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小話29 つくれない3
「私は鍛治師だ。鉄を打って、客が満足する最高の品を造るのが仕事」
「鍛治師か。俺もしょっちゅうお世話になってる」
男の言葉に作業着の男は、男の腰に吊るす剣を見て苦笑した。
「打たれた剣を見れば分かる。長く使い込まれているな」
作業着の男はそう言って、顔を伏せる。唇を強く噛み締め、拳を白くなる程握り込んだ。
「そんな長く愛される剣を作りたい。でも」
ーーどう作ればいいのかわからなくなって、打てなくなってしまったんだ。
鍛治師と名乗る男の叫びに、男は口を開く。
「お前さん、馬鹿だな」
「はい?」
「相手の事、考えるのも大事だがそこに自分はいるのか?」
「自分?」
「俺は人に説教垂れる程、頭良くねぇ。だから説明なんて出来ないが、そう感じた」
作業着の男はおし黙り、自分の両腕を閉じたり開いたりを繰り返す。今まで訪れた客達や熱した鉄を、汗水流してハンマーを打ち続けた日々を。そして心の隅にあった高みを目指し、楽しんでいた自分自身を。
イスから勢いをつけて立ち上がり、男に頭を下げる。
「急用を思い出した。失礼する!」
「おう、頑張れよ!」
作業着の男はそのままの勢いで、酒場を飛び出していく。
「若いって、いいねぇ」




