小話13 炎を纏いし少女
貿易都市にある、とある酒場。
ここは酒も料理も美味いと評判があり、多くの人々が集まる。勿論、オフの衛兵がいれば冒険者も。それだけに自然と騒動も起こるのだが。
夕方。陽が沈み始め、辺りが夕焼け色に染まる頃。酒場に見慣れぬ客がやって来た。姿は幼く背も低い。燃える様な紅の髪を2つに結んでいる。髪と同じ紅の瞳は大きく、可愛らしくあるが子供相応の笑みも柔らかさも無い。睨みつける様に酒場の中を見渡す。
「ふーん」
突然現れた年端も行かない少女は、値踏みしながらひざ上長さの簡素なスカートを揺らし、ズンズンとカウンターに向かう。少女とは思えない程の覇気と、大の大人達に臆しない態度に軽口を叩こうとする者はいなかった。
やがて少女は、カウンターの前でピタリと立ち止まり、厨房のマスターを見上げる。
「あんたがマスター?」
恐れ知らずの少女は、腕を組み薄く笑み浮かべ、傲岸に問う。
「あぁ」
マスターも視線を下ろして、応えた。
「この店の中じゃ、あんたが1番ね」
紅髪の少女は、そう言うと右腕を斜め下に振るう。その途端。
ゴォォォっと音がして、少女の身を赤き炎が包み込む。渦から火の粉が舞い、天井にまで立ち上る。しかし、その炎は店を焼く事も無く、少女を燃やす事もない。
「なら始めましょう? 暇つぶしに私と戦いなさい!!」
マスターの災難(笑)




