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24.その道の先には

「アリスー! 起きろ、お前が行くったんだろ!」


 うん。わかってるよ。昨日ゆっくりしたんだし、今日は早く起きようって思ってたんだよ。思ってたんだけど体動きません。疲れとれないよー。


「アリスご飯、ご飯!」


 隆はワザとなんだろうか……でも、可愛い。よし! っと体持ち上げます。

 自転車一日目だ。今日こそ脇道の最終地点見てやる!




 まだボケーっとしながら、朝食食べてます。

 気緩んだから? ね、眠い。


「アリス聞いてんのか?」

「えっ? 何?」

「昨日歩いた感じだと向こうは栄えていない。多分徒歩で一日だろうから、自転車なら大丈夫だと思うけど、急ごうって話。わかった?」

「あ、うん。ばっちり」

「じゃあ、お弁当頼んでるから、食べたらすぐに行くぞ」

「はーい」


 *


 門を出て自転車に乗ります。昨日と同じ道の方が距離もわかりやすくていいんじゃないかと、昨日と同じ道だけど気分が違う!

 気持ちいい。爽快感。

 しばらくみんなそれぞれの気持ち良さに酔ってます。

 と、類がスピードを緩めた。


「昨日のお昼ここじゃない?」


 方向音痴な上に記憶力も悪い私にはわからないです。


「あ、本当ここだ」


 隆も言うならここか。……自転車恐るべし。まだまだお昼には遠いよ。

 そこも過ぎてドンドンいきます。

 そう、お昼には着かないとまた引き返すんだ。 さすがに今回だめならもう言えないし。

 どうしよう着かなかったら……あれ? なんでそんなに行きたいんだっけ? あ、農家というか農村があると仮定してどうなってるか見たかっただけだ。何となくケンタウロスの言葉につられて。

 まあ、無理ならいいや。目的思いだして気楽な気持ちでサイクリングに気持ちきり替えた。



「おい! あれ!」


 あーあ、そろそろお昼だなーって思った頃、見えてきた。


「また壁に門だな」

「でも、門の外にも!」

「ああ、広がってるな。農業してたんだな」


 そう壁と門に囲まれた外にもずっと畑など広がっている。ただ、人の手入れが出来ずにいるから放置されているんだろう、草が生え放題で荒れ果てている。


「門の中に入る?」

「うん。自転車押して入ろう」


 中に入ると酪農や農家や農地はたくさんあったけど、外とを比べれば数分の一だ。でも中の農地は作物が生えてキチンと管理されている。

 よく見ると小さな農家は戸が開け放たれていて中は何もない。


「これって農地が外だからビックダースがいるから農耕出来なくてここを出て行ったってこと?」

「ああ、それで体に悪くても草を取るしかないのかも」

「で、最終は王都へ行こうとするんだな? 職を求めて」

「ねえ、でも最初は野宿したよね?」

「あの辺りは大丈夫なんじゃない? だって壁とか門なかったし」


 隆に言葉に思い出す。そういえば、見渡す限りの平野だった。少しの丘の向こうが田畑だったんだ。だけど、壁の影もなかった。


「なんか村人っぽい人が見てるよ」


 類の見る方向には村人っぽい人がいて、こっち見ている。ああ、不審だよね。きっと。

 普通は来ないよね人の村。商売じゃなければ。なのに私達自転車だし。完全観光気分にしか見え無いよね。事実観光的なもんなんだけど。この国を見て回るんだから。


「そろそろ、行こうか」

「ああ」

「うん」


 と、方向を変えようとした時その村人さんは話しかけてきた。


「おーい! 坊主達」


 なんでいっつも坊主かお嬢ちゃんなんだろ。私お嬢じゃないし、類と隆は坊主じゃないんだけど。

 と、そんなことはお構いなく村人さんは駆け寄ってきました。嬉しいのかな? 外部の人間に会うの?


