-79- 寝不足
寝不足で朝を迎えれば安らぎは得られません。逆に言えば、安らぎを得るには、寝不足はダメということになります。
有名作家の小堀は最近、寝不足に陥っていた。当然、安らぎの日々は遠退き、小堀の不満は蓄積していった。
「先生っ! 出来てますかっ!」
出版社から派遣された番記者の岡田が、厚かましく玄関から小堀の書斎へ雪崩れ込んできた。まだ薄暗い、朝六時前である。
「君ねぇ~、朝からバタバタと…。もう少し静かにしてくれんかっ!」
「すみません…。でも今日、戴かないと電話したとおり、僕が編集長に叱られますから…」
「ああ、それは分かってる。だが最近、寝不足でね。筆が進まんのだよ…」
「そこを何とか進めて戴かないと…」
「ああ、昼頃、もう一度、来なさい…」
「分かりました。お願いしますよっ!!」
岡田は念を押すと書斎から出ていった。
「困ったヤツだ…」
小堀は岡田の姿が見えなくなると、ポツリと愚痴った。ペンを置いた小堀は椅子からソソクサ立つと、隣にある、かかりつけの医院の裏口へと向かった。
「寝不足はダメですね…。かなり疲労が溜まっておられるようです。点滴のあと、お薬を出しておきましょう…」
「朝早くからすみません…」
「いえ…」
小堀は自宅へ帰り目覚ましをセットすると、ベッドに横になった。二時間ばかり眠ると、小堀の寝不足の感覚は遠退いていた。すると妙なもので小堀の心は、俄かに安らぎ気分に包まれた。続いて創作気分も巡り、小堀は筆を握り、スラスラと一気に原稿を書き上げた。
こうして昼過ぎに再びやって来た岡田に仕上げた原稿を渡し、岡田は事無きを得たのである。
「やれやれ…」
小堀はミルクティーを啜ると、安らぎ気分でキッチンへと向かった。
寝不足が解消されると、やすらぎ気分になれるだけじゃなく、腹も空くんですね。^^




