キンセンカ
「つりはいい!」
ディックは上回るおカネを出すと、一方的に会計を終わらせた。
ディックたちは店の前に出た。
そこは駅前通りだった。
「ねえ、アニキ! あれを見て!」
「あれは……冥界の植物キンセンカか!」
「植物か……なら、炎で燃やし尽くすか、氷で凍死させるか、いずれかだな」
「ちょっと、待って! 何か変よ! 空間が歪曲していくわ!」
ディックたちは駅前にそびえたつキンセンカに目を止めた。
金色の花に緑の茎を持つ、キンセンカがそびえたっている。
そのキンセンカの周囲の空間にひずみが生じていた。
「おそらくまた何か、出てくるぞ! 気をつけろ!」
ディックが言った。
空間のひずみは黒い穴へと変わった。
「あの穴はバグホールだ! 何かが出てくるぞ!」
サリエルが言った。
くろいバグホールからは多数の大きなハチが出現した。
この蜂は人間と同じくらいの大きさだった。
「殺人バチだ! 来るぞ!」
ディックが叫んだ。
殺人バチは空中を飛行し、人間たちに襲いかかった。
殺人バチからは羽の音が聞こえた。
殺人バチの針は猛毒で、人間を一撃で即死させる。
突然現れた殺人バチの群れに、人々はパニックを引き起こした。
「ちっ! まずはあのハチどもを始末しないといけないな! 行くぞ! ミリエル! サリエル!」
「ええ、行くわよ!」
「やれやれ、ハチどもの始末か。殺虫剤でも欲しいところだ」
三人は武器を手に取った。
ディックは黒ワシのレイピアを、ミリアムは細身の投剣を、サリエルは鋭い刀を。
ディックは人々を襲っていた殺人バチを一刀のもとに斬り捨てた。
体を両断された殺人バチは灰と化した。
「こいつらは死ぬと灰になるのか……いや、今はそんなことを考えている暇はない!」
ディックたちは殺人バチと交戦した。
幸い殺人バチは建物の中には入ってこないらしく、ミリエルは人々を建物の中にまで誘導した。
サリエルは空中戦を挑んだ。
サリエルは刀を振るい、殺人バチを次々と仕留めていった。
サリエルに斬られた殺人バチは地面に落下し、灰とかした。
一方、ディックは地上戦を挑んだ。
逃げ惑う人々を狙う殺人バチをレイピアで突き刺したり、斬りつけたりした。
「!? ザドキエル! 後ろだ!」
「ん?」
突然、ディックの背後から殺人バチが飛来した。
殺人バチはディックを狙ったが、投げつけられた白い剣に貫かれ、落下、絶命し、灰と化した。
白い剣を投げつけたのはミリエルであった。
「アニキ、今のはあたしの借りよ?」
「ミリエルは笑顔で。
「バカ言え。あれくらい自分で始末できたぞ」
「そんなこと話してる場合か?」
サリエルが上空から地上に着地した。
殺人バチはすべて、一匹残らず殺しつくした。後は『あれ』をどうするかだ」
ディックたちは改めてキンセンカを見つめた。
「さて、あれをどう始末したらいいものかな」
ディックがつぶやいた。
「とりあえず、まずキンセンカのところまで行きましょう!」
「そうするとしようか」
三人は駅前に立つキンセンカの前にまでやって来た。
「さて、どうしたものか……炎で炎上させるか、それともいっそ、爆破するか……」
ディックが思案していると、キンセンカに変化が生じた。
「何か変よ!」
ミリエルが叫んだ。
キンセンカは花を顔のように前面に倒してきた。
茎が曲がり、キンセンカの花は頭部となった。
さらに地面に轟音と震動が走った。
地面の道路から、キンセンカの触手が現れた。
さらに口を持つ触手まで現れた。
キンセンカは戦闘態勢を取った。
三人は武器を構えた。
「来るぞ!」
ディックは合図した。
キンセンカは花に魔力を込めた。
「何かでかいのが来るわ!」
キンセンカは膨大なエネルギーのビームを花から発射した。
ビームは駅前に止めてあった車を吹き飛ばし、ビルなどの建物を破壊した。
キンセンカは再び魔力を集め始めた。
「また来るぞ!」
キンセンカはビームをディックたちを狙って発射した。
道路はビームの威力ではじけ飛んだ。
ディックたちは左右に分かれてビームをかわした。
ついでキンセンカは触手を前面に出してきた。口の触手がディックに襲いかかってきた。
ディックはレイピアで触手を斬り落とした。
サリエルやミリエルも剣で触手を斬り裂いた。
キンセンカはツタのような触手をディックたちに向けた。
「触手でからめとってくるつもりだ! 気をつけろ!」
ディックが言った。
ディックたちは来襲した触手を的確に斬り裂いて行った。
「いよいよ、キンセンカ本体への攻撃だ」
「まず、俺がやる」
そう言うと、サリエルは氷の魔法を放った。
氷の結晶が地面から現れ、キンセンカにダメージを与えた。
ミリエルは白い投剣をキンセンカめがけて投げつけた。
「聖炎!」
キンセンカの花に突き刺さった剣から炎が発生し、キンセンカの花を燃やしていく。
キンセンカは頭部を振り、もだえ苦しんだ。
「アニキ! 花が弱点よ!」
「わかった!」
ディックは空中に上昇した。
そして左手に魔力をためて、炎を放った。
キンセンカの花が炎上する。
「とどめだ!」
ディックは剣をキンセンカの花に突き刺した。
「燃えろ!」
ディックは剣を通して、キンセンカの花に炎を送り込んだ。
炎はキンセンカの全体に燃え広がった。
ディックは地上に降り立った。
キンセンカは炎上し、灰色の炎に包まれて、灰と化していった。
「これで、冥界の植物は片付いたな」
「それにしても、こいつらの存在は奇妙だ」
「サリエル? 何か気になるのか?」
「こいつらは倒されると灰になる……まるでこいつら自身が灰からできているように……」
「ああ、それは俺も気になっていた。こいつらは最初から灰で作られていたような気がする」
ディックとサリエルはキンセンカの灰を見つめた。
「何にしても、今日はもう帰らない? 冥界の植物も倒したわけだし、今回の来襲では犠牲者は少数だったわけだし」
「そうだな。梅園市に帰るとするか。まったく、奴らのせいで午後の優雅なひと時が邪魔されてしまった。おもしろくない」
「優雅か。ラーメン屋のどこにそんなものがある?」
サリエルが冷たく言い放った。
「なんだよ、サリエル。おまえはむしろ高級レストランの方が良かったのか? 服まで指定されるぞ?」
「フン、くだらん」
「要はな、俺が言いたかったのは一種の美感があるということだ」




