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【やり直し軍師SS-602】知られざる戦い(2)

 レイズ様の、幻の戦いーーー?


 ボルドラス様が差し出した書類を慎重に受け取りながら、僕は「どういうことか、伺ってもいいですか」と問う。


「いやあ……ご存知の通り、騎士団長を辞するにあたり、徐々に身辺整理を進めていたのですよ。なにぶん、長いこと要職に就かせていただいておりましたのでな」


 僕は小さく頷いた。ボルドラス様の騎士団長としての経歴は、ザックハート様の次に長い。


「古い書類など、積もり積もって山となっております。捨てるも燃やすも一苦労。かといって次の騎士団長に引き継ぐほどでもない物が多数ありまして。その中の一つが、これです」


 僕が見たところ、書き付けられた紙は新しいように思う。


「無論、原本ではなく、改めて書き起こした物です。元はボロボロでしたので燃やしましたが、内容だけは、ロア殿にお伝えした方が良いかと」


「僕に……?」


「貴殿が軍事に関する書物を蒐集されているのは有名な話。このまま歴史に埋もれるよりは、せめて誰かに伝えておこうとの思いに至りまして、ま、簡単にいえば気まぐれですな」


 あっけらかんというボルドラス様に、フレインが口を開く。


「ボルドラス騎士団長が、どうしてレイズ様のそのような話をご存知なのですか?」


「それは第四騎士団内で起きた話だからですよ。ああ、そうだ、この話、皆さんが知る分にはいいですが、ゼウラシア王には御内密に」


 ……また何か勝手にやらかしてたのか、この人。


 だから公にできなかった出来事が、今になって姿を現した。ボルドラス様らしいといえば、らしい話だ。


 僕の表情で、何を言わんとしたかの伝わったのだろう。ボルドラス様は軽く手を振って、違う違うと伝えてくる。


「そんな大した話ではなく、ただまあ、レイズ殿の希望で隠していただけです」


「もしよければ、内容を直接聞かせて頂いても?」


 文書でもいいけれど、本人が目の前にいる。話を聞いた方が早い。


 それに、レイズ様の知られざる戦いなんて、第10騎士団の面々が気にならないわけがない。フレインやラピリアはもちろん、ディックですら興味津々である。


「少々長い話になりますが……」


「構いません」


「そうですか、まあ、夕食までの良い時間潰しにはなるでしょう。ところで、この話をする上で、少々古い出来事に触れますが、その辺りから説明でも?」


「古い出来事?」


「具体的には、帝国が宣戦布告をした少しのち。キツァルの砦がゴルベルに奪われた頃のことです。知っている話で回りくどいかとはお思いますが……」


 確かにそれはよく知られた出来事ではある。


 グリードル帝国がルデクに宣戦布告を行い、ルデクは大混乱に陥った。


 その混乱を突いて、ゴルベルもまた、ルデクに牙をむく。狙われたのはキツァルの砦およびゼッタ平原。


 ゴルベルはキツァルの砦を占領し、ルデクは窮地に陥った。


 しかし、創設したばかりの第10騎士団を率いたレイズ様が帝国の侵攻を食い止めると、それに対抗するように、第一騎士団がキツァルの砦奪還に動き、見事に成功させた。


 レイズ様とルシファルはこの一件をもって、人々からルデクの双頭と謳われるようになったのだ。


 通り一遍の内容は僕も十分に把握しているけれど、あの頃の当事者から直接話を聞くのは初めてだ。


 フレインやリュゼルはもちろん、ラピリアが第10騎士団に入ったのでさえ、もっと後の話である。


 つまり、僕にとっては回りくどいどころか、至福の時間。


「ボルドラス様、私もその頃の話にはあまり詳しくないので、是非とも」


 そうなふうに言ってから、僕に「聞きたいんでしょ?」という表情を見せたのはラピリア。さすがよく分かっている。


「俺も興味がありますね」


 賛同したのはサザビーだ。


 サザビーやネルフィアがいつから第八騎士団にいるかは聞いたことがないけど、流石にその時代は知らないのかもしれない。


「……なるほど、あまり実感はありませんでしたが、思えばあの時代はそろそろ『過去』なのですなぁ」


 感慨深げなボルドラス様。


「それでは、おいぼれのつまらぬ話にはなりますが、少々昔話といたしましょうか」


 そのように前置きしたボルドラス様は、一度お茶に口をつけ、記憶を弄るように、満開のクラザの花を見上げながら語り始めた。



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― 新着の感想 ―
ボルドラス隊長、マジでびっくり箱みたいな人やなー。 普段の様子とスイッチ入った時の行動のギャップがヤバすぎる笑 さすが双子に慕われ続けられる男!
 ああ、そっちか。色々やらかしたのでヤバくて表に出せない戦いがあったと。しかも本編開始前で、ロアのどちらの人生でも知り得なかった話か。
ロアが文官だったころ、さらにレイズ様が御健在だったころの話ですか。 そんな話から私もこの物語にのめりこんだ者です。 夢中で読んでたあの頃を思い浮かべつつ次回を楽しみにしましょう。
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