issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 05 54
敵機のセンサーが、至近距離でその強烈な熱源を捉えた時には、もう全てが遅すぎた。
ホットショットはわずか10数mの宙空で、飛翔のベクトルを強引にへし折る。
左肩を下げ、空を蹴るようにして背筋を限界までしならせた。視界が急速に反転し、
銀色の都市と昼の空とが上下を入れ替える。その逆さまの世界で、彼女は全身のバネを解放した。
斜め後方へのきりもみ回転。
その遠心力という暴力を、振り抜かれる右脚1本へと徹底的に注ぎ込む。
爪先から足の甲にかけて、彼女の持つ莫大な熱量が凝縮し、
サッカーボール大の超高密度な火球が鋳造された。
腰が捻られ、膝が弾け、足首が鞭のようにしなる。3つの関節が織りなす完璧な連動が、
火球を足の甲から弾き出した。
――必殺のオーバーヘッドキックだ。
紅蓮の尾を引く光弾が、レッキン・クルー・ブルースの顔面――そのど真ん中へと、
吸い込まれるように突き刺さる。
ドォオオオオオ!!!
着弾と同時、空間に「真っ白な静寂」が生まれた。
鋼の仮面が内側へ陥没し、装甲が裂ける音すら、直後に膨張した光の暴力にかき消される。
小型の太陽が、そこに顕現した。
火球は瞬時に直径100m、200m、そして1kmと際限なく膨れ上がり、
周囲の空間を圧倒的な白で塗り潰していく。
光球の縁に触れた浮遊ビルの外壁は、赤熱するプロセスすら省略され、
一瞬で蒸気へと気化していく。頑強な鉄骨は白く輝いた刹那に溶け落ち、
コンクリートの壁面は、まるで表面から削り取られるようにして痩せ細り、塵と消えた。




