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聖女?の娘  作者: いぶさんた
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異世界

本日2話目です。


光が収まり目を開けて驚いた。祖母の部屋では無く、窓の無い壁も床も石造りの地下室の様な所にいた。


『なになになに』


「聖女様召喚、成功だ」

誰かの声がする。


『聖女?はあ?』

呆けるとは今の私の事を言うのだろう。


「どこなの」

隣から声が聞こえて我に帰り声のする方を見ると母がいた。

「お母さん」

「えっ、沙彩?」


お互い顔を見つめあってしまう。




「聖女様」

部屋にいたらしい男の人が声をあげて片膝を付き頭を下げる。

『きし?』

その後次々に頭を下げる人達。

気がついて無かったけれど少なくない人数の人が部屋の中にいる。


その人達が石の床に座り込んでいる母と私に頭を下げている。

でっぷりとした人が顔を上げて唇を震わせていた。


「聖女様、…呼びかけに応じて頂きありがとうございます」


母が私を庇う様に立ち上がり前に出る。


「どちらさま?」


母も混乱しているのだろう。少し上擦った声で問いかける。


「私はセイナコウ国サイラス・セイナコウ。セイナコウ教の教皇をしております」


「はぁ」

母が間の抜けた返事をする。


「聖女様、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」


「聖女?よくわかりませんが私は田中洋子、こっちが娘の沙彩です」

母と二人頭をさげる。



「二人とはどういう事だ」

「どちらなのだ」

片膝をついている人達が頭を下げたままひそひそと話している。

「ヨーコ様とサーヤ様ですね。よろしくお願い致します。さぞ驚かれたと思います。夜も更けてきました。今宵は部屋を用意してありますのでそちらで寛いでください」


「何故ここに?」


「詳しくは明日、お2人が落ち着かれたら説明させて頂きます」


「今教えてください」

あまりに勝手な言い分に母が強く言う。


「聖女様の案内はノースリー国の者が致しますのでこの者達に簡単な説明をさせましょう。こちらへ」

.

教皇の言葉で三人の男女が立ち上がった。


「聖女様、ノースリー国王弟マキト・ノースリーでございます。隣の息子カズキ、娘ニーナと共にお世話させて頂きます。よろしくお願い致します」


三人が頭をさげる。


「田中洋子と娘の沙彩です。まだ混乱しておりますが…説明をお願いします」

母が頭をさげたので私も頭をさげる。

『日本語なの?言葉がわかる』



###




部屋に着きソファに座ると母が説明を求める。



概要

この大陸には5つの国がある。信仰はセイナコウ教のみで、中心にセイナコウ教のセイナコウ教国、南がサウスボロ国、東がウエスラン国、西がイースジャカ国、そして、北にノースリー国となる。



名目上、聖女が召喚されると『聖女召喚は教皇が世界的な危機が起こると神託を受けた』ために行ったと発表される。


方法はセイナコウ国が秘匿しているのでわからないが教皇が主導で他の4国は国王かその近しい者を同席させ召喚の一部始終を見て確認する事で了承している。

今回はノースリー国以外は国王が来ていたそうだ。護衛も入るので人数が多くなる。


名目上という表があれば裏がある。




裏とは、本当の理由。

教皇が変わる度、内密に聖女召喚を行う。必ず聖女が召喚されるのでは無いためこれは5カ国の上層部しか知らない。

召喚に成功したのは250年振りらしく、皆、戸惑っているそう。


聖女召喚はセイナコウ教国が主導し他の4カ国が順番に持ち回りで担当する。教皇が変わるたびの召喚のため数十年毎にある。今回はノースリー国の担当になっている。




これは異世界転移なの?


