第二十九話
アルノエルからの口説き台詞によって乱れてしまった精神を、アンリーナは何度も何度も深呼吸を繰り返し精神を安定させていく。
(こ、こんなことあっていいわけない、クソックソックソッ!!!! この程度で動揺するな、ああクソッ、クソ、こんなので心を乱すなんて、平和ボケでもしたか???)
アルノエルから送られる言葉一つ一つがアンリーナの心を奪っていく。俺はそんなんじゃない、ちょろくない、ありえないと必死に”いつもみたいに”自身の心に暗示をかけていく。だがしかし何度暗示を繰り返しても動機が治まることはなく「なんっ、でだよ!!!」とアンリーナは心の中で悪態をついた。
両頬を両手で叩き、目を閉じ意識を深呼吸をしまた目を開けシロコを呼ぶ。
「シロコ」
「は~い? どうしましたご主人様?」
「私の対戦相手は誰?」
対戦相手なんてすぐに判明するので聞く意味はないし、今までも対戦相手を聞いたことはなかった。しかしアンリーナは今回シロコに「対戦相手は誰か?」と聞いた。――理由は簡単。今回でアンリーナの決闘は一先ず幕を下ろす。最後の対戦相手ぐらいは事前に知っておきたかったからだ。
「え~~そんなのボクに言われても分かんないですよ~……まぁ分かるんですけど」
「何で一回嘘をついた?」
「何故だと思います?」
「質問を質問で返さない」
問いかけにシロコは分からないと言うかのように首を横に降ったがすぐに先程の発言とは真逆の言葉を発した。てへっと照れ笑いを行うシロコに、アンリーナは呆れた様子で冷めた視線を送る。
「ご主人様が恋にうにゃうにゃ言って悩んでるのを忘れさせようとしただけですよ!」
「こっ、恋……!? う、煩い! それにうにゃうにゃなんて言ってない!!!」
「うにゃうにゃは例えですよ~」
恋という単語に落ち着かせたはずの精神を乱し食い気味に否定するアンリーナをよそに、シロコは彼女に接近し耳元で「今回の対戦相手」の名を口にした。
「――!」
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「これより――――」
アンリーナの対戦相手。それは彼女に勝ち進むように言った者。『アンリーナ』になれなかったと悪態をついた者。
「A組フィーリア・コルネと、E組アンリーナ・イルヴィアの決闘を開始する!」
何の巡りあわせか、今回の対戦相手はフィーリアであった。
(今、こいつをぶちのめす気分じゃねェんだけどなァ)
笑顔を浮かべるフィーリアを目にアンリーナは心の中で悪態をつく。周囲への警戒を高め攻撃にすぐにでも対処できるようにする。
「3——2——1————始め!!」
決闘開始の合図が会場に鳴り響いた。




