緊急
「沙彩、沙彩、起きて」
「なあにお母さん、もう起きる時間なの?」
母に起こされて細く目を開けるとまだ辺りは暗かった。
「寝ないで」
わしわしと母に揺り動かされる。
「夢を見たのよ」
「ふうん、それで」
最近の母の夢見はこれといって突出したものはない。○○の酒場でけんかがあるとか、○○さんの所の子供が木から落ちるとか(怪我は無し)。
「流星群のあと魔物が出てくるのよ」
「えっ」
思わず飛び起きた。
「どう言う事?」
母に詳しい説明を聞く。
いつかはわからないけれど(今までの夢見も日時はわからなかった)日本でいう○○座流星群が起こるらしい。
それを見て驚いたのか気配が違って気が立ったのか、魔物が森から出てきてグレスク町を襲う。流星群で怯えていた町の人達のために町長シューイさんと騎士団が走り回っていた所に魔物が襲ってくらのだからグレスク町は阿鼻叫喚になる。
母の話を聞いて急いで服を着る。
「お母さん、すぐに話に行こう」
母も着替え終えていた。
「たぶん今は朝の4時くらいよ。外はまだ暗いし。誰に会いに行けばいいのかしら」
母は考えていたけれど
「タクトさんね」
タクトさんに話すようだ。
「沙彩がタクトさんに会いにいくのはおかしくないでしょう」
「いやいやいやいや、おかしいよ」
「えっ直属の上司よ」
文官になって半年あまり、私はタクトさんの部下になった。秘書のような立ち位置だ。
新人の私がそんな大層な仕事をしていいのか、と思ったけれどタクトさんは私の護衛を兼ねているのでこれが都合が良いらしい。
外面的には親族なので深い話をしても大丈夫だから配置されたとなっている。
「さすがにこんな時間だからね」
とりあえず二人で伯爵家族の住む区域へ行く。そこには護衛の人がいるはずだから何とかタクトさんを呼んでもらう事にした。
起こる事が酷い事なので早めに伝えないと。
護衛にあたっていたのは二人。一人は私達をセイナコウ国からここまで連れてきてくれた護衛の一人、騎士団第3隊副隊長のシーズさん、もう一人は初めて会った。
シーズさんは私達を見て驚いていたけれど、すぐに真剣な顔になり
「お二人はこんな時間にどうされましたか」
と聞く。もう一人の護衛は緊張している。
「タクトさんに話をしたいのですが。すぐに」
「それは…」
シーズさんは緊急だとわかってくれたようで、案内をしてくれる。
「副隊長、よろしいのですか」
もう一人の護衛が心配そうにしている。
「大丈夫だ。お二人はクロナン家の親族になる。問題はない」
シーズさんに付いてタクトさんの部屋へ向かう。
「何かありましたか?」
シーズさんに聞かれるけれど夢見の話をどこまで話して良いのかわからない。
「すみません、ここでは話せません」
シーズさんは読み取ってくれたのか深く追求する事もなくタクトさんの部屋へ向かう。
タクトさんの部屋から少し離れた所で
「少しお待ち下さい。私が先にタクト様にお会いしてきます」
寝ている所を起こすのだから私達は近くにいないほうがいいだろう。
「タクト様、タクト様」
シーズさんが扉をノックしてタクトさんを呼ぶと
少しして扉が開いた。
シーズさんがタクトさんに説明をして、二人がこちらを見て呼ぶので部屋の前まで行く。
「どうされましたか」
タクトさんに聞かれるけれどシーズさんがいるのでどこまで話して良いかわからない。
シーズさんを見てしまう。
「シーズには緊急の場合にはヨーコさんの事を話すつもりでした」
タクトさんは私の目線の意味がわかったようだ。
「緊急です」
母が頷き夢見の話をする。
「シーズ、すぐに団長と各隊の隊長と副隊長を呼んでくれ。赤の間に来てもらう」
「しかし」
タクトさんの指示にシーズさんは迷いがあるよう。いきなりもうすぐ流星群がとか魔物がとか言われても信じられないと思う。
「シーズ、急げ」
タクトさんが強く言うと、シーズさんは出て行った。
「お二人はこちらへ。すぐに準備しますので少しお待ち下さい」
タクトさんは夜勤?の侍女と執事を呼んで伯爵とトーリさんにタクトさんの所にすぐに来てもらうように言う。
私達はタクトさんの準備が出来るまでタクトさんの自室の隣にある執務室で待機。侍女がお茶を出してくれ少しすると伯爵とトーリさんが寝具にガウンという格好で執務室へ入ってくる。タクトさんも執務室へ来たので夢見の話をする。
伯爵は考え込み、トーリさんはタクトさんと今後の話をしている。
「ヨーコ、いや聖女様」
伯爵が真剣な顔で母に向かう。
「教えてもらい感謝します。これから対策を取りますが、これは陛下に報告しなければなりません」
「そうですか。わかりました」
そうだよね。流星群は国中、もしかしたらこの大陸中で見られるかもしれない。陛下や伯爵は暴動や市井の不安を払拭しないといけない。キョーカさんの日食の時と同じだ。
「王都には聖女の力の話は陛下だけにするようにします。後は研究者からの報告とすればお二人の事は気づかれないはずです」
「そうですね。研究者からの報告で統一しましょう」
伯爵とトーリさんが私達のことを考えて話を進めている。
タクトさんに連れられて赤の間へ行くと
赤の間に集まったの隊長副隊長は皆シーズさんと同様、セイナコウ国から私達を助け出してくれた人達だった。
騎士団団長であり第1隊隊長のサントロさん。
第1隊副隊長マンダンさん
第3隊隊長クロイトさん
第3隊副隊長シーズさん
第2隊は今はグレスク町の森の監視用の砦に駐隊している。
タクトさんが簡単に聖女の力の事、今回の夢見の事を話していると伯爵とトーリさんも着替えて赤の間に入ってきた。
対策会議が始まった。
誤字脱字の連絡をして頂きありがとうございます。とても助かっています。




