Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 02 03
各自の作業に没頭していたドロイドたち――そのうち1体が、目前に迫るシャカゾンビの存在にあわてて身を引くのを尻目に、彼は漆黒のティルトローター・ヘリコプターにふてぶてしく乗り込んだ。
その機体にまとわりついて、細部の磨き上げなどにいそしんでいた白い外装甲のロボットたちが、
繊細な構造がむき出しの関節を軋ませながら、機械性の産声を上げ始めたヘリから距離を取った。
このヘリには、一種の小型ドローンめいた圧倒的な制動力が備わっており、動作のどこにも、「重厚さ」を感じさせることがないまま――ターンテーブルから、ある一定の高さまで垂直に浮上することができた。
見えざるクレーンに運ばれているかのような角張った滑り方でドックを抜けた機体は、青空に触れるなり、いきなり加速を始める。
時速数100kmという実速を記録しながら、霧深くひらたい樹海の上をおどろくほど静かに滑空していった。
……日本海の荒波と風雨は、建物ほどの大きさがあるとはいえ、こんな無辺の海原では、そのさざめきに紛れる孤魂にすぎない低空飛行の黒いヘリコプターを容赦なく翻弄した。
目的地へと急行する機体はかたむいて片側のブレードを海面に差し出し、
刻んでいく1条の白波にしぶきを盛んに舞い上げさせ、やがてその中から、ひとかたまりの浮遊感をつかみ取ったかのようにして海面を一気に離れた。
「……レーダーによるとそろそろのようだな!よぅし、『リフレクションディセクター』発射!」
時代がかった装いの魔術師が、2本の操縦桿で姿勢を巧みに制御するティルトローター機は、霧と波濤の狭間を切り裂きながら、その機首から薄紅色のレーザー光を放つ。
海風の荒ぶるりによって粒子が乱反射し、光の軌跡は刹那ごとに部分をほころばせるが、
それでもその端は虚空の1点を正確に炙り続けている。
すると、やがてその1点を中心に、空間が、水面を打つ石のように縦向きの巨大な波紋を描きはじめる。
瞬間、海霧に溶け込んでいた何かが、その存在を徐々に露わにしはじめる。まず、
波の表面にあわく映り込んだ鋼鉄の骨組みがかすかに揺らぎ、ついで、巨大な格子状の外壁がじわじわとその輪郭を強めていく。
やがて、光学迷彩にひた隠しにされていた海上要塞の全容が、レーザーの波紋で押し流されるようにして浮かび上がった。
波間にそびえるその姿は、海底から突き上げられた巨大な槌だ。赤錆に覆われた鋼のフレーム、迷路のように絡み合うパイプライン、巨大なクレーンアーム。潮風にさらされたそのすべてが、きしむ音を緩慢に立てながら、建材に溶け込む塩気と鉄の匂いを発散している。
突撃する波が要塞全体を震わせるときは、先の音よりももっと建物の根元の方から、塊めいた金属音がはるばると立ちのぼってくるのだが、結局はそのしわがれた音も、すぐさま潮騒の激しさの中に吸い込まれていく。
高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。
https://x.com/piku2dgod
本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256




