これ、きてきなさい。こんなの着れるかよ!
「バアバ。七夕まつり行きたいから、浴衣貸して。」
「ん?なんだい。女の子と行くんだね?」
「は?なんだよ急に。」
「そんな満面の笑みを浮かべた状態で頼まれたら、察しはつくさ。それで?どんな子なんだい?」
「初恋の子でさ。学校のアイドルなんだよ!」
「ほぉ…そんな子を落としたのかい?」
「まだ付き合ってないよ。でも、学校で一番関係が進んでるのは確かだよ。」
「そうかい。なら、良いやつをきてきなさい。」
そう言うと、俺の祖母ちゃんは敷地内にある先祖代々の品々がある蔵へと歩いていった。
「こんなところにある良いやつを着る必要なくない?」
「何いってんだい!冴島家の子どもが安物の浴衣なんて着るんじゃないよ!あんたの兄ちゃんだって初めての彼女のときには立派な奴をやったのさ。」
「そうなの…?」
「いいからついといで。」
そういって、蔵を開けた祖母ちゃんは、浴衣や着物がたくさん飾ってある一角へ向かった。この蔵は、母屋とおんなじ位の広さを持つ。入口は一つだけ。
開け方は俺も知らない。知ってるのは、祖父母達だけ。ここの蔵には地元の有力大名から俺の先祖が譲り受けたものや褒美として貰ったものなど、歴史的に価値のあるものが多い。
文書とか日本史に影響を与えるような代物については、地元ではなく国立博物館に寄贈されている。
勿論、その他の物だって歴史的に価値のあるものばかりなのだが、俺達への遺産だと言って聞かなかった。
他にも孫はたくさんいるのだが、祖父の所有権のある遺産は一族中でも最も知名度を得ている兄貴に与えることが決まっている。俺たちの両親は、実家の土地と
周辺にある土地、そして経営中の数棟のマンションを貰い受ける予定なので、特に言ってこない。
まぁ、俺にもっと祖母ちゃんに可愛がられろとか無理難題を言ってくるが、特に気にしていない。何故なら、他の孫たちは祖父母に嫌われているからだ。
サイトに上手く投稿できなくて、この文章以降が投稿中に消えてしまうことが続いたため、やめました。
彼は、徳川家の家紋が背中に刺繍された浴衣を貰って、
結構な額のお小遣いを貰って出発しました。