街の音〜あれから10年
コンクリートの熱風と、もう18時すぎだというのにジリジリと焼かれそうな陽を浴びながら、帰り慣れた帰路に着く。
あれから。10年の時が経つ。
私は母の地元の高校へ進学し、大学は上京した。
母はもちろん、関西の自宅から通えるところを勧めたが。どうしても、行きたい学校がある。通し切り、大学の寮へ入った。
本音を言えば、どうしてもそこでしか学べない。と言うことはなかった。
だけど、どうしても私は。
大都市東京の、人の中に私はいるかいないかもわからないような感覚で。生活していたかった。
実際、大学を卒業し。コールセンターの仕事へ就職し。
慌ただしく帰路に着く人混みを見ていると、私の人生。そう例えば結婚。出産。キャリア。そうしたものは、余りに雑に見られてもいないのである。
そう、私はそれで良かった。それが良かった。
あ、階。
交差点向こうの大きなスクリーンに映し出されたのは。
高校時代からは、大人びていて。
少し声も低くなった階が歌っているCMだ。
LEMME ANTENA『秋風』
10月10日発売。
と大きく書かれていた。
一年前初めて見たのもこのモニターで、急いでスマホで検索した。
そこには高校生からバンドをくんで、やっとデビューが決まった。とKAIが嬉しそうに話すインタビューがあった。
すごいね。階。
夢叶えたね。
モニター越しの階と目があい、咄嗟にそらす
やっぱりあの目には吸い込まれそうになる。
階はどんな10年を送ってきたのだろう。
頭に浮かんだそれ。は
また人混みへとかき消した。




