issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 56
錬金術師チコ・カリートが天へ向けねじ込んだ螺旋の塔、その頂で繰り広げられる死闘は、
とうに限界点を超えて加熱していた。WCWCの面々は眼前に迫る軍勢の波状攻撃を籠城の構えでしのぎ続けている。ミーガンがレールガンの次弾をまとめて装填し、砲身を持ち上げかけた、その時だった。
足元の影が消えた。自分たちの足元だけではない。重機の影も、螺旋の塔の影も、
戦場に落ちていたあらゆる影が、数秒のうちに薄れて溶けていく。太陽が遮られている。
しかも、遮っているものの面積が、秒ごとに広がり続けていた。
「なんだ、日食か?」
ひと筋の光となって大地に叩きつけられたばかりのハヴォックが、泥にまみれた顔を空へ向けた。
空に、蓋がされていた。
数10kmの上空を、都市が覆い尽くしている。
見上げる角度によっては、ビルの屋上に設置された室外機や、給水タンクの錆びた腹が見えた。
あまりにも場違いな日用品のディテールが、この光景の異常さをかえって際立たせる。
そしてそれら全てが、大気を極限まで押し搾りながら、こちらへ向かって落ちてきていた。
ハヴォックの顔から血の気が引いた。
「冗談きついぜ……空が落ちてきやがる」
プロディジーの呻きが終わるより早く、先頭の1棟が荒野に到達した。
40階建てのオフィスビルだ。窓ガラスは落下の風圧でとうに全て剥がれ落ち、
鉄骨の格子がむき出しになった骸が、垂直に銀色の大地へ突き刺さる。
着弾の瞬間、地面が跳ねた。固体だったはずの銀色の地盤が、
池に岩を投げ込んだ時の水面のようにたわみ、同心円状の波紋が広がっていく。
その波の高さは10mを超え、波頭に乗り上げた重機の群れがばらばらの姿勢で宙へ放り出された。
2棟目が落ちた。3棟目。4棟目。間隔がどんどん縮まる。やがて個別の着弾を数える暇が消え、ビルの豪雨が途切れることなく銀色の平野を叩き始めた。
オフィスが砕け、商業施設が弾け、地下鉄の駅舎ごと抉り取られた地盤の塊が、流星群となって戦場を耕していく。着弾点ごとに噴き上がる土煙が互いに繋がり合い、地表を覆う粉塵の津波となって、WCWCの軍勢もテラリアの異形も等しく呑み込んでいった。




