第18話 オトーヌおばあさん
自転車車乗りの人々が帰ってきました。
自転車乗りのメンバーは10名ほどでした。
彼らは私たちを見ると歩み寄って来て、その中の一人の黒髪の青年が
「はじめまして。僕の名前はケビン、この自転車乗りのグループ
の一応リーダみたいなものです」
と挨拶をし、それに続いて金髪の三つ編みのとび色の瞳の女の子がにこにこしながら
「私は、メイリンよ。かれこれ一年近く自転車乗りの一団と旅をしているの
よ」
と、言いました。
そして広間は一時団欒の間となり皆々がそれぞれ自己紹介をしお互いのことを
話したりしていると、パンパンと手を叩く音がしました。それはオトーヌおばあさんでした。
「さあ、みんなお話をちょっと中断させるようで悪いんだけど、これから晩御
飯の支度をしなくてはならいからね。悪いけど昨日から泊まっているケビン達には手伝ってもらえな
いかね。私は最初に今日から来た箒乗りの一団の方に寝る部屋を案内するからね。ケビン達は台所
へいって支度をしておくれ」
私はサーラとノールと同じ部屋になりました。こじんまりとした部屋で、部屋
にはかわいらしい壁紙がはられてあり、2段式ベッドが2つ部屋には置いてありました。
夜、20人以上座れる大きなテーブルがあるダイニングルームで私達は食事を
しました。
私の隣にケビンが座り、食事をしながらケビンとの会話を楽しみました。
食事の後、片付けを終えると、私たちがさっきいた居間に移りそこでオトーヌ
おばあさんはピアノを弾き、ケビンはそれにあわせてバイオリンを弾きました。
私はソファーに座りその美しい音楽に聞きほれていました。
やがて、オトーヌおばあさんのピアノを伴奏に自転車乗りの方々が歌を歌い始
めました。
「この家では、沢山の人が遊びにくるとこうやって食後の団欒を楽しむんだ
よ」と隣からケビンが私に話しかけてくれました。すると音楽にそって周りの人がジェンカ
を踊りだしました。サーラとノールも楽しそうにジェンカの踊りの列に加わっていました。
「さあ、スーもみんなと踊ろうよ」
とケビンが誘うので私もケビンの後ついていきジェンカの踊りの列に加わりました。
みんなと心を打ち解けた集まりの中で、私の胸の中に幸せが広がっていくのを
感じていました。
夜もかなり更けてから、私は目を覚ましました。水が飲みたくなったので下の
台所へ降りていきました。
長い廊下を歩いていると、サンルームの扉が開いていました。私は『どうして
あいているのかしら』と思い、サンルームに入ると薄暗い光がともされていて、テラスに続く大きな窓があいていました。
私はテラスの方へ行くと、テラスの椅子にオトーヌおばあさんが座っていまし
た。
オトーヌおばあさんは私の方を振り向くと
「おや、スーだね。いったいどうしたの?」
「オトーヌさん、水が飲みたくなって台所へいこうとすると、サンルームの扉
がひらいていたので気になったのです」
オトーヌおばあさんは笑って
「なんだ。そういうことね。水ならここにあるよ。さあお飲み」
というとテーブルにおいてあった赤いガラスの瓶からガラスのコップに水を注いでくれました。
私は水を飲むと、こんなこと訊いてもいいのかなと戸惑いながらオトーヌおばあさんの横顔をみつめながら訊いてみました。
「オトーヌさん、こんな夜遅く何をなさってらしたんですか?」
「ああ、私は夜の静かな海をみていたんだよ。こういう静かなどこまでも続く
広い海を見ているといろいろなことを考えてしまうからね。例えば……だいぶ前に家を飛び出して
消息もしれない、もしかしたら私が生きているうちには会えないかもしれない娘のこととかね」
「オトーヌさんに娘さんがいらっしゃったのですか?」
「ああ、もし娘がどこかで結婚して子供がいたのならあんたくらいの孫がいる
かもしれないね」
オトーヌは視線をテラスに落としました。そしてまた優しい笑顔で私を見て
「そうだ。スー、あんたは箒乗りの仲間に入ってどれくらいになるんだい?」
「つい最近です。箒乗りの人たちが私が住んでる町に来てそれから加わったん
です。私は7つの時森で捨てられていました。それ以前の記憶は全くないんです。私は自分の両親
が誰なのか、自分はどこから来たのか判らないんです。それが知りたくて、記憶を取り戻し
たくて、箒乗りの人たちと旅をすることにしたんです」
「スーにはそんな事情があったのかい。こんなまだ若いのに勇気があるね。私
が若いときはずっと家にいて両親と暮らしていて、外の世界に踏み出そうなんて夢にも思わなかったよ。私は外の世界が未知で怖く思えたんだよ」
オトーヌおばあさんの優しく包み込みような感じはジーナおばあちゃんを思い
出させてしまいます。
ふっと私は懐かしさにかられ胸が熱くなりました。
自転車乗りのメンバとしてケビンとメイリンを新しく登場
させていただきました。
ケビンは18歳で自転車乗りのリーダをつとめていますが
性格はリーダとして強引な部分はなく、穏やかで、みんなの意見をきいてものごとをまとめていくタイプです。
自転車の乗りのメンバからも信頼も厚い。優しい一面が災いしてかメンバの女の子から色々と用事を頼まれることがおおいのですが、いやな顔ひとつせず用事をひきうけてしまうといった設定です。
メイリンは、ちょっと勝気な女の子っていう設定かな?