↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/36

第二十四話

 決闘祭五日目。アンリーナは会場で行われている決闘を興味なさげに見ていた。最底辺の自分が勝ったというのに決闘の様子はアンリーナが決闘する前となんら変わりない。アンリーナいつものように心の中で騒ぎ立てる。


(あ~~~~~つまんねつまんねつまんね~~~!!!!!!!!!!!!! もっと雑魚共頑張れよ!! いいのか!? 敗北だけで!! 勝利しなきゃ人生つまんねェだろォ~~~!!!)


 かすかにアンリーナの眉に皺がよった。上位の生徒達にあっけなく負け倒されていく下位の生徒達。打ち負かしてやろうという気概が見えず、努力は最低限。そんなものを見て心は踊らないどころかただただ不愉快。アンリーナが見たいのは最後まで抗い結果(勝利)を掴み取る光景か、抗ったもののあと一歩の所で敗北してしまう様子。感情が一際強く動く瞬間を目にしたいのだ。

 上位の生徒に勝てないと諦めている様子の下位の生徒達にアンリーナは一人ふてくされていると、彼女の耳に聞き覚えのある名前が聞こえた。


「これより、S組アルノエル・ラ・ディナルドと、B組――――の決闘を開始する! 3——2——」

(ノエルの決闘……興味あるなァ……あいつ、どうやって戦うんだろうなァ)


 観客席に響く司会の声を聞き聞きアンリーナは今いる席から会場全体が見れる位置に移動した。会場に目を向けるとアルノエルと決闘相手である女子生徒がいた。遠くからでは分かりにくいが女子生徒は緊張している様子を見せ、だけどもどこか喜んでいるような雰囲気を漂わせていた。——まるでアルノエルの相手になったことを喜んでいる。そんな雰囲気だった。対するアルノエルの雰囲気はなんら変わりない。緊張しているようにも、喜んでいるようにも見えない。


「――1――始め!!!」

「フェニックス、出ておいで」

「き、来て、ピクシー!!」


 司会の声と共に二人は自身の召喚獣の透明化を解除した。アルノエルの方には見慣れたフェニックス(不死鳥)が高らかに声を上げ、女子生徒の方は小さく可愛らしいピクシー(妖精)がクスクスと笑い声を上げ姿を現した。

 両者はすぐに行動を起こすことなく互いに視線を合わせ、慎重に相手の出方を伺っていた。召喚獣も勝手に行動することはせず同じように相手を見つめ合っていた。


「うわ、あの子絶対負けるわ。ピクシーがフェニックスに勝てるわけないじゃん」

「アルノエル様~! 頑張って~!!」

「——さん! 頑張って!!」


(あいつら最初から魔法かけてるな。ピクシーは防御魔法に魔法効果上昇、フェニックスは物理耐性に魔法耐性……それに魔法効果上昇)


 生徒達の声を耳にアンリーナは目を凝らし主人と召喚獣にかけられた魔法を見破っていた。それを確認しアンリーナはこの試合がすぐには終わらないだろ。と予測を立てた。何故なら——

 

(あの姿が見えてるピクシー、ニセモンだもんなァ。本体はノエルの後ろだ)


 アンリーナは見えていた。決闘が始まってからの一連の流れは一見互いの行動を観察しているように見えるが、実際は決闘開始と共にピクシーが幻影魔法をかけていた。幻影の範囲は観客席まで及んでおり、魔法に耐性がなければ魔法を見破ることが出来ない。アンリーナは前世の経験含め多少魔法に耐性があった為「あ、これ幻影魔法かけてんな」とすぐさま気づくことが出来ていた。幻影魔法を使った後ピクシーがアルノエルの背後に向かっていた光景もアンリーナは見えていた。女子生徒がかけた魔法効果上昇で、本体に姿は見せず皆は幻影を本物のピクシーだと見間違えている。


(どう動くのやら)


 一連の流れを見てついにアルノエルの背後に回ったピクシーを見て、アンリーナは彼がどう動くのか、見えている召喚獣が幻影だと気づいているのかと興味ありげに目を細めた。


(マァ――何するかなんてわかるけどさ)


