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惨劇エロゲにFPS大隊(角待ちSG、ナイファー、芋砂、蘇生厨、乗り物厨、豆ヘリ、その他様々な馬鹿兵士)がぶち込まれるお話  作者: 福郎


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3/11

兵士の責務

 ヒルダは自身でも、彼らに声をかけた理由がいまいち分かっていないが、確かなことはその判断が正解だったことだろう。

 世界は別の意見を持ったとしても。


「……」


 こっそりとヒルダはジョン、ナイファーを観察する。

 体幹はしっかりとしていて、歩く姿には確かな芯がある。腕や足はやたらと太く、ヒルダが理解できていない装備を合わせると、倍は大きく見えた。


「整備された道で助かるなあ。泉でなにか行事をしてるのかな?」

「はい。私は見たことがないんですが、定期的にお祭りをしてるそうです」

「ほうほう」

「孤児院は雨漏りとかしてない? 陣地構築、じゃなかった。大工仕事は得意だから、ちゃちゃっと直せるよ」

「今のところは大丈夫です。今のところは……」

「じゃあ帰りにはパンをいっぱい買って、シチューでも作ろう。子供達もきっと喜んでくれるよ」

「はい!」


 呑気なジョンとヒルダの声が、長閑な街道に消えていく。

 それは時として命を懸けて戦う冒険者のものとは思えず、ピクニックに行っているのかとすら思える光景だ。


(孤児院の人達の言うとおりだ。皆、いい人ばかりなんだ)


 ヒルダに歪な教育の痕跡がべったりと付いている。

 領主の館に【出荷】するにあたって、言うことを聞かない感性は不要だ。そのため人は生まれながらに善性で、親切な人間ばかりだと教え込まれている。


 彼女の体からは糸(意図)が伸び、大人が、そして世界が操っていた。


「あ、そうだヒルダちゃん。もう一つルール……大事なことがあった」

「はい!」

「英雄とか、ヒーローとか、人のために戦える凄い人が、頭から綺麗に抜け落ちちゃうことがあるんだ」

「それはなんでしょうか?」

「自分が幸せになることさ。君の人生は君のものだ。誰かのために生きるのも尊いけど、それと自分を蔑ろにすることは同義じゃない。だから自分の心に幸せってやつを入れるようにね」

「えっと……分かりました」

「ははは、少し難しいこと言っちゃったけど、覚えておいて。自己愛ってのも行きすぎなければ必要な要素なのさ」


 垂れているジョンの瞼が少し上がって、柔らかいまま真剣な声音を宿す。

 自己犠牲。素晴らしい言葉だが、本人がズタボロになってまで行なうのは不健全だ。

 その兆候が見え隠れするヒルダがそれを完全に納得するとまでは思わないが、複数の考えを教えるのも先達の役割だろう。


「ところでナイファー、シチュー用の野菜とか切れる?」

「……ちょっと練習していい?」

「お、おう」


 ジョンは雰囲気を変えるようにナイファーに尋ねると、肉しか切ったことがないガスマスクの怪人は思わず考え込み、少々頼りない返事をした。


「じゃあ蛇の抜け殻を探そう……か?」


 そうこうしている内に、街の北側にある泉付近に到着した一行は目標を探すため、足元に注意を向けようとした。

 が。


「なんだあれ?」


 ジョンとナイファー。更にはヒルダの超人的な感覚が、泉の近くにいる奇妙な集団を捉えた。

 十人ほどいる老若男女の集団はいい。あちこち怪我をしているが、それでも死ぬほどではない。


 問題なのは別の二十人だ。

 身長は成人男性より半分ほど低い。緑色の体色。薄汚れた歯。尖った鼻。血走った目。ぼろい布を腰に纏い、こん棒や刃こぼれした剣で武装している。


 彼らはゴブリンと呼ばれる敵性種族で、基本的には森の奥で過ごしているのだが、稀に誕生する特殊個体に率いられて外に打って出ることがある。

 今回もその例に漏れず、ゴブリンたちの中心にはゴブリンシャーマンと呼ばれるエリートが存在していた。


 なにかの魔獣の頭蓋骨を被り、捻じれた杖に宝石を括りつけ、様々な色彩の鳥の羽を首に巻き付けているゴブリンシャーマンは、邪なる存在と通じることが出来る霊的な指導者だ。

 尤も文明を持たないゴブリンが邪なる存在と通じようとしたところで、大抵は下級の存在に接触することが精一杯である。

 現に今も、街の近くにある泉を邪法で汚染しようとしているが、そこから先の計画は白紙で、世界全体からすれば取るに足らないものだ。


 勿論、犠牲になりかけている者達の視点は別だ。


「グギギ。殺せ」

「ひいいいい⁉」


 ゴブリンシャーマンが濁った声で配下に命じる。

 成人より半分の背丈とはいえ、野山で暮らすゴブリンの膂力は侮れず、捕らえた旅人の子供を殺そうと剣を振り……。


 system

 ◆戦闘チュートリアルを開始します。

 敗北した場合、CG回収うううううう。


 systemerrrrrrrr

 ◆ジョン・ドゥが発砲しました。


 音速を越えた弾丸が正確にゴブリンの脳幹を貫いた。


「良くない。好くない。善くない。非戦闘員を手にかけないのは、知恵ある者の最後の一線だ。それすら気にしないというのならば……」


 銃を構え淡々と語るジョンの声は、そこそこ距離がある一団にも不思議と届いた。

 民間人の心身と財産を守るのが兵士の責務だ。この国から給料を貰っている訳でもないが、兵士を自認する以上は見過ごせるはずが無い。


 彼には。


 彼らには。


 兵士としての矜持がある!


 兵士としての自負がある!


「作戦開始」


 現在地不明

 --14時20分

 ----不滅大隊

 ------ジョン・ドゥ最高指揮官

 --------民間人を保護せよ


「やれ」

「直ちに、コマンダー」


 ジョンが語っている僅かな間で影のように移動した、必殺の概念が刃を突き刺した。

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