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聖女?の娘  作者: いぶさんた
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聖女召喚

よろしくお願いします



「「「おおおぉ」」」


「聖女様召喚、成功だ」


小さな呟きを拾った私は耳を疑った。

(えっ、聖女召喚?)



「どこなの?」


隣から声がするのでそちらを見ると

「お母さん」

母がいた。



###



私、田中沙彩たなかさあやは祖母、母と三人で暮らしていた。父は教師をしていたけれど事故で亡くなった。私の4歳の誕生日、誕生日ケーキを買うために店にいた父に76歳のお婆さんの運転する車が突っ込んできた。アクセルとブレーキを踏み間違えたと聞いた。

父は車と壁に挟まれてしまい即死。12年前の事だ。


両親は結婚と同時に父の家に入った。二世帯住宅で2階が両親、1階が祖父母の部屋と風呂、キッチンがある。


1度、母に

「どうして2階にもキッチンを作らなかったの」

と聞いた事がある。

母が仕事で遅くなった時、音をたてないように暗闇でキッチンで食事をしていたのを見たから。


「結婚した頃は2階にトイレがあるのが珍しいぐらいだったのよ。今では考えられないけれどね」

と自嘲気味に笑っていた。



祖母は気が強い人で、母を家族としてみていないと思う。父の葬式の時にはずいぶん母を罵倒したらしい。

私は4歳だったので覚えていないけれど伯母さん(父の姉)二人が父の法事の時にそんな話をしていたのを聞いた。


叔父さん(母の弟)からは母や私に

『実家に帰ってきてもいいんだよ』

と何度も言われていた。

その度に母は

『きよちゃん(叔父さんの奥さん)に悪いわ。それに沙彩は田中家の子だからね』

と言って断っていた。母方の祖父母はもう亡くなっている。

叔父は祖母の性格がわかっていたのだろう。



祖父は厳しかったけれど公平だったから祖母が母に理不尽な事を言った時には祖母を嗜めてくれた。

祖父がいたからあの家にいる事ができたと思う。しかし、祖父は2年前、心筋梗塞で突然亡くなってしまった。


祖父がいなくなってからの祖母は酷かった。

我儘というかやりたい放題で私が一緒に住んでいるのが嫌だ思ってしまった。


足は少し弱っていたがトイレもお風呂も食事も1人で出来る。

それなのにすぐに母を呼ぶ。


「ピーピー」

母を呼ぶ音がする。



爪切りは?と祖母。

(いつもの所にあるが、この様に聞くと母が爪切りを持ってくるのをしっているからだ)


夜中1時に呼ばれ急いで行くと

「口が乾いたから冷たいものが欲しい」

(冷蔵庫までトイレよりも近い)


汚れた洗濯物を隠してしまう事も良くある。トイレを失敗したのに恥ずかしいのかプライドが許さないのか、隠してしまう。匂いがするのでわかるのに。

「洗濯するから出してください」

怒鳴り散らして出してくれない。出したくないのなら自分で洗えと言いたい。

捨てた下着はたくさんある。


金銭面では母のパート代で質素ながら生活が出来ている。2年前までは祖父が生活費を母に渡していたし私もお小遣いを貰っていたので何とかなっていた。

不意の出費や税金などは父の賠償金を使う。

「沙彩はお金の事は気にしなくていいから」

母の口癖になっている。

高校は公立に入れたので負担を少なく出来たと思う。


就職に有利な商業系の高校を考えていた時、

「奨学金を頼るけれど大学も大丈夫だから」

母に言われたので普通科の高校を選べた。


祖父の遺産は

「家は沙彩ちゃんにあげるから貯金は私達で(祖母と伯母二人)わけるわね」

と言われた。

「沙彩の高校、大学の学費は出してやるからな」

私は祖父から言われていたが現金は手元に残らなかった。


母の分は無い。


祖母は3ヶ月に1度ぐらいしか来ない叔母にお小遣いを渡している。


母や私に隠れて渡しているつもりらしいが知っている。揉めたくないので見て見ぬふり。母や私は1度も、お年玉さえももらった事がない。隠れて渡しているとは、一応祖母も気が引けるのだろうか。


祖母の言動があまりにも酷いので母は介護認定支援の祖母のデイサービスや介護訪問の利用を考えたが叔母の反対にあい諦めた。

だったら叔母さん達が面倒をみてくれればいいのに。




昼食、祖母は母が朝準備した物を自分で温めて食べていたのだけれど、昨日、母に昼に家に帰ってきて食事の準備をするようにと言い出した。何を言っているのか。そんな事を続ければ母の体がもたない。


今日の夕食後、私は祖母に我儘を言わないで欲しいと頼んだ。


祖母は激昂し、私の髪をつかみ引っ張って

「お前のせいで和男(父)が死んだんだ」

と叫んぶ。

「痛い。離して」

私は祖母の言葉を聞いて

『あぁ、やっぱり』

納得してしまった。直接言われた事は無かったけれど母への罵倒や私への態度の中にそんな祖母の気持ちが入っていたのはわかっていた。


声を聞いて母が部屋に入って来た。

「お義母さん、なにをしているんですか」

母は私の髪を掴んでいる祖母の手を離そうとする。


「痛いって」

「お前のせいだ」

「お義母さん、やめてください」


三人で揉めていると急に眩しい光が部屋に広がった。





気がついたら地下室みたいな所にいた。





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