「ここには職はもうないぞ!」

「え、あ、そうですか」


 なんか職探しだと思われてるみたいだ。


「村の者も出て行く者がたくさんいてな、一番壁の中に農地持ってる家も雇ってる者もみんな解雇にしたからなあ」

「あー、そうですか」

「今回の王様は120年しか持たなくて、お陰でビックダースが来るのが早くわかったから壁が作れたんだけどな」

「え、じゃあ、いつもは」


 類、思わず聞いちゃいます。


「いつもは相当被害出てから壁作りに入るみたいだよ。何せビックダースは王都から来るみたいでな。国の中心からじわじわ増えるんだよ。今回はどこまでいくんだろうな。田舎の者は小人対策しか知らないだろうからなー」


 ちょっとした疑問。


「あの。門の外で畑に作物を育てても大丈夫なんじゃないんですか? 昼間は門の外に出れますよね? あと、家畜とかも」

「ああ、都会の人間だね。夜に畑や家畜を襲う動物がいるんだよ。普段は皆で交代して見張ってるんだけどね、壁があって内側にいるとみんなやられるんだよ。本当に困ったもんだよ」


 なるほど。動物見ないのはほとんどみんな夜行性なのね。


「呪文もダメなんですか?」

「ああ、ビックダースには呪文は効くんだが他の動物には効かないんだよ。ん? 知らんのかい?」


 魔法いちいち面倒なんですけど! なんか思っていた魔法とは違っているな。案外魔法って万能じゃないのね。


「じゃあ、この中に農地持ってる人しか生きてけない……」


 隆はぼそっとつぶやく。


「ああ、そうだね。もともと金持ちが家の近くの農地やなんかを持っててね、壁や門を作る費用の大半を出すからどこからどこまでってお金を出した者が決めるんでな。でもいつ迄持つか……」

「え?」

「国全体の農地が削られてるんだ、それで国の全員を賄ってるんだ。いつかは終わりが来るだろう。巳国みいにね」


 ずっと聞きたかったけど聞けなかった疑問を聞いてみた。


「あの、巳国は何年王様がいないんですか?」

「ん? 習ってないのかい? 巳国は五十年以上いないよ」

「長い……」

「ああ、長いね。うちはまだ三年だからね。でも、もう三年だ。龍国は比較的永く在位していたし不在期間も短いって話だけど、今回はどうなるのかねー」


 そのままおじさんと別れ門を出る。みんな無言になる。


「なんか国が荒れるって、荒地をイメージしてたんだけど、なんか違うね」

「人が荒れるのかも」

「食物の恨みか」


 そう、食からお金からドンドン攻めてこられるんだ。


 …………。


 ダメだ!


「お昼にしよう! すっかり過ぎちゃった」


 さすがに村の前では食べられないので、少し自転車乗って行ったところでお弁当を広げることにした。


「ねえ! やっぱり王都へ行こう!」

「どうした?」


 私の提案に驚く類。


「影響された?」

「こんなんじゃ決めれない。王都へ行けば答えがあるかもって。それに自転車があるんだし!」

「まあ、一ヶ月が一週間にはなるだろうしな」


 類の言葉に頷く。ただ……。


「ねえ、二人とも無理してない? 私にあわせてない?」

「え?」

「い、いや」


 やっぱり。


「合わせてくれてたのね」


 無言な二人。


「ケンタウロス呼んで帰る? 私はお金もあるし自転車あるし大丈夫だから!」

「嫌だよ。合わせてない。僕も行く。行きたいから行くんだ」

「俺もだよ。アリスの為にこんなことするかよ」


 隆に続いて類までも反論する。私はフーッと息を吐く。よくわかんない二人。




「じゃあ、食べて、草取って、今日こそ寝る服を買おう!」


 もう吹っ切ろう。


「そこは忘れないね」

「すぐ忘れるくせに。あと食糧もだぞ!」

「ああ、そうだった。缶詰ってないのかなー?」

「あれウマくない?」

「でも、喉乾くもん!」

「確かに」


 隆が笑い類も私も笑う。やっといつもの三人だ。


「じゃあ、草んとこまで行きますか?」

「ああ」

「一番!」


 二人を追い越し来た道を帰る。

 今はこの道を進む。どんなに悩み考えてもそれ以上の答えなんて思いつけないんだから。

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