小話20 盲目の修行人2
マスターと共に店の中へ入り、盲目の女性は迷うこと無くカウンター席へと腰を下ろした。一つ一つの所作には、盲目と言う事実を感じさせない。顔をあげ、マスターのいる方向に向けて口を開く。
「早朝に苦労をかけて申し訳ないが、肉や魚を控えた料理を頂きたい」
「分かった」
マスターは嫌な顔をせず了承すると、早速調理へとりかかる。その間に酒場の扉が開き、常連客の男が来店。
「よっしゃ、一番乗り……じゃねぇな。先客か」
カウンター席に座る女性に気づき、常連客の男は苦笑。扉が開く音に気づいて、彼女は振り向き会釈する。
「おはようございます。先にお邪魔している」
「別に責めちゃいないさ。ん? お前さん、目が見えねぇのか?」
「これでも修行中の身。不自由は無いので」
「ほぉ、珍しい」
男は女性の横に座り、話し相手となる。その会話の中で女性はふと、目的地である「ある場所」について質問した。話を聞いた常連客の男は驚いた様に感心し、目的地までの道を教える。思わぬ情報に盲目の女性は感謝し、手のひらを合わせて頭をさげた。対して男は照れたように頬をかく。
「大した事は言ってねぇよ。それにしても強くなる為の修行の旅ねぇ。ちょいと戦う姿、見てみたいものだな」
「流石に店内では、ちょっと」
「相手、なる」
と突然、会話していた2人の間に1人の少女が現れた。
「女の子の声?」
「うおっ! いつの間に!?」
盲目の女性は首を傾げ、男はその場で仰け反る。紫色の髪をなびかせ、腰にレイピアをつった10代の少女。少女は男を一瞥する事なく、じっと盲目の女性を見つめた。
「あなた、強い。マスター、いい?」
少女は言葉少なく言うと、調理をするマスターに視線を浴びせる。その瞳は真剣な光を宿し、断られても実行に移しそうな危うさを持つ。マスターは少女と盲目の女性を交互に見て。小さなため息をつく。初めてきくマスターのため息に、男は場違いながらも気を削がれたが、次にマスターの発言は続く。
「血を流すのも、怪我をさせるのも無しだ」
「分かった」
「少女のお相手、お受けしよう」
女性と少女は互いに頷き、酒場の中央へ向かう。
男は最初呆気にとられていた。しかし乱闘騒ぎを禁止するこの酒場で、まさか女同士の闘いを見る事になるとは、夢にも思わなかった。なんだか気分が高揚してきて、心が踊る。これは見逃せない一戦だ。男は口元に笑みを浮かべた。
「楽しくなってきたぜ!!」
「「 …… 」」
修行の旅を続ける盲目の女性。
謎のレイピア使いの少女。
お互い相対し、構えをとる。そして。
「「 !! 」」
両者は、同時に駆け出す。己が力を信じて。




