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lost summer  作者: 雪宮
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02

うまく書けない....。

 朝に弱いわけではないけれど前日の夜更かしが効いているらしい。真は大きなあくびを一回すると起き上がる。寝坊しなかっただけマシなのだろう。まだ時刻は6時なのだ。寝た時間はと言えば3時頃だっただろうか。詳しい時間はおそらく誰も覚えていないだろう。

 辺りを見回せば床に寝ている他のメンツと昨日のゴミが散らばっていた。

流石にこのままにしておくのはよくないと思い散らばったゴミを片付ける。勝手知ったる他人の家とまではいかないが何度も来ているため何処に何があるかは把握している。

台所の棚からゴミ袋を取り出すと分別してさっさと片付ける。

そうこうしているうちに光也が起きたらしい。背後から抱きついてきた。


「シンちゃん朝早すぎ」


「ミツ、お前いっつもそう呼ぶけど俺の名前しんじゃなくてまことなんだけど。」


「いや?」


「そうじゃねない。この前そのせいで勘違いされたからめんどくせえ。」


あと、重いと言いながらゴミ袋を片付ける。



真はよく他校の女子から告白される。しかし、その際に名前を間違えられる。呼びかけられるときにシン君と呼ばれることが多々あるのだ。ただでさえ時間を無駄にさせられるうえに、他校に女子だ。めんどくさい。つい先日も駅で近所では有名な女子校の生徒に呼び止められたのだが、その際も名前は間違えられた。



「俺そのシーン見てたな。他校の女子に名前間違えられてたのだろ?駅で。」


「なんで見てんだよ、尊。」


「尊おはよう。何その面白そうな話。」


「おはよ、七海、篠崎。」


「おはよう、尊。そのことは忘れろ。あとミツはさっさと俺から降りろ。あんま背変わんねえ相手背中乗せて動く趣味はない。」


 光也は不満そうな表情を浮かべつつも真の背から降りた。まさかあの時のことを尊に見られていたとは思っておらず、朝もそこそこ早い時間で知り合いはいないと思っていただけに恥ずかしい。


「真ってモテるよね。イケメンは違うね?」


 夏樹も起きたらしい。

 そうは言うが夏樹も童顔で年上の女にモテるタイプの顔立ちだ。

 尊は背が高く少しワイルドな感じを持ちつつも寡黙なところが一部の女子の間で人気であるし、光也は老若男女問わず人が寄ってくる。


「お前らもたいがいだろ?」


「もちろん分かってていってるさ。」


 夏樹は相変わらず食えない野郎だ。


「それより尊!お腹すいた朝ごはんプリーズ。」


 光也が騒ぐ。


「ちょっとあんまり大きな声出さないでよ。寝不足の頭に響くだろ。」


 夏樹が光也の口を手のひらで塞ぐと声が抑えられふごふごとなにかを言っているということしかわからない程度に収まる。尊はそのやり取りを無視しながら洗面所へと向かう。真もそのあとに続く。



「朝っぱらか元気だな。」


 呆れたように言えばその通りだと頷く。他愛ない話を続けながら顔と歯を洗いすっきりとすると居間へと戻る。歯ブラシはたまに泊まるのでそれぞれ自分のものが置かれているのだ。

 そのまま台所へと行く尊の背中を見送るとまだ騒いでる二人の元へと行く。


「顔洗ってこいよ。」


 二人は先ほどのやり取りが嘘のように仲良く洗面所へと向かっていく。


「なんか手伝うことあるか?」


 台所の方を向き尋ねると特にないという返事が返ってきたのでソファーに座り昨日のことを思い出す。


 ヴィネのユーリ。歌声とあの目に恋をした。歌詞に心が乗っていた。綺麗で曲にあった歌声。そしてどこか諦めたような色をした悲しげな瞳。

 誰かに恋をするのは初めての経験だ。この歳になって初恋。とても人には言えない。


 どれくらいそうしていただろう。尊に朝ごはんだと呼ばれる。


 純和風の朝食がそこには並んでいた。味噌汁に雑穀米。梅干しに焼き魚。それと出し巻き卵にひじきの煮物。

 毎度の事ながら男子高校生が作ったとは思えない。


「尊の料理っていっつも美味いよな。女だったら嫁に欲しいレベル。」


「残念ながら俺は男だ。諦めてくれ、七海。」


 しっかりと出汁が効いている味噌汁。具材は大根と油揚げであった。よくこの短時間で下準備してあったとはいえ作れるものだ。









 そうこうしているうちにそろそろ家を出る時間のようでセットしてあった携帯のアラームが鳴る。


「やっべそろそろ時間じゃん。」


 ドタバタと身支度を終えると鞄を持ち外へと出る。真たちの高校は制服の着用義務は行事の時だけで普段は私服登校が許可されている。そのため生徒は思い思いの服装で学校へと通う。もちろん、常に制服の生徒もいるが。


 尊の家から学校までは歩いて20分かからないため便利だ。学校までの道のりをくだらない会話をしながら行く。通学途中の小学生や中学生、果ては出勤途中の社会人まで色々な人たちとすれ違う。誰もが他人に無関心であった。



「真聞いてる?」


 夏樹の声にハッとなる。


「悪い聞いてなかった。」


 正直に謝れば夏樹からは呆れたような視線を向けられる。


「シン寝不足?」


 光也の言葉に答える前に夏樹が噛み付く。

 仲がいいくせになぜか二人はよく言い合いをしていた。その時だけは食えない印象が薄れ夏樹は年相応に生き生きとしている。人の粗を突いている時も楽しそうではあるが。


「ショートスリーパーな真が寝不足?冗談は進路だけにしなよ、光也。」


 普段のムードメーカーのようなキャラからは想像できないけれど、光也が真剣に医者を目指していることを彼らは知っている。

 みんな何かしらの夢を持ってそれに向かっているのに真には何もなかった。空っぽだ。これといってやりたいことがあるわけじゃない。なりたいものがあるわけじゃない。流されるままに生きていると思った。




 気付けばいつの間にか校門が見えもう直ぐ学校という距離まで来ていた。いつもよりも遅い時間。人が大勢いた。

ユーリ出す予定が....。次話でユーリの正体が明らかに...!!(わかりやすい展開ですね)

読んでくださりありがとうございます。

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