【やり直し軍師SS-601】知られざる戦い(1)
更新再開いたします
またお楽しみいただけると嬉しいです!
今回は書籍第五巻&コミック第二巻発売記念特別更新ということで、このかたのお話。
SQEXノベル書籍版、反撃の第五巻
そしてQKP先生、遠藤先生が練り上げたコミック第二巻
4月7日同時発売! カウントダウン開始! まだまだ予約受付中!
お手に取っていただけるとひろしたが小躍り致します!
どうぞよろしくお願い申し上げます!
第四騎士団長のボルドラス様を、シュタイン領に招くことになった。
理由は『騎士団長引退に関する話し合い』だ。
唐突な申し出ではない。少し前から『第四騎士団の騎士団長を、グランツ殿に譲り渡したい』という打診はあった。それが今回、正式な申し出となるのである。
もちろん僕に伝えて受理するのではなく、ゼウラシア王へ辞任の意を伝え、それから後任候補の選定に入るのが通常の流れ。
しかし今回の場合、後任についてはほぼ確定している。
ボルドラス様から推薦はもちろん、かつてレイズ様の右腕として辣腕をふるい、第四騎士団移籍後も確固とした存在感を放つグランツ様。
この人選に対して、文句を言う人はいない。あとは中央の承認を待つばかかりと言った感じ。
ではなぜわざわざ、シュタイン領にやってくるかといえば、ボルドラス様の説得のためだ。
ボルドラス様もまだまだ隠居するようなお年ではないし、王からの信頼も厚い。……たまにとんでもない独断専行をするけれど。
ボルドラス様は独り身でもあるので、孫に囲まれての悠々自適ということもない。
このまま枯れるにはあまりに惜しい人材のため、ゼウラシア王より、『もうしばらくは我が国に貢献してもらいたい。何か良い席はないか?』と相談を受けていたのである。
ルデクに大きな貢献をしてくれたお人だ、せめてのんびりとできる席を用意してやりたい、そのような王のねぎらい思いも踏まえての発言。
王が提示した条件は、『それほど激務ではなく』『騎士団長を勇退した人物に相応しく』『できれば王都の役職』の3点。
加えてボルドラス様の意向を踏まえて、何か考えなくてはいけなくなった。
というわけで、引退する気満々のボルドラス様の話を伺うために、こうして王都へ向かう前に、シュタイン領に招いたというわけだ。
王都の役職の縛りに関しては、双子が王都住まいであるという点も考慮された。二人は実質ボルドラス様の娘みたいなものだから。
ちなみに今回双子は、養子にしたレゼットとラゼットを連れて、ボルドラス様を迎えに行っている。
屋敷で出迎えるのは僕とラピリアに加え、ウィックハルトにフレイン、リュゼル、ルファ、ディック。それにネルフィアにサザビーと、いつものメンバーが勢揃い。
全員でボルドラス様を説得するために呼んだのではなく、騎士団の偉大なる先人であるボルドラス様の勇退を、僕らなりに敬意を以てお祝いしようという趣旨だ。
本当はゼランド王子も参加したがったのだけど、残念ながら都合がつかず。ルファに何度も『参加したい』と愚痴をこぼしていたらしい。
招待するには季節もちょうど良かった。シュタイン邸のクラザの木が、今年も見事な花を咲かせている。天気だけが心配だったけれど、空を見る限り大丈夫そうだ。
キンドールさんをはじめとしたシュタイン邸の家人は、ここぞとばかり趣向を凝らした料理を用意してくれている。準備は万端。
そうしてやってきたボルドラス様。想定以上の歓迎に目を丸くしつつも、双子にせっつかれるように、照れながら僕の屋敷に足を踏み入れたのである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「子供達に花見は退屈でしょう。ご馳走が来てから参加すれば良い」
とのボルドラス様の気遣いで、レゼット・ラゼットとロピア達は連れ立ってどこかへ走ってゆく。
「元気でよろしい」
その後ろ姿を見送ったボルドラス様は、満足げに頷いた。ユイメイを引き取った時も、今みたいな感じだったのだろうか?
僕がそんなことを口にすれば、大変困った顔をするボルドラス様。
「……まあ……元気、という点においては勝るとも劣らぬというか……」
言い淀む言葉で理解する。これ以上は聞かない方が良さそうだ。
「おいおい、そんなに褒めるな」
「照れるじゃねえか」
何をどう勘違いしたのか、テヘヘという顔をする双子。余計なことは言わぬが花である。
そんな花よりも、今日はクラザが主役の一角。シュタイン邸自慢のクラザの庭にお連れすれば、ボルドラス様は感嘆の声を上げる。
「おお、これはこれは見事なものですな」
庭の中央に設られた舞台に上がり、それぞれ姿勢を崩してリラックスしていると、キンドールさんがお茶とお菓子を持ってやってきた。
「ロア様、すぐにでもお食事のご用意もできますが、どういたしましょうか?」
夕食にはまだ少し早い。ボルドラス様の腹具合を聞けば、後でいいという。
そのためしばらくは、お茶と花を楽しむ時間とする。
四半刻ほど取り留めのない話をしていたら、ふいにボルドラス様が懐に手を入れた。
「そうそう、これを忘れるところでした。酒が入る前に渡してしまわねば」
そんなことを言いながら取り出したのは、ちょっとした報告書のような紙の束。
「これは?」
受け取りながら僕が首を傾げると、ボルドラス様は軽く頷いて、
「これはですな、レイズ殿の戦いの記録です。ただし、幻の」
と、驚くべき一言とともに、ふふと笑ったのである。




