラさまに不安に思われてしまった。
「あぁ、すみません。どうしたらいいものかを検討していました。」
「どうにかなりそうですか。。。?」
「受け手になるか攻め手となるかで対応は変わるんですけどね。」
そして俺が対処できるのは『受け手』の場合のみ。
攻め手の対処はレイラさま付きの騎士さんとかにおまかせするしかあるまい。
元の世界ならまだしも、こっちの世界での腕っ節に自信はない。
まぁ攻め手に出るにしても防御策はあってもいいか。
「とりあえず私が考えられるのは受け手側としての対処です。それこそメガネに付与効果を付けておくことですね」
「メガネというと、先程レイラが付けていたものですね?この子にもそれを?」
「はい。そうですね、付与効果としては攫われたときの目印になるためのマーカー、害意を持ったものを近づけさせない結界、万が一怪我を負ったときのための回復効果。くらいですか」
「助かります。でもそのような効果の高いアイテムは作成に時間がかかるのでは?」
「そうですね、フレームは見本があるのでそこから選んでもらいましょう。寸法は調整します。その他いろいろの作成と調整で急げば2時間といったところですか」
水晶の研磨に意外と時間がかかるしな。
あとどうせならこの子用のメガネも魔法銀で拵えたいところ。
子供用だからできるだけ軽くするために弦を細くして。。。って考えるとレイラさまのとほとんど同じようなものになりそうだな。
「素材には魔法銀を使って出来るだけ軽く動きやすくするためにちょっとした加工をしようと思っています。」
「ありがとうございます。」
さて、あとは。
「ノエルちゃん、ちょっといいかい?」
「はい!なにー?」
テーブルの向こうでリリーさまの膝の上に座って楽しそうにお話していたノエルちゃんに向かって声をかける。
「この紙に書いた文字ってそこからよめるかな?」
メモ用紙を一枚取り出し、ノエルちゃんに見えるように手で持ち上げる。
そこには比較的見やすい大きさで「レンズ」と書かれている。
距離は2mくらいだからこれが見えれば視力に問題はないだろう。
「よめるよ!れんずってかいてある!」
リリーさまによくよめたねー。お勉強頑張ってるのね!と褒められて照れているノエルちゃんを微笑ましく見ながらショコラさまに話を続ける。
「まだ目の能力としては全然問題ないので視界調整などの機能はいらないでしょう。目が悪くない人からしたらメガネというものは邪魔に感じるでしょうけどそこはショコラさまにお願い致します。」
「わかりました。慣れるまで大変そうですけど安全のためですものね」
さて、んじゃぁ作りますか。
テーブルの上にいくつかフレームの見本を出して並べる。
「ノエルちゃん、ノエルちゃんが使うならどれが好き?」
「わたしにもくれるの!?」
リリーさまにだっこされながらテーブルの上に身を乗り出し、えっとねー、これがいいかなー、こっちがいいかなー。といった様子でフレームを選んでいる。
うん、ほほえましい。
選んでいる間に魔法銀の塊を粉状にしておく。
水晶も持っている中では一番よい部分を選んで用意しておく。
「おにーちゃん、ノエル、これがいい!」
ぐはっ。
お、おにーちゃんだと。。。
さっき小さい子にハァハァするような変態ではないと言ったが前言撤回しそうだ。
なんだこの破壊力は。。。
いかん。。。いかんぞぉおお!
ちなみにノエルちゃんが選んだのはアンダーリムと言われる、レンズ周りの下半分にフレームがあるタイプ。
大人サイズのそのフレームをかけ、ずり落ちるのを手で押さえながらにこやかに笑うノエルちゃん。
かわええ。
よーし、おにーさんがんばっちゃうぞー!
「じゃあノエルちゃんに合わせて同じ形で作ろうねー」
といいながら手元に用意した魔法銀の粉を使って成形でフレームを作っていく。
ものの数分でフレームの原型が出来たのでノエルちゃんを呼び寄せ、弦の長さやブリッジの長さ、鼻当ての高さなどを調整していく。
ノエルちゃんの顔にぴったしのサイズになるまで調整を繰り返し、重さなどもできるだけ軽くするために全体的に細身にしていく。
あとはレンズか。
いつもは精霊に手伝ってもらってるんだけどどうしたものか。
ここでやってもいいのかな。
工房戻るのめんどくさいしここでいいか。
「リリーさま、木桶に水を入れたものを用意していただくことは可能ですか?」
「だいじょうぶよー。」
扉の前にいるのであろう騎士達に声をかけ、水の用意をしてもらう。
その間に部屋にいる三人に「これからやる作業は秘密にしておいてくださいね」とだけ告げる。
リリーさまとノエルちゃんは面白いものが見れるのかとワクワクしているのがわかるほど落ち着きがない。
まぁまて、そこまでするほどじゃない。落ち着きなさい。
ショコラさまはそんな二人を微笑ましく見ている。さすが母親の貫禄。
水の入った木桶が用意され、テーブルの上に置かれる。
水の中に大まかに成形した水晶をいれ、準備は完了する。
さて。
「いつものやつ、いるか?」
いつものように声をかける。
が。。。
応答がない。
あれ?
いつものように出てきておくれよ。。。
やめて、なんか痛い人を見るかのような目で見るのはやめて。。。
いああああああ、こっぱずかしい。
そういえば魔力よこせとか言ってたな。
水に含ませればいいのか?というかどうやってやるんだ?
