平成最大の熊被害
次の日…
俺と彼女達はホテルで目を覚ました。
勿論、部屋は男女で分けた。
夕食も朝食もビュッフェスタイル。
俺は、彼女達を起こしに行く前に
宮崎先生に連絡を入れた。
俺の思い違いであることを願って。
俺の能力がまちがっていてくれれば…。
「あ…。宮崎先生。俺です。」
「あぁ。大貴か。」
「どうなりましたか…。」
「お前が正しかったよ。あそこで帰ったお前がな。」
「お前達はそのまま電車で帰宅してくれ。」
「待ってください。宮崎先生!何があったんですか?」
「お前が夢で見たとおりだ。間違いなく、平成最大の熊被害になる。ここには既に警察と記者が集まっていている。」
「猟友会のメンバーもいたんですよね?」
「ああ。でも、彼らも予想していなかったんだ。まさか、番だったなんて。」
宮崎先生から聞いた話に俺は驚愕した。
昨夜、宮崎先生と猟友会から状況の説明があったものの、生徒達も教員陣も施設運営員と同じように事の重大さに気づいていなかった。
宮崎先生はキャンプファイヤーに参加することもなく、コテージで身を隠していた。
猟友会のメンバーも3名を応援に呼び、施設内を3名ずつで猟銃片手に警戒にあたってくれていたらしい。
それでも100名近い生徒の行動を把握し切ることは彼らにもできなかった。
キャンプファイヤーが終わり、ナイトウォークを実施しているときにそれは起きた。
山の中に子どもの叫び声と泣きわめく声、苦しんだ声が響いた。教員陣は熊よけの鈴と熊よけスプレーを持って現場に向かった。
その時、猟友会メンバーは現場から離れた位置にいたようだが、声に反応して現場へと向かったらしい。
彼らが到着したときには、現場は凄惨とかしていた。
最初に襲われたのは、男子3名。雄熊に全員腹部や頭部を噛みちぎられ、即死。
彼らを助けに向かった教師陣は、背後から襲ってきた番の雌熊に襲われ、こちらも亡くなった。
その後、キャンプファイヤーをやっていた生徒達を
クマたちが襲ったが、施設運営員達が刺股?で対抗しようとしたのか、防いでいるうちに多くの生徒がコテージに逃げ込んだらしい。
勿論、運営員達も太刀打ちできずにその場で亡くなった。逃げ遅れた生徒も熊に襲われたが、そこで現場に猟友会のメンバーは到着したようだ。
3名ずつが2頭のが頭、胴体の弱点を正確に狙い撃ち、
2頭とも息絶えたそうだ。
結果として、男子3名。教師陣3名。施設運営員6名が亡くなった。加えて20メイチカイ生徒が重軽症の怪我を負った。
宮崎先生は、現場対応に追われているようだった。
あそこで無理にでも帰る選択をして、よかった…。
俺は、気を落としつつも彼女たちに報告しに行った。
「朝から悪いな。少し良い?」
「いいよ。入って。」
「どうしたの?」
「3人とも座ってくれるか?」
3人ともソファに座らせて、俺は椅子に腰掛けた。
怪我を負ったこの中には、3人の親友とも呼べる子もいる。
亡くなった3人には俺のバスケ部のチームメイトもいる。
「先程、宮崎先生に連絡を取った。」
「どうなったの?」
「直樹、智輝、覚の3名が亡くなった。担任の先生にもだ。他にも生徒が20名近く重い怪我を負っている。宮崎先生はあっちで対応中だ。」
「え…?」
「間違いなく、平成最大の熊被害だ。」