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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire

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Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 02 01

CHAPTER 2



針葉樹のみで構成されたその森を覆う霧は、ひどく眠たげにうねりながらも、奇妙なことに一切の流動を欠いていた。どういった力の作用によるものか、場の空気は、何の壁もないはずのこの地において、何日も、あるいは何週間ものあいだ、ひとところに籠りつづけていたのだ。


幽明の境すら思わせるこの風景に、今日の曇天はとてもよく似合っていた。

その陰影を、音もなく横切っていくのが、先ほど我々の眼前を去ったあの1羽のカラスだ。


彼は、ふやけにふやけたそこの空気感を、まるで堪能するかのよう羽をおおきく張りなおして先を急ぐ。

黒く、つぶらで、カメラレンズの光り方をする鳥の瞳は、視界の範疇に目的の地を確実におさえたものとして、その焦点を、どんな旋回の最中にも逸らすことがない。


文字どおり、地平のかぎりを埋め尽くすこの黒ずんだ針葉樹林の果てに、1座の山が意味深にそびえている。それは驚くほど純然たる岩山であり、植物の侵食を一切受けていないその姿には、

パテ盛りとエアブラシによる塗装が造形の工程に含まれていたかのような、特撮セット風のおどろおどろしさが詰まっていた。


……そう、この山こそがオールラウンダー永年の宿敵「シャカゾンビ」の現拠点、蛇蝎山なのだ!


山体の一方には、麓から頂までを一直線に繋ぐ灰色の大階段が存在する。

その段の終端は、地中深くへと続く巨大な洞窟の入口と直結しており、

山頂付近の外観はといえば、もっとも見映えよく展示されたサーベルタイガーの頭骨によく似ているといえるだろう。


眼窩のいびつさがやたら目立つ頭骨部が、真の意味で絶巓の誉れを得ており、

その牙――絶滅した大型肉食獣の特徴である犬歯に相当する部分は、

とてつもなく巨大な2本の柱として、洞窟のエントランスたる平坦な一枚岩に深々と食い込んでいた。


蛇蝎山の、シャカゾンビの秘密基地としての間取りは、どうやら、このあたりからすでに始まっているようだった。数多くの魔術的な什器と、最新の研究機械群が、並び立った存在感で、平らな岩場のあちこちに据え置かれている。


物語の円滑な進行のため、あまりに多くの物事を細かく描写することはここでは控える。

さしあたっては、土地の中央に置かれた粗削りな天然石のテーブルと、

それを囲んだ丸い石椅子の数々を想像してもらえれば十分だ。


「おっ、戻ってきたか。どうだったか? 向こうの様子は」

このとき、テーブルのすぐ傍らには人影があった。

本磨きにされた石の板に両手をついて立っていたその人物は、上方から忍び寄ってくる音と影につられ、

プールサイドに上がっていく泳者のように、首を大きくそらせた。


「ああ~! 今日はちゃんとここにいてくれた! 自分から呼びつけといて、いっつもいないんだから……。


……ボス!それがねぇ、かくかくしかじかでした!」

数度の羽ばたきを残し、黒い羽根をふわりと宙に舞わせながら、1羽のカラスがテーブルの上に降り立つ。


彼はためらいなく話し始めた。


それは、自分が喋ることのできる生き物であるという事実を、証明してみせるかのように流暢な語り口だ。


「…………なるほど。オールラウンダーの奴が、サピエンスの親の真似事を始めたという風の噂は事実だったか。しかも、ただ育てるだけでは飽き足らずスーパーパワーを仕込んでいるときた!……まったく、サル回しかなにかのつもりやっているのか!

――しかし、だとすれば強襲は得策ではないかもしれんな!ひとまずは、戦力の分断を考えるとしようか、ヒヒィ!」


喋るカラスから一通りの奏上を受け、ゆるやかに応じる、“ボス”と呼ばれたその男は、

ただの人間とは到底思えぬ異貌の持ち主だった。


何より目を引くのは、顔だ。

まるで仮面ではなく、文字どおり“むきだしの骨”だった。

色は、どこか不気味な風味を帯びた水色をしており、右のこめかみから左の顎にかけて、

爪痕のごときオレンジ色の紋様が三条、斜めに刻まれている。


すなわち彼は、不死の肉体を得た未曾有の異形ではあるだろうが

ただし、我々がその身体全てにおいて“白骨化”していると断ずることは、まだできない。

首から下の部位は、洋式の重厚なるフルプレートアーマーによってすべてが覆われており、

素肌の一片たりとも外気に晒されてはいなかったからだ。

そして付け加えるなら、顔貌さえも、本来はフード付きのケープに深く隠されていたのである。


そのケープは、レモンイエローの布地に白のバーコード柄がアクセントとして走る――

どこか現代的な、市井の若者が好みそうなストリートファッションの趣さえあった。


……まあ、これ以上、ひとりの男について過剰に言葉を費やす必要もあるまい。


人類が永劫の昔より求めてきた“不死”という理想を、

おそらくは世界中の誰もが御免被るだろう方法でたった1人成就させたこの男こそ、地球人類にとって、

長らく最大の脅威であり続けるヴィラン、シャカゾンビなのだ!


高評価やブックマーク、本作のご紹介、Xのフォローなどで応援いただけますと幸いです。制作の大きな力になります。


https://x.com/piku2dgod


本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24843658

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=26572256

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