小話④盗賊団と衛兵団2
盗賊団と衛兵団が店にやってきた。客達も対立する両者のプレッシャーで、話し声が消えていく。このあとの展開は、予想がつく。このまま、店内は戦場へと成り果てるだろう。
どちらから仕掛けるのか?入り口に衛兵団が詰めている為、店外への脱出も難しい。客達は、ただ成り行きを見届けるしか、手段がなかった。
「……」
そんな緊迫ムードを弛緩させるように、どこからか香ばしい匂いが漂ってきた。その場にいた全員がその匂いに釣られて、カウンターの上に置かれた料理をみる。まだできたてなのか、ジュウジュウと肉の焼ける音。スパイスのきいた香辛料。肉の上からとろりと滴る、半熟のたまご。みただけで、食欲をそそる。その横にどんっ、と音を立てて、一升瓶の地酒を置く。
「……ここは、酒と料理を楽しむ場所だ」
マスターは、低く冷たい声で言うと、団長と隊長をぎろりとねめつけた。その魔獣をもたじろぐような眼力に、両者の背に冷たい汗がつたう。
「楽しめないやつは、出て行け!!」
激しい叱責が、その場を支配す。この店で一番力を持っていたのは、衛兵団でも、ましてや盗賊団でもない。
「「は、はい!!!」」
酒場のマスター、その人だった。
マスター最強説(笑)。