小話36 呪いにかけられて2
そろそろと中へ入った2人は、何か祝い事でもあったのか、飲めや歌えの席を横切ってまっすぐとカウンター席に向かう。カウンター席にもすでに人の姿はチラチラ見受けられたが、今は関係ない。男女が求めている人物は、その奥。厨房で忙しく動き回るマスターであった。
「おい、マスター」
女の方がカウンターから身を乗り出して、マスターの背に声をかける。その隣で、男が困ったように眉を寄せた。
「 …… 」
「 …… 」
呼びかけてしばらく待つが、返事が来ない。女はムッと苛立ちの表情をみせると、今度は大きく息を吸ってあらん限りに叫ぶ。
「おい、マスター!! 呼んでるだろ!!」
『!?』
女性としては珍しい、その大声に酒場内が一瞬、静寂に包まれる。
「これ幸いに」と一気に用件を述べた。
「お願いだ。情報を売ってくれ! どんな些細な事でもいいから、今、必要なんだ」
「 …… 」
マスターは振り返ると、必死の形相で訴えかける女を視界に入れる。盛り上がっていた客達も、今やマスターとその女に注目。マスターの次の言葉を待つ。
「何の情報が欲しい?」
「そ、それは」
男女は互いの視線を交わし合うと、女は冷や汗を流しながら言う。
「呪いを解く方法…… 俺たちの入れ替わった精神を、元に戻す方法だ!!」
『い、入れ替わりの呪いだと!?』
驚愕の発言に、客達は心中で叫ぶのだった。




