やはり異世界
本日4話目です
「タクト、ヨーコ様とサーヤ様よ」
ニーナ様は馬車の隣りにいたすらっとした、しかし鍛えていると思われる青年に話かけた。
「先程、影から話は聞いた。今なら門番に連絡が入ってないからここから出られるだろう。急いで乗ってください」
私は母を見た。どうしたらいいのかわからない。
「沙彩、乗るわよ。タクトさん、お願いします」
母が私の腕を引っ張る。
「ニーナ様はどうされるのですか」
「私は戻ります。お二人はとりあえずここを出てください。タクトは私の従兄弟です。心配ありません」
母はニーナ様の心配をしていたけれど戻られるのならその方が疑われない。
「お願いします」
私はタクトさんに会釈して馬車に乗った。
「このまま侍女の振りをしていてください。こちらで何とかしますので。門を出るまで喋らないようにお願いします」
「「はい」」
少し走ると、門で馬車がとまった。
「この様な時間に何処に行くんだ」
門番が怪訝な声を掛けてきた。
緊張で私の心臓が跳ね上がる。
「あぁ、飲み物が足りなくなりそうだから買いに行くんだ。届けてもらうよりも買いに行ったほうが早いからな」
タクトさんが許可証のような物を門番に見せている。
「そうか。あれっ、お前見た事ないな」
「今日臨時で頼まれたんだ」
門番と話しているけれども通してもらえるのだろうか。
「今日は偉い人達が集まっているからな」
「そうだな」
「はぁ、こっちは仕事なのになぁ」
「まぁな。お互い頑張ろうや。…通っていいか」
「あぁ」
無事門を通れたようで、ほっとする。
「ヨーコ様、サーヤ様、ここはセイナコウ国の聖都です。聖都の門は夜は閉まっているので門に近い宿に向かいます。宿ではキャトリという者がお世話させて頂きます」
タクトさんにはいろいろ聞きたい事があったけれど今は黙っていたほうが良さそう。
タクトさんは馬車が戻らないと疑われてしまうのでこのまま戻り朝1番で宿屋に来てくれるそうだ。
宿に着くとタクトさんが少しふくよかな30過ぎの女性と話している。この人がキャトリさんかな。
女性がこちらに向かってくる。
「ヨーコ様、サーヤ様、キャトリと申します。よろしくお願いします」
「こちらこそお願いします」
キャトリさんの案内で部屋に入る。
案内された部屋は四人部屋だった。ベットが4つ置いてあるだけの簡素な部屋だった。
今日は念のためキャトリさんも同じ部屋で寝る。
私は部屋の中を見回して驚いた。蝋燭ではなくランタンのような灯りがあった。
「灯りは油でつけています」
私がランタンをじっと見ていたためかキャトリさんが教えてくれる。
「お二人の国とは違いますか」
「そうですね」
「召喚されてまだ数時間だと聞いております。疑問がおありでしょう。本当は早く休んで頂きたいのですが、お答えできる事は私がお答えしますので少しお話ししましょうか」
キャトリさんの言葉に甘え、母と二人質問をしていく。
キャトリさんは250年ぶりに今回私達が召喚された事を驚いていた。
ノースリー国は毎回聖女が召喚された時を想定して動いていたが『自分達の時代にまさか』と思っているらしい。
「ヨーコ様やサーヤ様の人生を変えてしまった事は申し訳ないです」
と言われたがキャトリさんやノースリー国は悪くない。屑なのは教皇なのだから。
それでもノースリー国で私達を匿うので安心して欲しいと今後の計画を教えてくれた。
聖都の門は日の出と同時に開くのでとにかく早く聖都を出てノースリー国へ向かう。セイナコウ国は大陸の中心に位置しているがあまり大きな国では無いため聖都を出れれば少し強行に1日馬車に乗っていればノースリー国に着くので我慢してもらいますが。
とキャトリさんが苦笑いをした。
「強行…」
母が呟き私の手を取って頷くので思わず大きく縦に首を振った。
「お疲れでしょうから後は明日、馬車の中で話しましょうか。今日はもう休んでください。部屋からは出ないで頂きたいので沐浴は我慢してもらいますがトイレは部屋にありますので大丈夫です。何かあるといけないので服はこちらの町人の服に着替えてそのまま寝てください。ご不便をお掛けしますがお願いします」
「はい」
母と二人頷くが…
私はトイレが気になった。
web小説の中だとトイレでどの程度の生活レベルがわかると書いてあった。
壺
だった。
中世ヨーロッパあたりだろうか。
衛生面が心配かも。