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目標  作者: 風速健二
目標 第2部
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二人の本音

俺たち夫婦は出産の為に色々と準備をしていた。

産着等は真理ちゃんの親が用意してくれたし、ベビーベッドはレンタルすることに決めた。

真理ちゃんの友達で出産を経験している人たちからのアドバイスだ。

色々なものを箇条書きにしていく。

そうすると、あれやこれや思いだすのだ。


「そうそう、今度の火曜日に飛鳥さん来るんだ」

「なんだ? また料理か?」

「ううん、途中経過報告だって、そんなのいいのにね」

「上手く行ってるのか? そりゃよかった」

でも飛鳥も律儀だと思った。


火曜日は店も暇なので何時もより若干だが早く終わった。

その為、俺の帰りも少し早かったのだ。

家に帰ると、飛鳥がまだ家にいた。

「あ、お邪魔してます」

「おう、いらっしゃい」

そう言って、すぐに打ち解けて会話になって行く。

「私ね、ほんと、真理ちゃんには感謝しているの。だってあんなに素敵な人を紹介してもらって……」

そう言って飛鳥は恥じらいを見せてやや赤い顔をしていた。

こいつもこんな表情するんだと俺は意外な顔でみていたのだろう

「正さん、私だって女ですからね。そりゃ女としての夢も恋もありますよ」

飛鳥がそう云うと真理ちゃんが

「そうよ、正さん飛鳥さんいじめちゃダメよ」

真理ちゃんも飛鳥の味方についたみたいだ。


「私、始めて女の喜びを知ったんです……あ、変な意味じゃなくて、女として人を愛する喜び、

そして愛される喜びという意味ですからね」

俺はそれを聴いて、若しかしたら、飛鳥は真理ちゃんの決断の気持ちを訊きに来たのでは無いかと思ったのだ。


暫くして、飛鳥は

「真理ちゃん、一つ訊いてもいいかしら?」

「うん、いいよ。なあに?」

そう答える真理ちゃんに飛鳥は

「真理ちゃんは、正さんと結婚する時に今迄の仕事のキャリアを捨ててしまったでしょう。

その時どういう決断をしたのか教えて欲しいの」

やはり、そうだったのかと思った。

真理ちゃんは少し考えていたが

「あのね。私は正さんと一緒に将来お店を持ちたいと思ったの。だからその為には私の中途半端なキャリアなんて問題にしなかったの。そりゃ先生からは残る様に何回も云われたけど、先生も私が居れば楽だからね。残っていても、飛鳥さんの彼みたくデザインで将来独立なんて才能は無かったし、せいぜいマネージャー止まりだったと思う。だから私は正さんの夢に私も賭けたの。この人なら自分の将来を託せる。この人となら新しい人生を歩んでいける……

そう思ったの、だから仕事を辞める事に迷いは無かった」

ここまでハッキリと真理ちゃんが言ったのは始めてだった。

やはり母になるという事で強くなったのだろうか?

いや、そうじゃ無い!真理ちゃんは元から強かったんだ。

そうで無ければ所得税さえ取られない程安い給料で頑張れる訳が無いんだ!

俺は、真理ちゃんの決意の強さ、人としての強さを見た気がした。

そして俺の女房は素晴らしい!と……


飛鳥はまりちゃんの本音を訊いて、自分の決意を新たにした様だ。

「真理ちゃん、私ね、やはり将来はお店を出したい! 本格的な日本料理で無くてもいいの。

温かい、そう食べた人の気持ちが暖かくなる様なお店を出したいんだ。

でもね、ファッションブランドを将来立ち上げる彼の邪魔になるんじゃ無いかと思っていたの」

飛鳥の本音を訊いて真理ちゃんは

「あの人はきっと、飛鳥さんの夢を後押ししてくれると思うよ。そう云う人でしょう。

それは飛鳥さんも判っているんじゃ無いのかな?」

「うん、そうなんだけど、それであの人が私に気を使うのが悪くて……」

それを訊いて真理ちゃんは

「飛鳥さん、あの人はそんな小さな器じゃ無いと思うよ。自分の夢も成功させて、飛鳥さんの夢も叶えることの出来る人だと思うけどな……」


何時の間にか飛鳥の目から涙が流れていた。

「飛鳥さん、それでずっと苦しんでいたのね」

「うん、好きになれば成る程苦しくなって、真理ちゃんに訊いて貰いたくて、そしてあの時の決断を訊きたくて……」

「うん、大丈夫だよ!信じる事だよ!」

そう真理ちゃんが言うと飛鳥は明るい顔になり

「ありがとうございます。信じてやって行きます」

そう言って飛鳥は帰って行った。


「始めて訊いたぞ、あんな事」

俺がそう云うと真理ちゃんは

「本当は誰にも言わない積りだったんだ。私だけの決断だったから」

「そうか……じゃ俺は必ずその夢を叶えるよ」

「うん、期待してるからね」

俺はそう言って俺の目を見つめる真理ちゃんを抱きしめるのだった。


出産予定日まであとひと月!


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