「まって。ちょっと準備が必要みたいで。。。ははは。。。」
水に手を入れ、手の先から魔力っぽいなにかが出るイメージをする。
どこかの聖者とかも手から砂出したり水出したりしてたあんなイメージで。
手の中からなにかスライム状のものがずるって抜ける感じがしたと同時に水が少し光を帯びる。
ふぅ。これでどうだ。
「はふぅ。。。すごいの。。。でも『いつものやつ』って呼び方じゃいやなのです」
おおおおお、来た!これで勝つる!
「すまんすまん。いつものように加工をお願いしたいんだが頼めるだろうか?」
「くすくす。高いですよ」
「また魔力か?いいぞ?もってけ」
「くすくす。了解」
精霊と話をしていると、部屋にいる外の3人は目をきょとんとさせて俺を見ている。
「あの。。。。どなたと話しているのですか?」
いち早く正気に戻ったショコラさまが俺に向かって問いかけてくる。
ものすごい痛い子を見る目で。
ううん、その目で見られると。。。心が。。。あれでもなにか気持ちがよく。。。。
って新境地開拓してる場合じゃないな。
「なんでも自称精霊らしく、いろいろ手助けしてくれてるんです。」
「精霊ですか。。。精霊と話が出来る方というのはなかなかいないんですが。。。」
「そうなんですか?」
やっぱり異世界人補正ですかねぇ。
今思えばこっちの言葉とかも普通に話せてるし理解も出来てるからそういう補正があるのかもしれないな。
すると、リリーさまの膝の上でおとなしく座っていたノエルちゃんがはい!と手をあげて元気よく声をあげた。
「今の声が精霊さんなの!可愛い声だった!」
!?
「ノエル、あなたは聞こえたの?」
「うん、聞こえた!可愛い女の子の声だった!」
「なんとまぁ。。。」
すると俺の耳元でだけ、精霊の声が聞こえた。
「くすくす。あの子は精霊使いの資質がありますね。今作っているものに私から一つ付与してもいいですか?」
「それはまかせるよ。あまりやりすぎないようにね」
小声で他の人には聞こえないようにお願いをする。
「くすくす。悪いようにはしませんよ。」
目の前で研磨されている水晶が光りながらなにやら紋様が刻み込まれていく。
刻み込まれた紋様はしばらく光ったら消えて普通の水晶のように透明なものに変わる。
そしてしばらくしたら水晶が水の底に沈んでいく。
作業終了みたいだな。
木桶に手を入れ、水晶を取り出し、布で水分を取り除く。
それをフレームに当て、成形で形を整えていく。
魔法万能。
出来上がったレンズに付与を施す。
付与するのは言っていたように攫われたときの目印になるためのマーカー、害意を持ったものを近づけさせない防御結界、万が一怪我を負ったときのための回復効果(中)をつける。
マーカーは対になるような魔道具を作ってもらわないといけないかな。
防御結界は物理と魔法と両方防御するようなもので自動展開のもの。
回復効果は欠損でなければ回復できるレベルのもの。さすがに欠損までの回復魔法とかを付与するには素材に許容量がないだろう。
精霊もなにかつけたといっていたしな。
俺がメガネを組み上げている間、ショコラさまとリリーさまはノエルちゃんが精霊の声が聞こえたということに対してなにやら話し合ってる模様。
ノエルちゃんはニコニコしながらさっき選ばなかったフレーム達をいろいろかけたりして遊んでいる。
大まかに形を整えた上でノエルちゃんにかけてもらって微調整を行う。
ほとんど手直しは必要なくそのままで問題なさそう。
「ノエル、ちょっとそれ借りてもいい?」
「いいよ!でもかえしてね!」
ショコラさまがノエルちゃんからメガネを受け取ると、なにやらアイテムをかざして覗き込んでいる。
鑑定のアイテムかな?
その結果を紙に書き、リリーさまに渡す。
その紙を見て驚愕の内容に驚いた顔をしているが、そんなに驚くものだろうか。
「レンズさん、この付与内容は?」
といってリリーさまが結果をこちらに差し出してくる。
その内容というのがこれだ。
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魔具:精霊視の物見
重さ:10g
付与効果:目印、結界、治癒、精霊視
特殊:ノエル・ダンゴール専用。それ以外のものが装着しても効果はない。
このアイテムを装着したものは視界の中に存在する精霊を見ることが可能になり、精霊との友好度が少し上昇する。
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。。。。
おい精霊。
精霊視とかってどういうことだ。
あぁでも使いようによっては最強の護衛か?
「最初三つは意図してつけたものです。最初にお話したとおりの効果を持っているはずです。」
「そうですね。それはわかります。」
「精霊視というのはさきほど加工処理を手伝ってくれた精霊がつけてくれたもののようです。」
「精霊が。。。ですか。」
「精霊が言うにはノエルちゃんは精霊使いとしての資質があるそうです。なのでその補助になるものとしての効果をつけてくれたんでしょうね」
「なるほど。。。」
すでに作ったメガネはノエルちゃんがかけていて、部屋の中をキョロキョロ見回し、何かを見つけたように手を振ったりしている。
あぁもう見えてるのね。
「この子たちかわいい!!」
あぁ、いい笑顔で。。。
はぁはぁ。
ノエルちゃんはぁはぁ
という方が出てきそうな予感。
これくらいのペースでかけるといいんですけどねぇ
現実は厳しいです(;´Д`)