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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
22/60

マフィア

港の倉庫では銃火器の取引が行われていた。

マフィア同士の取引である。

夜の港――

「はい、そこまで~!」

「これまでだ」

ミリエルとディックが倉庫の扉を開けて、言い放った。

ディックの手には黒ワシのレイピアが握られていた。

「なんだてめえら!?」

「どっから現れた!?」

マフィアの男たちは混乱した。

「ビジネスが順調に進んでいるところ申し訳ないね。裏ビジネスを叩くために俺たちは来たんだ」

「ごめんね~。でもあたしらは見過ごすことはできないの~」

「さあ、ケリをつけてやる!」

ディックとミリエルはマフィアの男たちを攻撃した。

取引の現場は取り押さえられた。

取引は壊滅した。


次の日、詩音はいつも通りにディックの洋館を訪れた。

「よう、よく来たな」

「ごきげんよう、今来たわ」

ディックはイスにゆったりと腰かけていた。

相変わらずの悪態である。

彼は両腕を組みつつ詩音を見た。

詩音は黒いソファーに座った。

「ねえ、ディック、港のマフィアの一件知ってる?」

「あ? 港のマフィア?」

「そう、なんだかニュースで報道されていたわ。現場を一斉に摘発されたんですって。マフィアなんて怖いわ」

「ああ、それか」

ディックはニヤリと笑った。

それを見た詩音は怪訝けげんに思った。

ディックがこういう笑いをするのは何か知っているからだ。

「もしかして、何か知っているの?」

「それはな……」

ディックは一連の事情を詩音に話した。

ディックは右手でほおづえをついた。

「まあ、そういうことなんだよ。奴らの活動の背後には悪魔がいる。悪人たちは手先にすぎない。犯罪者を装っているが、本当の目的は別にある」

「そういうことだったのね。なんだか納得できたわ。だって話がうまくいきすぎていたもの」

「まあね。俺たちが関与していなかったら、ここまでうまく摘発できなかっただろうね。少しは、感謝してほしいところだ」

「なに、それ。うふふふ」

ディックは相変わらずの自信家ぶりであった。

それが詩音には安心感を与えた。


同時刻別の場所。

生活用品店のレジ・カウンターにて。

ミリエルは生活必需品を買いに来ていた。

シスター服を着た女性は珍しいからか、店員の女性は緊張気味だった。

ミリエルは買い物用マイバッグを両手で持つと、店の外に出た。

兄が住んでいる洋館へと歩みを進める。

(あたしみたいな恰好って、そんなに珍しいかしら?)

と自問自答する。

ミリエルは通りを曲がった。

あまり人通りのない通りである。

すると、ミリエルの後ろから黒塗りの高級車が現れて、急停止した。

車の中から、黒スーツの男たちが現れた。

一人の男がミリエルの後ろから拳銃を突き付けた。

「我々といっしょに来てもらおう」

「いやって言ったら?」

「その時は……」

男が持つ手に力が込められた。

「これは脅しではない。本気だ」

男は淡々と告げた。

「ふう、わかったわよ。降参、降参よ」

ミリエルは白旗を上げた。

男たちは静かにミリエルを黒い車に乗せた。

車はディックの洋館とは反対方向に進んだ。

ミリエルは黒スーツの男たちにさらわれた。


一方ディックの執務室ではクラシックな音楽が流れていた。

部屋はアンティークな家具、調度品でこしらえてあり、優雅さに満ちていた。

ディックは窓から日に当たりながら、音楽を聴いていた。

詩音は新しい小説を読んでいた。

二人の本の趣味は異なっても、読書家であることは共通していた。

ふとそこで、ディックのスマホが鳴り響いた。

ディックはスワイプした。

電話はミリエルからのものだった。

「どうした?」

それは意外な人物からの電話だった。

「よお、あんたがディック・ディキンソンかよ?」

「そうだ。誰だ、おまえは?」

「俺か? 俺はマフィアのボス、アゴスティーノだ。例の取引をよく潰してくれたよな? これはお礼の電話だ」

「どうして、俺の名を知っている?」

「一緒にいたシスターの姉ちゃんから聞かせてもらったぜ。電話もな」

「ミリエルから?」

「ああ、そうだぜ。今から声を聞かせてやるよ」

少し時間が開いた。

しばらく時間が過ぎ去る。

「ごめんね、アニキ~。あたし、マフィアにつかまっちゃったの~」

「ミリエルか。どうして捕まった?」

「買い物の帰りに銃を突き付けられたのよ。今は手錠をかけられて手を拘束されているわ」

「そこはどこだ?」

「おっと、そのくらいにしてもらおうか」

アゴスティーノはミリエルを電話口からはずした。

「この姉ちゃんは俺達が預かっておく。取引をぶっ潰してくれたんだ。それ相応の見返りを用意してもらおうか。後でまた連絡するぜ。その時に詳しいことは話してやるよ。じゃあな」

アゴスティーノは一方的に電話を切った。

ディックはスマートフォンの画面を見つめた。

「ディック、どうしたの?」

詩音が座りつつ言った。

「ああ、ミリエルがマフィアにさらわれた」

「ミリエルさんが!?」

「さっきの電話は俺たちが取引を潰したかららしい」

「それで、大丈夫なの?」

「フッ、奴らは一つだけミスを犯した。天使と悪魔の違いを見落とした。ほかならぬ天使に脅しをかけたことだ」

ディックは立ち上がって窓を開けた。

「ワシの目」

ディックは超高性能コンピューターのように現実世界を見た。

すぐにミリエルの位置が把握できた。

それは衛星写真のようだった。

「そこか……では返してもらうとしますかね、俺の妹をな」

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