「フェニックス、燃やせ」

『きゅるるるるるっ!!!』


 アルノエルの指示にフェニックスは鳴き遠くにいるのに暑く感じてしまいそうな炎を自身とアルノエルの周囲を囲うように作り上げた。アルノエルの周囲が炎に包まれる。フェニックスがそんな行動をとると全く思っていなかったのか、あるいは自身は誰にも気づかれていないと慢心していたのかピクシーは炎を回避出来ず炎と体が接触してしまった。途端、幻影のピクシーが消え去り本物のピクシーが姿を現した――悲鳴と共に。


『キャァァァァァ!!!?』

「っ嘘!!? ぴ、ピクシー!!!?」

「え、えっ!!? あの妖精、いつの間にアルノエル様の後ろに!!?」

「はぁ??! 今、何が起きたんだ??!!! あいつさっきまであそこに、え、ええっ!!!!????」


 己の召喚獣が炎に接触に燃える姿を見た女子生徒は焦り、ピクシーに呼びかけながらピクシーに向かって走り出した。ピクシーは主人の声に応える余裕がないのか体が焼ける激痛に耐えていた。そして観客は会場で起きた出来事にざわつき、混乱困惑の声が周囲から何度も発されていた。それもそうだ、彼らからすればピクシーが瞬き一つの内にアルノエルの背後に移動していたのだから。


(やっぱな。魔法耐性をつけてんだから、本物のピクシー見えてても可笑しくねェもんな。ハハッ、あいつもしかしてわざと見えないふりをしてたか? 燃やす為に。——んで、あの女の目……諦めてねェな)


 会場の出来事にアンリーナは口元を押さえにやりと笑う。今までのツマラナイ決闘とは違う、互いに協力し戦い、最後まで諦めない――アンリーナが望んでいた光景が今、目の前で実現されていた。心が歓喜に触れ喜びが溢れ零れそうになる。

 ピクシーに向かって走っていた女子生徒の表情が焦りから理知的な表情へ変化し、ピクシーに向かう足を止めることなく回復魔法をピクシーに向かって唱える――だが緊迫した状況で魔法を唱えたことがないのか、詠唱口上を何度も噛んでしまって魔法が発動されない。それでもめげず女子生徒は詠唱を唱え、ようやく詠唱口上を噛むことなく唱えることに成功する。


「これ以上体制を整えさせてあげない。フェニックス。……に私達の力を見せつけよう」


(あ? あいつ今なんつった?)


 会場にかけられているはずの反響魔法で聞こえるはずのアルノエルの声が途中聞こえなくなった。かろうじて分かるのは誰かに力を見せつけるということだけ。だがその力を見せつける肝心の誰かの名が聞こえず、アンリーナは軽く首を傾げた。

 アルノエルは次の魔法を唱え体制を立て直そうとする女子生徒に向かってフェニックスを急接近させる。女子生徒は自身に接近してくるフェニックスの姿に足を止め防御に徹しようとすかさず対応を切り替えたが、一歩遅かった。


「降参、してくれるかな?」

「っ!!? ッ……こう、さん……します」


 フェニックスの後ろからアルノエルが姿を現し持ってきていた剣を女子生徒の首に突きつけ笑顔を浮かべた。顔を真っ青に染め上げ女子生徒は詠唱をやめ両手を上げ降参した。と同時に司会の声が観客席に響き渡る。


「勝者、アルノエル・ラ・ディナルド!!」

「……う、うおおおおおお!!!!!」

「あの女子、惜しかったなぁ……アルノエル様じゃなければ勝ってただろ……」

「凄かったよ——さん!!」

「アルノエル様……素敵……」


 司会が勝者を口にして数十秒後、観客席から歓声が一斉に沸きだった。皆様々な感想を飛ばし女子生徒とアルノエル両者に向かって盛大な拍手を送った。歓声を聞いて、女子生徒は真っ青だった顔を赤く染め嬉しそうに何度もお辞儀をした。対するアルノエルは軽く笑みを浮かべながら観客席に向かって軽く手を振り、会場から去って行った。

 

(……まだ未熟だけど、アレ相当強くなる奴だよなァ……ハハッ、敵対したくねェ……)


 アルノエルの戦術を見て、アンリーナは引きつった笑みを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。