1-1 商人始めます!
「いい加減起きなさい、ヤナギ。今日から念願の商人だってのにいきなり寝坊?」
今日の朝はこんな感じに始まった。
「もう起きてるよ、ミナ。準備終わったら行くから、先行って待ってて。」
「わかったわ。それじゃあ、いつもの席にいるから。」
そうよね。ミナの言う通り今日から念願の商人なんだ!寝坊どころか、本当は楽しみすぎてほとんど眠れていないのだけど、これは内緒にしておかないと怒られちゃう。
――いや、多分怒られない、かな?起こしに来るのがいつもよりだいぶ早かった気がするから、ミナも眠れなかったんだ。多分、きっと、おそらく。そういうことにしておこう。
いやそれににしてもここまで長い道のりだった。商売を始めるための資金稼ぎに10年近くかかったかな?
貯金も十分あるから、比較的安心して旅に出られる。ミナもいるからより安心。
最終的には自分達のお店を持ちたいとは思ってるんだけど、その前に世界中の色んな場所を巡ってみたいねって話してるわ。
「さーーてっと、準備も終わったし、ミナのもとへいきますか。」
下に降りるとミナがもうすでに、朝食を持ってきていてくれた。
「おはようございます、ヤナギ様。今日の朝食はサンドイッチと野菜のスープになります。」
「ありがとう、ミナ。今日もおいしそうね。」
ミナ―私はミナと呼ぶことが多いけど本名はミナラね―には親がいない。私が子供の頃、両親が拾ってきた、らしい。らしい、というのも物心ついた頃には近くにいた存在だから私にはあまり実感がない話なのよね。
だからミナは我が家でお手伝いさんのような立ち位置で働いていたわ。私とは年が比較的近かったからよく遊んでくれたけど、いつも敬語で距離があったのよね。
タメ口で話してくれるようになったのも、5年くらい前からかしら?それも人前では敬語に戻っちゃうし。
家を離れたのだし、気を使わなくていいと言っているのだけれど、、、
ちなみに今は宿に泊まっているけど、ご飯はミナが用意してくれる。ここの宿はお金さえ払えば、場所と簡単な材料は貸してくれるのよね。
まぁ、ミナの食事が美味しすぎるから、自分で料理させてくれる宿を見つけ出したんだけど。
「本日は食事の後、すぐに出発でよろしいかったですか?」
「ええ。そうしましょう。今日中に隣街までは行きたいわね。あ、でも早いうちに野営を経験しておいたほうがいいのかしら?いきなり街から離れたところでやって、何かあったら大変だし。」
「そうですね。私も野営の経験はありませんので、どなたかと最初はご一緒させていただくのがいいかもしれません。」
「そうね。それじゃあ、馬車置き場でどなたかに声をかけてみましょうか。」
そんな会話をしながら朝食を食べ終わった。今日も美味しかった。
――ガタッ、ガタッ、ガタッ
お世辞にも乗り心地がいいとは言えない馬車に、私とミナで乗っている。前の馬車に着いていく形だ。馬車置き場で出会った、冒険者の方々が乗っている。
冒険者との出会いについては、あとで語るとして、
「いい天気ね?ヤナギ?」
「いい天気ネー。快晴だワ。お天道様も私たちの出発を応援してくれているのネ。」
「そうね、ヤナギ。 ねぇ、今私が何を心配しているか分かる?」
「えー。わかんないなー。」
「能力使ってないでしょ?あなた。」
「エー。ワカンナイナー。」
「はぁ、ご両親からも言われているでしょう。能力は極力使うな、と。」
「いいじゃん別に!使ったの数年ぶりだよ!?出発初日から雨とか最悪じゃん!今日滅茶苦茶雨降りそうだったんだよ?」
「関係ないです。雨っだたら、出発日をずらせばよかったでしょう?」
「いや、せっかく準備ができたのに、延期はもったいないというか、、、落ち着かないと言うか、、、」
そう、実は私、能力持ってるんです。世界で8つしかない能力の内1つを持っているんです。すごいでしょ。
私の力は『大自然系能力−気象掌握』。他人や国に持っていることがバレると自由が無くなるから、使うなって家族から言われてるんだけどね。
今日は初日だし使ったんだけど、ミナにはバレちゃったか〜。何でバレたんだろ?この後説教かな?イヤだな〜。




