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Agriculture ーWhy?ー



「なぜアッシュとヴィットがヴェルディの魔法を制限するのか?」という説明回です。





そもそも、魔法は万能ではない。

なんでもできると思われがちだが、魔法が効かない事象というのも幾つか存在する。


天候を変える事は不可能、金の偽物を作ることはできるが金そのものは作れない、寿命の延長…など。



そして「植物の生のコントロール」もそのうちの一つである。



禁止されているから使えないのではなく、元々魔法の力で植物の成長を急速に促したり、意図的に枯らしたりする事はできないのだ。



草花や木々は自然の理の中で生き、そこに人が干渉する事は許されない。植物が枯れるのも、萎れるのもら花開くのも、自然の理のままに。



例として、パッサ2枚分を無に帰したタックさんの事例を挙げると、アレはパッサを跡形もなく消し去っているので、虫にかけるはずの「消去」魔法を植物にかけた事になる。

なかなかギリギリのラインではあるが、消去は生のコントロールには含まれない。



まぁ、つまりは生きている植物の成長(・・)をどうこうしようとしなければ、他の魔法自体は普通にかけることができるというわけだ。



とにかくただ「植物の生のコントロール」、その一点において、どれほど莫大な魔力を持ってしても、人はこの理は曲げられない。





ーーと言われていたのだが。



ヴェルディがやってみせた『植物をちょっと元気にする』行為は明らかに、自然の理に干渉する魔法である。



なぜヴェルディがこの魔法を使えるかは全く分からない。



発覚したのは10年ほど前、ヴェルディが小学校に入って1年経ち、周りの子供から「魔力なし」と言われるのにも少し慣れてしまった頃のこと。



その日は春の収穫祭前日で、カロッタの街全体が少し慌ただしかった。

農家が人口の大部分を占めるカロッタでは、春と秋の恒例行事である収穫祭も街をあげて大々的に行われ、王都からわざわざ見物にくる人もいるほどだから、そりゃ力も入る。



また、収穫祭の目玉となっているのが3日目の夜、収穫の式典でトリに行われる「新緑の祈り」。

農家全員で捧げるこの祈りは、なかなか荘厳で見応えがある。



この新緑の祈りはカロッタの街に住む人なら全て暗記できているのが当たり前とされていて、大抵小学校に入ると同時に親が少しずつ教え込んで行くのだ。



ブルーベル家も例に漏れずヴェルディに「新緑の祈り」を徐々に仕込み、頭のいいヴェルディはするすると全てを覚えていった。



そして本番前日ーー。

全章の祈りを言えるようになったヴェルディは、練習として足元に生えていた萎びた雑草を収穫祭で使われるパッサに見立てて祈り始めた。



新緑の祈りは魔法が使えない代わりに、せめて神に豊作を祈ろうと生み出されたもので魔法の呪文でも何でもない。ただの祈りだ。



この祈りで魔法が発動するわけでもないし、第一ヴェルディは魔法をつかえない。

したがってヴィットはただの子供の遊びだと娘を微笑ましく見守っていたのだがーー



微笑むヴィットの目の前で、その雑草がヴェルディの祈りに応えるようにみるみる元気を取り戻していく様を見て驚愕し、呆然とする中、唱え終わったヴェルディが糸の切れた人形のように倒れ込んだ所で「これは只事ではない」と、とっさに理解した。


慌てて倒れたヴェルディを病院に運びこみ、治療を受けさせると、医師は「このくらいの歳の子では珍しいんですがねぇ」と首をひねりながら、原因は「魔法の使いすぎによる一時的な魔力不足」だとヴィットに告げた。



それは、あの場でヴェルディが雑草に使ったのは魔法であるという、揺るがぬ証拠。



現に魔法だと確かめるのに、ヴィットの監視下で行った実験全てて草花は元気を取り戻し、それに反比例するようにヴェルディは倒れたり、ぐったりしたりと魔力切れの症状を起こす。



疑う余地もない。これはヴェルディの魔法だ。



もう偶然として片付けるのは無理な話だった。



ヴェルディは、不可能とされていた自然の理に干渉できてしまう。それは下手をしたら魔法の原則を揺るがしかねない。



アッシュやヴィットがヴェルディの魔法を制限するのには、十分すぎるほどの理由だった。





…しかし当の本人は自然の理とかそんな大げさなものじゃなく、ただ「ちょっと植物を元気にできるだけ」だと思っている。



だってヴェルディは、とにかく魔法が使える事が嬉しくて、それが特別な力だろうとそうでなかろうと、彼女にとってはどうでも良い事だったのだ。



それまでヴェルディがずっと抱えてきた魔法に対するコンプレックスを考えると、こうして浮かれるのも無理はなかったのかもしれない。



そしてこの件が引き金となって、ヴェルディの農業好きが急加速し、手に負えないほどになったのも。




ーーところが、結局アッシュとヴィットに魔法の制限を余儀なくされたヴェルディは、他の子にとっては相変わらず「魔力なしのヴェルディ」のまま。

からかいはそれからもずっと続いたため、ヴェルディの魔法コンプレックスが完全に消えることはなく、今も心の奥底に残り続けたままである。






とりあえず投稿してみたのですが、色々と納得いかない部分もあるので、冷却期間を置いてから少し手を加えようと思います…!


多分ようやく次回でアッシュ出ます。




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