重大事件
フォックスが帰ってから、3日後…
部活中終わりの俺は校門前で待機していた護衛たちに囲まれた。随分と切羽詰まっている。
「どうしたんです?」
「緊急事態です。今すぐ、車に乗ってください。これから首相官邸に向かいます。」
「両親になんて言えばいい?」
「既に村上警視監から連絡済みです。友人の家に泊まってくると。」
「あ…もう行く前提なのね。」
「すみません。」
「はいはい。急ぎましょうか。」
車に乗ってから聞かされた情報に俺は戦慄した。
今朝、アメリカ大統領の御息女が例の連続殺人犯に誘拐された。連絡はないが、拘束されている画像が一時間おきに送られてくるそうだ。
そこで、フォックスは俺のことを大統領に明かし、大統領はなりふり構わず日本に来たというわけだ。勿論、このことを聞いた総理大臣も同席するために向かっているらしい。
今回の会談には、アメリカ側は大統領、国務長官、CIA長官と要人警護達の代表。日本側は総理大臣、外務大臣、村上警視監と俺と警護の代表。
いきなり、アメリカの重大な案件を任されるなんて、
心臓が飛び出そうだ。だけど、こんな案件、報酬はとんでもないことになりそうだ!
「(英)今すぐ答えろ!娘はどこだ!」
ついた途端、俺は罵声を浴びせられた。ここまで、大統領とどんな話をしようかって考えていたのに…。
「(英)ピアース大統領。この部屋で声を荒らげるのはやめていただけますか?ここはアメリカでなければ、大使館でもない。その上、貴方が罵声を浴びせた相手は、日本国民です。」
「済まない。冴島君、大統領も切羽詰まっているんだ。」
「…まぁ、そうですよね。娘さんが誘拐されてるんですもんね。というか、フォックスって長官だったんですね。知ってたんですか?」
「アメリカの機密情報をペラペラ話せんよ。」
「これで僕も要人の仲間入りですかね?」
「より一層警備が固くなるな。高校からは、同世代の要人警護員を派遣することになるだろうな。」
「ふぅ…済まなかった。改めて自己紹介させてくれ。私は…」
「貴方は、ウィリアム・ピアース。1960年にカリフォルニア州に生まれる。アメリカ合衆国陸軍士官学校を首席で卒業。史上最年少で国防長官、副大統領に就任。昨年、大統領選挙で大差で勝利し、大統領になる。家族構成は、娘さんと奥さんとの3人ぐらし。これであってますか?」
「噂通りの能力なようだな。」
「それでもできることには限界はあります。」