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【やり直し軍師SS-621】騎士団修行(21)

今回の更新はここまで!

次回は5月30日からの再会を予定しております!

またお付き合いいただけたら嬉しいです!


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 三つ巴の戦いのあとすぐに、ベクシュタットの特訓が始まった。もちろん、ジュノス、ウェルトの両名とも、手ほどきが許された。


 ウラルに関してはその特訓の様を見て、『やはり遠慮しておく』といったほど、加減というものを知らない教えかた。


 なるほど、これでは『一方的な暴力を受けた』と訴え出る貴族の子息がいてもおかしくはない。尤も、望んでその渦中に飛び込んだのだから、自業自得ではあるが。


 ベクシュタットの教え方は至極単純。見て覚えろ、体で覚えろ、実戦で覚えろ。


 すなわち、ベクシュタットの形を自ら受け、覚えるまで、槍術の極みの一撃をひたすらに身体に刻み続けなくてはならない。


 ジュノスたちがすべきは、自分がぶっ倒れるまでにベクシュタットの一撃を見切り、かつ、同じ攻撃を返すこと。


 ただし形は一つではない。ようやく一つを会得したとて、すぐに次の形だ。休憩と呼べるのは、ジュノスかウェルトのどちらかが、倒れて動けなくなったわずかな時間。


 息を整える頃にはもう一方が床を舐める。そうしたら交代の合図。


 訓練三日目。日が暮れて訓練が終わり、精根尽き果てて寝転がっている中、ジュノスは天井を見ながら呟く。


「ベクシュタット師匠は、仕事、大丈夫なのか……?」


 早朝からジュノスたちと打ち合い、昼食を除けば日暮までかかりきりだ。教えを受けている身ではあるが、第五騎士団の騎士団長としての仕事が心配になる。


「……それが師匠のやり方なのです。ですので、騎士団としてはあまりこういった方が来るのを歓迎してはいないのですけどね」


 と答えたのはフォラン。それからすぐに、くすりと笑う。


「……と言っても、普通は初日で音を上げるのです」


「……今までの最長は何日かな?」


 ジュノスと同じように、床に大の字になっているウェルトが聞く。


「私の知る限りでは、三日」


「ならば私が明日、その記録を更新だ」


「待てよ、私がじゃなくて、俺たちが、だ」


「……本当にあなた方は呆れるばかりですね」


 それぞれ実力を認め合った相手、この三日でジュノスたちは急速に仲良くなっていた。


「フォランはよくこんな、拷問みたいな訓練に耐えたな」


 ジュノスが単純に感心すると、フォランは水の入った杯を差し出しながら、大きく頭を振る。


「先ほども言ったとおり、これは客人用ですよ。第五騎士団所属なら、もう少し時間をかけてゆっくりと訓練します」


「まじか」


「別に、ベクシュタット様は嫌がらせをしているのではなく、根がとても真面目なのです。師事を仰がれた以上は、己の全てを教えようと考えます。しかし、客人の場合はいささか……」


「時間が足りない、か。納得した。これは少なくとも一年以上かけて教わることだ。それを数日で教えようとすれば、当然こうなる」


 ウェルトの苦笑は、後の二人に伝播する。


「正直私も、側から見て無謀だなとは思いますし、途中でやめても師匠は相手を蔑んだりはしません」


 フォランがさりげなく無茶をする必要はないと提案してきたが、それとこれとは話は別だ。


「……ジュノス、君たちはリーゼに滞在するのはいつまでだ?」


 ウェルトが問うてくる。


「……一応の予定なら、次の第五騎士団の演習に参加するまでだから……」


 学びにきたのはベクシュタットの武だけではない。リュージェなどは、むしろ演習の方が本番のはず。ジュノスとて、そちらも重要な時間ではあった。


「ならば四日後ですね」


「……つまり、あと三日は猶予があるということか」


「ウェルトはどうしてそこまで?」


 フォランが首を傾げる。ジュノスもそれは少し気になっていた。帝国からわざわざきた以上、あまり無様な真似はできないという思いかも知れないが。それにしても、気合が入りすぎだ。


「……まあ、こちらにも色々あるのだよ」


 こうしてさらに三日、ベクシュタットの教えに耐えたジュノスとウェルト。


 最終日にようやくベクシュタットより、


「なかなか悪くない」


 の一言を引き出したのである。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 第五騎士団の演習訓練への参加も終えて、ベクシュタットに礼を伝えると、ジュノス達はリーゼの砦を離れる。


「それにしても、ジュノスはいいところなしだったわね」


 リュージェが言っているのは演習のことだ。正直自分でも何の見せ場もなかったように思う。


「うるせえ」


 どうにか反論するも、事実は事実。そんなジュノスを擁護したのはウェルト。


「いや、私もこうして馬に乗っているだけでも体のあちこちが痛い。こんな状態でよく演習に参加したものだと、むしろ感嘆に値する」


 ウェルトが同行しているのは、これからゲートランドより船で帝国に帰るためだ。ジュノスたちの次の目的地は第七騎士団のため、少し寄り道して港まで送ろうとなったのだ。


 ウェルトの言う通り、身体はバキバキである。どれが筋肉痛で、どれがあざの痛みなのかもわからないほど。


 だがそれを言い訳にするのは何となく嫌だったので、ジュノスは沈黙を貫く。


 こうしてゲートランドでウェルトを見送ったジュノス達は、改めて進路を北へと向けた。


 この時はまだ、ウェルトのとある騒動で思わぬ再会をすることになるとは、ジュノスはもちろん、ウェルト本人さえも予想だにしていなかったのである。


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― 新着の感想 ―
 べクシュタットの人となりがさらに詳細に知ることができたように思います。特に、途中で訓練をやめても蔑んだりしないというところが、素敵です。こうなると、べクシュタットの、騎士団やお仕事以外の姿を拝見した…
今回、ヴァ・ヴァンピルが活躍していて、また、レヴも元気そうなのがわかり、良かったです。
「ウェルトの」ならウェルト中心の騒動が起こるんだ。帝国でルデクまで関わる騒動となると上皇陛下が関与しそうだな。槍版の十弓とかになるのかね。
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