母と私は無料のweb小説をよく読んでいた。祖母を一人に出来ないためどちらかが家にいるようにしていたので時間のある時の楽しみにしていた。



「沙彩、これってあれよね」

「うん、異世界転移」

「本当にあるのね」

母も私も驚き過ぎて頭が働かない。



「ノースリー…様。すみません。私達には王族の方への会話や態度がよくわからないので不敬になったら申し訳ないのですが」


「気にしないでください。普段通りで大丈夫です」

母がノースリー国王弟マキト様と話す。


「私達はどうしてここにいるのですか。何をするのですか。帰れるのですか」

聞きたいことは沢山あり矢継ぎ早に質問する。


「説明致します。お茶でも飲んで落ち着いてください」

マキト様に勧められてお茶を飲む。


「聖女召喚を行いました。お二人のどちらかわかりませんが聖女様と思っています。そして…聖女様は何もしません」


「えっ、何もしないのですか」母

「治癒魔法とか魔王討伐とか」私


「治癒魔法とか魔王とは何ですか」

カズキ様が真面目な顔で聞いてきた。

『えっ、魔法も魔王も無いんだ』恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。


「では、どちらかが聖女だとして、何もしないのにどうして召喚されたのですか」

母の問いにマキト様が苦虫を噛み潰したような顔をして口を開く。


「聖女召喚は教皇の権力の象徴となっております。召喚を成功させた教皇は強大な力を持つことができます」



「「はあぁ」」


「「「申し訳ありません」」」

ノースリー国の三人が頭をさげているけれど余計に意味がわからない。



いつから聖女召喚をしているのかはっきりしないが文献には250年前に聖女キョーカが召喚されたとある。御伽噺にもなっているが、聖女キョーカは聖女の力で大陸を繁栄させたと言われている。


しかし、本当の所は…



その時の担当もノースリー国であり、その時聖女キョーカの護衛になった第2王子は父、ノースリー国

 国王に暗号を隠した手紙を書いている。


聖女様は何もしない。しないのではなく、させてもらえない。聖女の宮と呼ばれる離宮に護衛の第2王子、世話係兼話し相手の従姉妹のノースリー国公爵令嬢、ノースリー国の選んだ信頼出来る下働きの者と数人で暮らしている。


聖女キョーカは初めは帰りたいと泣いてばかりいたが日にちが経つにつれて聖女の仕事をしようと気持ちが変わっていった。

第2王子がその旨を教皇に伝えた所、何もしなくても良いと言われてしまった。

聖女様は『何故』『私が召喚された意味がない』と言い、教皇や教会に訴えたが聞き届けられなかった。

それでも聖女様は何かやれる事があるのではと、本を読んで知識を持ち、外にも出たがったが許可が下りなかった。


聖女キョーカは異世界の知識を使い改革を提案していく。それが疎まれていると知らずに。

教皇達教会は変化を嫌がり、聖女を召喚したという事柄だけを欲した。


召喚から2年後、聖女の宮に侵入した賊に聖女キョーカ、護衛第2王子、公爵令嬢、下働きの者、皆殺されてしまった。


この少し前、第2王子からの手紙が配達人に渡されていた。聖女の宮の井戸から毒が見つかった事。近頃聖女の宮の周りに配置されている騎士が減っている事など教会を疑う話が書かれていた。


ノースリー国は聖女を守れなかったと責められ賠償金を払った。国王は息子の死の真相を調べ続けた。20年後王となった第2王子の兄が、交代した教皇の聖女召喚に立ち会った時教皇の呟きを聞いた。


「聖女など誰でも良いのだ。誰か召喚されれば私も前教皇のように大教皇になり歴史に名を残せる。動物だろうがなんでもいいんだ」


兄王は殴りかかりそうになったが耐えた。聖女召喚は教皇の自己満足だった、自分の虚栄心を満たすだけのものだった。聖女様や弟や聖女の宮にいた者は無駄死にではないか。


兄王は国に帰り父に事の顛末を話した。怒りに満ちた二人だったがセイナコウ教国と争うほどの国力はノースリー国には無い。

召喚の儀式は止められないためノースリー国は次回聖女様が召喚された時に助けだすと決めた。


教皇が交代するたびに聖女召喚を行う。しかし、250年成功していない。


ノースリー国の聖女召喚に立ち会う者は聖女キョーカの話を聞く。今回もマキト達は聞かされていた。

助け出す手段も考えてあるが、それには聖女の洋子と沙彩の協力が必要になる。


マキトは全てを話し洋子と沙彩に問い掛けた。



「ここから出ませんか」


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