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-71- 湯加減

 身体の疲れを癒(いや)す風呂の湯加減は誰もが安らげます。ただ、人によって安らぎを得る湯の適温は異なり、様々です。

 村上は地方の一公務員である。今日も仕事から帰宅し、着替えを済ますと浴室へと消えた。一週間を通じて村上が浴室に向かわない日はなく、ほぼ毎日、湯を浴びるのが常だった。ある意味、湯を浴びなければ、安らぎを得られない体質に村上は変化ていた・・と言っても過言ではない。安らぎを得る手段としての風呂やシャワーは、村上にとって必要不可欠になっていたのだった。

 ある日、村上に出張命令が出た。遠隔地で一泊二日の行程だった。村上は、まあ風呂くらいはあるだろう…と、予約された旅館の名を見ながら思った。案に相違して向かった先の旅館に浴室はなかった。こんな旅館が今どきあるのか…と、村上は不満に思いながら旅館の従業員に訊ねた。

「近くに神明湯という銭湯があります。皆さん、そこをお遣いになります。済みませんねぇ~」

 笑顔で言われても…と、村上は思ったが、疲れを取り、安らぎを得るためには仕方がなかった。

 出張で一日の仕事を終えた村上は、旅館から戻ると、神明湯へと向かった。ところが、である。湯には浸かれた村上だったが、その湯加減は村上が好む温度ではなく、やや高かった。結果、村上は安らぎを得ることなく外食を済ませ旅館へと戻った。

 数日が経ち、役所で復命書を書きながら、もう二度と出張には行きたくないな…と、村上は不満げに思った。

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