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外れ者たちのバラッド~死神オルクと笑わない魔導士~  作者: 宮塚慶
2:王女ミンテと偽りの女神

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第47話 作戦立案

 城を抜け出て歩き続ける。

 門を抜けるまで勇者ティシーが追いかけてきて、今諦めてはいけないだのと必死に声を掛けてきたが、俺は無視を貫いた。

 そして、俺に引っ張られているセルピナも何度も問うてくる。


「待ってくださいオルク。どうするつもりですか?」


 当然の質問だが、俺も明確な答えはない。

 ザグレーン城から追っ手が来ていないことを確認してから、ようやく歩みを止めて振り返った。


「ミンテの態度を怪しいと思うか?」

「え、ええ。罪を償うと言っていましたし、何か脅されているのではないかと考えました」


 それはそうだ。

 ミンテの言い分は、何かに追い詰められているような悲壮感を纏っていた。

 しかし。


「じゃあ、脅しているのは勇者ティシーだと思うか?」

「それは……分かりません」


 セルピナも明確な答えを持っていないだろう。

 今日まで生きてきて、俺は勇者という立場の人間を全て疑い、憎んできた。

 セルピナという例外は出来たが、他の勇者に対しては今も変わらないつもりだ。

 だがティシーという人間を相手にすると、どうもおかしい。


「ミンテがいる部屋の前で見せた説得。あれがヤツの演技だとすれば大したものだ」

「そうですね。まるで本当に心配しているような雰囲気でした」

「それに、ミンテはティシーの言葉に反抗していた」


 以前セルピナが言っていたこと。

 ティシーと対面すると、どれだけ疑おうとしても彼女の発言が正しいように思えてならないと。

 俺の<勇者殺し(スキルブレイカー)>に触れるまで、その違和感を口にすることすらできなかったのだと。

 けれどミンテはティシーの発言を拒絶していた。

 セルピナが反対意見を口にする。


「先ほどの会話は扉越しでした。たとえば、対面でないと彼女の能力(スキル)は発動しない可能性もあるのでは?」

「それでも、意見がぶつかる場面を俺たちに見せるメリットがない」


 ティシーが信用されているように見せるなら、あの口論は逆効果だ。

 それに、まだ懸念点がある。


「トクラの件も気にかかる。あいつはゲトーとティシーが公の場に出た場面を見ただけで、彼女のことを信用していた」

「至近距離の対面でなくとも信用させる力があるのでしょうか」

「なら、尚更ミンテと言い合いになる必要がないだろう」


 それほどまでに相手を信用させる力があるならば、ミンテだって事前に絆されていたはず。

 クシャクシャと髪を掻く。

 この結論は俺の信条に反するが、今はそう言わざるを得ない。


「……疑うべきはティシーじゃないのかもしれない」


 どれだけ彼女を疑っても、怪しい点は見つからなかった。

 もちろん、ミンテが発言したすべてがティシーによる洗脳で、ただ台詞を言わされていた可能性も残っている。

 だが、それほど高度な操作力を持っているならばセルピナだって初日に意識を奪われていただろう。

 あらゆる事象が、ティシーへの疑念を否定している。


「ザグレーン国王やゲトー第一王子、他の王族たちも含めて事情を調べ直す必要がある」


 ティシーの言葉を鵜呑みにするならば、国王やゲトーはミンテの失踪を不問にすると言っていたらしい。

 しかし、ミンテは何らかの罪を償うつもりだと言った。

 彼らがティシーを欺いているのか、他の関係者に怪しいヤツがいるのか。

 何にせよ、ミンテが旅を拒否するほど追い詰めた何かがあるはずだ。

 そしてその重圧がティシー以外から投げかけられたものである可能性を、改めて追わないといけない。


「では、確かめてみますか?」


 ふと、セルピナが言った。

 意味が分からず、俺は聞き返してしまう。


「何を、どうやって確かめるつもりだ?」


 セルピナは息を吐き、覚悟したように告げる。


「勇者ティシーの能力(スキル)が悪しきものでないのなら、彼女は協力してくれるはずです。なら私が直接ザグレーン城に行き、ミンテと話し合います」

「待て。何故そこで単独の作戦が出てくる?」


 たしかにティシーへの疑いは少し薄まったが、だからといって一人で敵地に乗り込む意味はない。

 それ以前に、悪意がなくともティシーは勇者だ。女神の加護を使える以上、何らかの作用はある。

 それでもセルピナは引かなかった。


「オルクに能力(スキル)が効かない以上、相手は隙を見せないと思います」

「だからって、わざわざ罠にかかってどうするんだ」

「無論、私も警戒はします。オルクが他の情報を洗い出している間に、私も直接働きかける。別行動で効率アップというわけです」

「全然納得できないんだが」


 周囲の調査からやり直そうとしている俺が慎重になりすぎなのかもしれないが。

 セルピナの言い分はあまりにも力技すぎる。誰が敵で、何を信用するのかは見極めないといけない。


「それに、ミンテと話し合う際に邪魔が入って、もしも私に何かあったら――」


 彼女は、俺をじっと見つめた。


「オルクが足掻いてくれるでしょう?」


 ティシーと対峙した最初の夜に俺が言ったことを思い出させるセルピナ。

 何かあれば俺は勇者を始末する。それがセルピナであっても。しかし他の手があるなら最後まで足掻く。

 彼女のピンチを見過ごすつもりはない。

 セルピナも、ミンテも。助けられるなら助けるつもりだ。

 だが、だからといって危険に自ら飛び込むのは看過できない。


「異常があれば助けられるが、ザグレーン城に入った瞬間滅多刺しにされても対応できない。分かってるのか?」

「刺されても焼かれても私は死にませんよ」

「いや、たとえ話としてだな……」


 冗談めかして言うセルピナ。

 でも、そうか。不死である彼女が死ぬことはない。たとえ相手が洗脳できるとしても、俺ならば敵の能力(スキル)を打ち破って助けることができる。

 彼女が無茶を言うのは、その後始末を俺に任せるという信頼だ。


「……分かった。そこまで言うなら、作戦を立てよう」

「ありがとうございます」


 正面切ってミンテと対話をするセルピナ。

 万が一があった際にそれを助ける準備をしながら、情報を収集する俺。

 ミンテの真意を聞き出して、可能であれば再び旅に連れ出すシンプルな計画だ。

 やってやろうじゃないか。

読んでいただいてありがとうございます!

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