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記憶への旅   作者: gOver
11/55

第11話 ママの愛情

 その夜、私は部屋で今日の出来事を改めて考えていました。

 テックスさん達と旅の宿で話し合った時間は、短いものでしたが私にとってはとてもとても長いものでした。

 “一緒に旅に出ないか……”

 テックスさんの一言が私の頭の中を駆け巡っていました。箒や記憶の事を踏まえて旅に出ようと、テックスさんは言ってくれました。

 自分の無くしてしまった記憶を取り戻したい……。その気持ちは確かなものです。私だって、本当の自分を知りたい……。名前や家族、友人の事も知りたいです。

 けれど、これまで私が過ごしてきたフィオナ達との9年間も確かなものです。

 記憶を無くして、どうする事も出来なかった私を家族に迎えてくれた時から9年間……。フィオナ達と築いてきた思い出もたくさんあります。

 本当の家族と今の家族……。私はどうしたらいいのか本当に分からず、ただ悩んでばかりいました。


 「スー、ちょっといいかい?」

 ママは部屋に入って来ると、私のそばに座りました。

 「どうかしたの? 何かあったの?」

 私の問いに、ママはただ笑っているだけで何も言いませんでした。

 ママに相談した方がいいのかしら……。でも、これは自分の事だからやっぱり自分で……。でも……。

 「ママ。あ、あのね……」

 「子供っていうのは、親が思っている以上に成長が早いもんだねぇ」

 私の言葉を遮るように、突然ママは話し始めました。

 「マ、ママ?」

 「9年前、森の中で怯えていたスーが、今ではこうして立派な女の子へと成長していたんだからねぇ」

 ママは、目を細めて話し続けていました。

 9年前、何もわからず怯えていた私を優しく受け入れてくれたママ。実の娘であるフィオナと同じように育ててくれたママ。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

 「……それに、今度は旅に出るのだから」

 「えっ……?」

 突然のママの一言に、私は思わず言葉を失ってしまいました。

 「ジーナさんがね、教えてくれたんだよ。今朝の出来事を」

 ジーナおばあちゃんが……。きっと、テックスさんから聞いたのでしょう。

 「ママ、私は……」

 「優しいスーの事だ、私たちの事で悩んでいたんだろう?」

 ママには何でもお見通しでした。ママは大声で笑いながら、私の髪の毛をクシャクシャと触りました。

 「馬鹿だねぇ、何も一生の別れではないんだよ。生きてりゃ、また会えるんだから」

 ママの温かい手に、思わず涙が溢れてきました。

 「人生というのは、後悔してからじゃあ遅いんだよ。スーのこれからの人生はスー自身のものなんだから」

 「いいの? 旅に出てもいいの?」

 私の問いに、ママは笑いながら私に話し続けていました。

 「馬鹿だねぇ! 娘の決意を反対する親がどこにいるんだい!」

 そう言って、ママは私の背中を軽く叩きました。

 「行きなさい、スー。無くした記憶への旅に」

 温かく送り出してくれるママのおかげで、私の決意は堅くなっていきました。

 しかし、私はもっと大事な人にも告げなければなりません……。

 一緒に育ってきた姉妹……フィオナに。








―2回目の山口維音です。執筆が遅れてすいませんでした。今回はフィオナママのスーへの愛情を書いてみました。―


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