秋の前の音
ぶー、ぶー。
どこか遠くの方で携帯のバイブが鳴っている。
うーん。と重い目を開けると、目の前に階の顔があった。
階の部屋にある時計は12時15分を指している。
二人して眠ってしまったらしい。
階はまだ寝ている。
そっと布団を抜け出し、服を着た。
「あきね、お腹すいた。」
後ろから寝惚けている階の声が聞こえた、少し顔を見るのが恥ずかしい。
「何か食べに行こうか?」
「水族館、遅なってもうたな。ごめん秋音」
お昼を、駅前のカフェで済ませ水族館へ向かった。
「ねえ、今日夜も一緒に食べない?お母さん夜出掛けてるから、自分でなんとかしてね、って言われてるんだ」
「俺はいいけど、怒られへんか?」
「だいじょーぶ!」
電車に揺られながらそんな会話をした。
市が運営しているらしいこの水族館は、規模的にはそんな大きくはないらしい。
けれどリーズナブルで、楽しめると学生カップルデートにはもってこいの場所。と、スマホには情報が出ていた。
イルカショーを見る階の横顔は、少しいつもより寂しそうに見えた。
思わず手を握る。きっと私は、この手は話さない。
そんな目の前では、イルカが2頭
華麗なジャンプを見せていた
帰りは水族館近くで、階が調べたラーメンを食べた。階は並ぶのを心配していたけれど、少し夜には早い時間だった事もあり並ばずに入れた。
そして、19時半。
まだ中学生でも、これから塾の時間ではないかと言う時間に、私は自宅に着いていた。
ほんと、そんな所真面目だな。
階は無事家に着いただろうか。
と思いながら、ラインを入れる。
『今日はありがとう、楽しかった』
すると、即既読になり
電話がかかってきた。
「階?どうしたの?」
「いや、今家ついたから、それだけ」
「そっか、良かった。ありがとうね今日」
。。。
「秋音?好きや」
急に言うので、飲もうと思って持っていたお茶を一瞬落としそうになってしまった。
「どうしたの?急に」
「言うた事無かったなー、と思って。
今日は秋音がおってくれて良かった」
「私も、大好きだよ。
一緒にいよう、階」
「当たり前や」
そう言った階は少し寂しげに聞こえた。
ずっと隣にいる。
当たり前に房が繋がっているように、何も疑わず、そう思っていた。
そう、あの事が起きるまで。




