10月23日(火)
明け方の帰宅後、風呂も入らず即就寝。起きたのは昼過ぎ。昼夜逆転。
二階建て我が家、我が部屋のベッドはやはり寝心地が違った。高反発のマットレスにふかふかの羽毛、低反発の枕。そりゃもうぐっすり。今までうっすら感じていた疲れが取れた。お祖母様宅の寝具が身体に合っていなかったのだと今更気がついた。
お母さんにその話をしたら「大人になったらその感覚がずっと取れなくなるわよ」と言われた。年は取りたくないものだ。
長々と自主休校していた高校には明日から復帰しようと思う。昼過ぎから行ったところで、ついて一、二時間も過ぎれば下校時間が始まる。なら明日からでいいやとなった。お母さんも別に口うるさく学校に行けとは言わない。あたしが無事に高校を卒業できるならなんでもいいのだろう。
対して口を酸っぱくして「高校に行け」というだろう父はお祖母様宅にて説教を受けている。お祖母様だけではなく近所の老人たち巻き込んでの大説教会らしい。昭和仕込みの大人にはテレビを叩いて直すように、荒療治をしなければ直るものも直らないのだろう。
さて、兄貴を守ると決めたあたしには二つの道があった。
経済的に兄貴を守る道。
兄貴が道を違えないよう近くで目を光らせる道。
その二つは両立し得ない。前者は良い大学入って社会人になって……など長いステップを踏むことになる。手っ取り早く稼ぐ手段は非合法なものも含めれば無数にあるけれど、それをやったら最後兄貴から見捨てられる。金を稼ぐまで手順数も問題ではあるけれど、ネームバリューのある大学となると数は限られ、兄貴とは物理的に離れ離れになる。心はいつでも寄り添っているのに。
逆に兄貴の近くで悪意から守る道。兄貴が大学を卒業するまでの短い期間になってしまうけれど、兄貴を守ることができる。常識的に考えれば経済的に守れる方が後々のメリットは大きいだろう。けれどここ数年が大殺界であると思われる兄貴を守れるのは大きい。このまま兄貴を放っておいたら変な道に進みそうな予感がするから。あたしの勘がそう囁いている。
二兎を追う者は一兎をも得ずとは言うが、一兎しか追っていないのにこうも悩ませるとはなんと手強い兎だろう。
獅子は兎を狩るに全力を尽くすも全力を尽くすとも言うし、きっとあたしのたてがみはこの時のために育ててきたに違いない。
あたしの全力を以て、兄貴を捕まえる。そして、庇護する。んで愛でてもらう。
しかし、まだ慌てる時間じゃあない。兎の意向も聞いておきたい。二者択一法でどちらかを選んでもらう。どちらも反対されたとしても懐柔してどちらか一方は呑ませてみせる。
まずは近日中に兄貴ともう一度会う。
すべてはそこから。




