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目標  作者: 風速健二
目標 第2部
19/31

日常から見えるもの

翌日、俺は本店に向かった。

店に入ると、圭吾や毅、そして清が俺を出迎えてくれた。

こんな事をされると、嫌でも変に意識してしまう。

まあ、今日だけだろうがな。

そして善さんが入り、店がスタートする。

昼の仕込みをするのだが、俺は献立を見ながら、今日の煮物の用意をして、淡々と作業を進めて行く。

得てして仕事とはこんなものだ。

間違い無い様に確実に進めて行く。

手順なども間違え無い様にする。

まあ、間違える事は殆んど無いのだが……


段々本店の店のリズムを体が思い出して来る。

そうか、こんな感じだったなと思い出す。

アッという間にランチタイムは終わり、ほっと一息入れる。

昼飯を食べながら、清や圭吾、毅がモール店の様子を色々と訊いて来る。

「なんだ、行ってみたいのか? うん?それほど飛鳥と一緒に仕事がしたいか?」

そう冗談を言うと、飛鳥を知らない清はボケっとしているし、知ってる圭吾や毅は首を左右に振る。

「なんでだ?飛鳥は嫌いか?」

そう俺が訊くと二人は

「なんかリズムが狂うんですよね。何でかは判らないんですが……」

それは、きっと無意識に飛鳥が女性と言う事を感じているのだと思う。

それは、自分でもどうしようも無いものだと思う。

きっと飛鳥はこれから……煮方を初めた飛鳥はと言った方が正確だが、言われ無きちょっとした事に苦しむかも知れない。

男女同権だとか、雇用機会均等法だか知らないが、板前の世界に女性が増えて来てはいるが、未だ未だ少数派だ。

それがどのような事なのかは、細かく書かなくても判ると思う。

飛鳥はこれから、それに苦しむ事になるのかも知れない。

馴れしか無いのだ……ガンバレ!飛鳥


休み時間が終わり、夕方の営業に入って行く。

本店の客層は年齢が高い。時に夜の時間帯はそうなる。

会社の営業連中や明らかに接待と判る人々で溢れている。

そこへ柴崎さんがやって来た。

「よう、こっちに移ったというから早速来たぜ」

そう嬉しい事を言ってくれた。

恐らく俺は店が変わっても同じ様にこの仕事を続けるのだと思う。

それに対しては何も思わないが、プロとして仕事に妥協はしたくないと思った。


柴崎さんが帰りに「腕上げたな」

そう一言だけ言って帰って行った。

嬉しかった……


店が終わりまかないを食べていると、下の3人が色々と俺に料理の事を訊いて来る。

今はこうなのか?

俺の頃、と言ってもそう昔じゃ無いが、大抵は自分で考えたのだがな。

でも、答えてしまう俺はお人好しかな?


家に帰ると真理ちゃんが

「お疲れ様でした」と迎えてくれる。

真理ちゃんだって、お袋を手伝ったのだから、疲れているはずだ。

それを言うと真理ちゃんは

「それは比較にならないから」

そう言って自分のは大した事にはならないと言いたげだった。


一緒に風呂にはいる。

結婚してから殆んど毎日だ。

お互いに体を洗い合うのだが、これが意外とお互いの体調管理が判るのだ。

勿論俺も男だから、それ以外の楽しみもあるのだが……

お袋曰く「孫は未だかい?」

こればっかりは仕方ありません。

そんな事を思っていたのが顔に出たのか真理ちゃんが

「ごめんね。今月もあったの」

そう言って俺に謝る。

「何で俺に謝るんだい。俺にも責任あるんだしね」

そう言って俺は後ろから抱きしめ、愛する人にキスをした。

心からのキスだ。


そして風呂から上がるともう寝なくてはならない。

12時は遥かに過ぎていた。

子供か……実際にできたらどのような気持ちになるのだろうか?

嬉しいのは間違い無いのだろうが、どのような嬉しさなんだろうか、

今の俺には判らない事だと思う。

今は、ひたすら真理ちゃんを愛する俺だった。


店での俺の仕事は、本来の煮方、それから揚げ物もやるし、刺し身も忙しい時は善さんの手伝いをする。

まあ便利屋みたいだが、煮方本来の仕事も勿論ちゃんとやっている。

それはそうとして、この本店は他の2店と大きく違う処があり、それは店の休日に連休があると言う事だ。

この本店の休店日は日曜と祭日なのでカレンダー通り(一部違う日もありますが)なのだ。

そして、俺が本店に移って来てから初めての連休がやって来た。

そう、俺たちは温泉に1泊だが新婚旅行に行くのだった。


旅行に行く前日、店が終わって家に帰ると、真理ちゃんはいそいそと明日の支度をしている。

「1泊なんだからそう荷物は無いんじゃ……」

そう真理ちゃんに言うと彼女は

「うん、そんなに無いよ……うん!」

そう言って笑っていたが、どう見ても多い様なきがする。

まあ、いいか……きっと膨らんだカバンの中身は荷物だけじゃ無くて気持ちで膨らんでいるのだと俺は理解した。

真理ちゃん、そのうち海外へ連れて行くからね。

俺は心の中でそう想うのだった。

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