信用
###騎士団長サントロ
「私が夢を見ました」
ヨーコさんが伯爵の目を見据えて話す。
「夢見が聖女の力ではないかと思います」
「なるほど」
ヨーコさんは続ける。
「ただ、今回のように夢見のおかげで対策が出来るものならば良いのですが、奥様のドレスの色がわかるだけというものもあります。毎日見るわけでもないですし。あまり期待されるのも困ります」
これから起こる事がわかる能力なのか。これは凄い。
「まだ3回見ただけですので…」
私の期待や興奮がわかったのかヨーコさんがこちらを複雑そうな顔をして見ていた。
「夢見の力はサーヤさんにもありますか」
これは確認しておかなくては。
「ありません」
伯爵と目を合わせ頷く。
「ヨーコさんが聖女様なのですね」
はっきりさせるために聞く。
「たぶんそうだと思います。しかし、先程から言っているように自分でもよくわからないのです。
ですから、まだ内密にしておいてほしいと思います」
「それが聖女様の希望なのですか」
伯爵が聖女と呼ぶと
「聖女とは呼ばないでください。私はクロナン伯爵家の遠縁で使用人です」
ヨーコさんが困った顔をして言う。
「私の希望はこのままここで沙彩と暮らしていく事です。聖女の力はいらないと思っています」
「それは困る」
伯爵が慌てる。
「いらなくても夢見をしてしまうのは仕方ないと諦めます。内容もお話しします。そのかわり私が力を発現させた事は言わないでください」
「それは、内容を教えて頂けるのなら…」
伯爵が同意するが、
「奥様や陛下に対してでもですか」
どこまで話して良いのか確認したほうがいいだろう。
「ヨーコさん、この部屋にいる伯爵と私とローランの他に奥様や陛下、タクト様には話しても良いですか」
「もう少しお待ちください。あまり大事にはしたくない」
穏やかなヨーコさんが語彙を強くして言ってくるのは強い意志があるからなのだろう。
「どうしますか」
伯爵に確認する。
「陛下には連絡はしない。しかし、クロナン伯爵家の者には話をしたい。今後の事もあるからな。どうだろう」
伯爵にしては陛下へ連絡しないのは苦渋の決断だ。叛意を疑われても仕方がないほど。伯爵はそれでもヨーコさんの意見を尊重していた。
「わかりました。構いません。我儘を聞いてくださりありがとうございます」
ヨーコさんの様子を伺うとほっとしたような雰囲気がある。
「ヨーコさん、大丈夫ですか」
思わず声をかけてしまう。
「はい。私が随分我儘を言っているのはわかってはいるのですが、沙彩の事を考えると譲れませんでした。騒がれたくない、平穏に暮らしたいと思っています。駄目ならこの国を出ることも考えていましたが、ここに残る事が出来て良かったです。皆様良い方ばかりでなので」
「そ、そうですか」
国を出る事を考えていたなどと聞いて焦ってしまった。
「もう一度聞きますが、夢見の内容は話して頂けるのですよね」
くどいようだが。
「はい、それは信用してくださいとしか言いようがありませんですがお話し致します」
「信用していますよ。ヨーコさんがサーヤさんを守りたい気持ちもわかります」
「当分は今の話の通りに。しかし、陛下へはいつかは話をさせてもらいたい。その時にはもちろん聖女様の、ヨーコの了承を貰う。それで良いかな」
「わかりました」
伯爵が私やヨーコさんを見ながら話されるので深く頷いた。
「よろしくお願いします」
ヨーコさんは頭を下げてお礼を言う。
ヨーコさんが執務室を出て行くと、扉の所にいたローランがこちらにきた。
「旦那様、よろしかったのですか。陛下へ連絡しないなどとは問題になりませんか」
「良い。陛下も分かってくれるはずだ。あの時同意していなかったらこの国から出ていかれてしまうところだった。さすがにあれを聞いた時は『助かった』と思ったな」
「そうですね」
ローランも頷く。
「サントロも動揺していたしな」
「はあ、まぁ」
伯爵は時々こうして私をからかって来る。
「それにしても陛下にはいつ話を致しますか」
話題を変えよう。
「その辺りはハーナに任せようと思う」
「それがよろしいでしょう。王妹の奥様には話しても良いのですから奥様にお任せしましょう」ローラン
「陛下も奥様から話を聞けば強くは言えないですからね」私
「ハハハ、あれには誰も勝てんからな」伯爵
「そうですね」
皆で苦笑する。




