あしがら山の赤子
むかしむかし、あるところに、まわりの山々よりもひときわ緑が深く、大きな木々が天に向かってそびえ立つ「あしがら山」という高い山がありました。
この山には、たくさんの動物たちが暮らし、ふもとを流れる川にはきらきらと光る魚たちがたくさん泳いでいました。
ある激しい嵐の夜のことです。
あしがら山のてっぺんに、ピカピカ、ゴロゴロと、見たこともないような大きな雷が落ちました。
山全体が揺れるほどのすさまじい音でした。
翌朝、嵐が去ってすっかり青空が広がったころ、山に住む一人のやさしいお母さんが、森の奥で不思議なものを見つけました。
大きな木の根元に、ちいさな、しかし体中が夕日のように真っ赤に燃える、元気な男の子の赤ちゃんが置かれていたのです。
「おや、まあ。なんて元気な赤ちゃん。神様がこの山に授けてくださったのかもしれないね」
お母さんは大喜びで赤ちゃんを抱きかかえ、自分の家へと連れて帰りました。
お母さんはその男の子に
「金太郎」
という名前をつけました。金太郎は、生まれたときから普通の赤ちゃんとはまったく違っていました。
まず、体がとにかく丈夫で、病気ひとつしません。そして何より、信じられないほどの力持ちだったのです。
生後まだ数ヶ月だというのに、ハイハイを始めたと思ったら、家の中の重たい家具を軽々と押し動かしてしまいました。
お母さんが驚いていると、金太郎はニッコリと笑って、今度はズッシリと重い木箱を両手で持ち上げてしまったのです。
「これこれ、金太郎。そんなものを持ち上げたら危ないよ」
お母さんはあわてて止めましたが、金太郎はちっとも平気な顔をしています。
ハイハイから立ち上がり、ヨチヨチ歩きを始めるころには、庭にある大人が三人で引っ張っても動かないような大きな石を、両手で「えいっ!」と持ち上げて、向こう側へ投げ飛ばしてしまうほどでした。
お母さんは、金太郎のために、赤い布でちいさな前掛けを作ってあげました。
お母さんは心を込めて、その前掛けの真ん中に、金色に輝く糸で「金」という大きな文字を刺繍しました。
「金太郎、あなたはこの『金』の文字のように、強く、正しく、そしてキラキラと輝く優しい心を持った男の子になるんだよ」
お母さんがそう言って前掛けをかけてあげると、金太郎は嬉しそうに胸を張りました。
この日から、赤い肌に「金」の文字が入った前掛けが、金太郎のお気に入りの姿になりました。
金太郎が大きくなるにつれて、お母さんは一本の大きな「まさかり(大きな斧)」をプレゼントしました。金太郎はそのまさかりを小さな肩にひょいと担ぎ、毎日元気よくあしがら山の森へと出かけていくのでした。




