トーリ・クロナン
朝食。
いつも通りサントロさんとナーバルと同じテーブルに着く。
「おはようございます」
「おはようございます」
そしていつもの会話。
「今日は」サントロさん。
「あります」母
「そうですか。えっ、あります?」
サントロさんが驚いて大きな声を出すので、
「父さん、うるさい」
バーナルに注意されていた。少し前、伯爵に許可を貰いバーナルにも聖女の話はしたけれど驚く事もなく今迄と同じように接してくれる。
サントロさんから何か言われたのかもしれないけれど、態度の変わらないナーバルにほっとした。
「ヨーコさんあるんですか」
「はい。ここで話しますか」
「ここで聞いて問題ないですか」
「大丈夫です」
サントロさんと母が話しているけれど私も夢見の事を聞いていなかったからびっくりした。
「お母さん、何を見たの」
四人で少し顔を寄せる。
「ぷぷっ」
皆の顔が真剣でちょっと笑ってしまった。
「沙彩」
お母さんに怒られた。
(仕切り直し)
「夢見ですが、明日クロナン伯爵家嫡男のトーリ様が戻られるとお聞きしました」
「そうです。聖女召喚関係で王都でクロナン伯爵家と陛下との取り次ぎをされていました。王弟マキト様達がノースリー国に戻られたのでトーリ様の仕事も終わり戻られると聞いています」
「マキトさんやカズキさん、ニーナさんも無事に戻られたのですか」
「そう聞いています」
良かった。私達をセイナコウ国から脱出させた事はわかってないみたい。
「それで」
母が続ける。
「トーリ様にはまだ御子様がいないそうですね」
「そうです。婚姻されて3年経つのですが」
「そうですか。でも、その心配ももういりません。若奥様が懐妊され男の御子様がお生まれになると思います」
「夢見ですか」
「はい」
「よしっ」
サントロさんが小さな声で言う。
「3年間、御子様が出来なかったことでいろいろと言う者達もいましたから…良かった」
あからさまにほっとするサントロさんだけれどどうしたんだろう。
「父さんはトーリ様とタクト様に剣を教えていたんだ」
ナーバルが教えてくれた。
教え子だから心配も人一倍あったのだろう。
「ねえお母さん、その夢見って大丈夫なの?」
「そうね。違っていたら困るわよね」
「サントロさんがこんなに喜ぶのだから伯爵や奥様なんて知ったらもっとすごいと思うよ」
「そうよね」
二人でサントロさんを見ると難しい顔をしていた。
「明日、トーリ様が帰ってきたら懐妊の事はわかると思うので今は報告はしないでおきます」
「明日のことですからね。それが良いと思います」
食堂を出て部屋へ戻る。
「お母さん、夢見の事を教えてくれないからびっくりしたよ」
「沙彩が起きるのが遅いからでしょう。話す時間も無くて急いで食堂に行ったんだから」
「ま、まあね。でも凄いね。男の子って事もわかるなんて」
「産まれた時の夢だったのよ。顔を知らない若奥様らしき人がトーリ様って呼んでいたから」
「そうよね。トーリ様も若奥様も会ったことが無いから知らないよね」
顔を知らなくても夢見が出来るのは凄い事なのでは。
「ただね。若奥様の体調があまり良く無いように見えたのよ」
「そうなの」
「うぅん。はっきりしないからサントロさんには言わなかったんだけれどね」
「じゃあ、様子を見て話せばいいじゃない」
「そうね」
次の日
伯爵に呼ばれ母と二人で応接室へ向かう。トーリ様が帰って来たので顔合わせだ。
「こちらが聖女のヨーコ…と娘のサーヤだ」
「はじめまして聖女様。サーヤ様。クロナン伯爵家嫡男トーリと申します」
「マーシャです」
トーリ様と若奥様マーシャ様が挨拶してくださる。
「ヨーコです。聖女と呼ぶのはやめて頂きたいのですが……。伯爵家の遠縁で使用人のヨーコなので」
「サーヤです。よろしくお願いします」
「えっ、よろしいのですか」
トーリ様が驚いているけれど
「はい、是非」
お母さんはお願いした。
「私はしかたなくあ呼び捨てだ。トーリもそうしろ」
伯爵がトーリさんに嫌そうに話している。母を呼ぶ時いつも間があるのはそういうことだったんだ。
大奥様や奥様は『さん』をつけているよね。
タクトさんも。
「私は、ヨーコさん、サーヤさんと呼んでいるわよ」
奥様が助け舟を出す。
「では、私達も。私はタクトと同じく名前呼びでお願いします」
「はい」
それではトーリさん、若奥様と呼ぼう。
「父上、マキト様の話をしてもよろしいでしょうか」
マキトさん。王弟のマキトさんの事だよね。
「マキトさん達は無事にノースリー国に戻られたとお聞きしました」
母がトーリさんに聞く。
「そうです。セイナコウ国では聖女様が居なくなった後何日間かは探していたようですが見つからなかったので聖女様は自身の世界へ帰られたと報告されました。その後は5カ国会議や外交をしていたのでノースリー国に戻られるまで3ヶ月近くかかってしまったそうです」
「そうですか。私達のために何か咎められていないかと心配していましたので安心しました」
母もほっとしたみたい。
マキトさん達には随分お世話になったからね。
本当に良かった。




