5.話す隙がさらに無くなってしまった……
「こーいち〜!ことちゃんとあそぼ!」
「おわっ!美琴!おじさんは、仕事があるって言っただろ!」
「うわっ!イケメンだ!ずるーい!ことちゃんもイケメンとお話しするー!
もしかして、テレビとか出てる?YouTuber?」
乱入してきた少女はメリーより少し幼かった。
美琴と呼ばれた少女は、私を見るや否や目を輝かせ、突撃してくる。
「てれ…、ゆーちゅーばー?」
「こら、探偵先生が困ってるだろ!すみません、ここで仲良くなった子で。」
「こーいちねー、すごいよー、よぞさけを書いたんだってー、お母さんが大好きな映画なんだー、イケメンさんお膝のせてー。」
「よぞさけ…?」
疑問が無くならない。
美琴は困惑している私をよそに、膝に座って、ふんと鼻を鳴らしていた。
「探偵先生抵抗しましょう、子供と言っても生意気な子ですから。」
「こーいち、大人でしょ。
だめなんだよ、ちくちく言葉。」
「ごめんね!!でも、お客さんだから、失礼しないでほしいかな!」
まるで兄弟のように話している二人を見て微笑ましく思いながら、失礼ではない旨を伝える。
「いや、この年の子なら慣れている、大丈夫だ。
こん…姪がいるんだ。」
つい婚約者と言いそうになるがあの婚約が異例中の異例なのは自覚しているので、姪だと言い直す。
「そうなんですね。
でもこの子のためなので、ほら降りて。」
「えー、こーいちのケチンボ。
声でかおばけー。」
「ケチで結構、おじさんは美琴より元気なだけですー。」
私の膝の上に座っていた美琴の手を引っ張り下ろすが、力を抜いていたせいか美琴は床へと引き摺られていった。引き摺られている時にも、美琴と波木はおしゃべりを続けている。メリーとノアも顔を合わせた時は、こんな風に仲良く話していたな。そう思い出に耽る私の目の前が真っ青に染まる。
「ねぇ!見て!ことちゃんのペンギン!お母さんが作ったの!」
青い布で作られたペンギン?のぬいぐるみがおそらく目の前にあるのだろうが、いかんせん近すぎて、青いということしか認識出来ない。だが、こういう時の子供に対する対応は……。
「美琴のお母さんはすごいな」
「えへ、んふふ…そうでしょ〜!」
母を褒められ嬉しそうに笑う美琴は褒められたことに意識が向き、離れてくれた。
ふさふさとした布がペンギンのような形で縫われている、ぬいぐるみとは違うが、母の愛で完成させた物は子供にとって至高の品だろう。
「ペンギンのタオルアートで、美琴がもっと小さい時に気に入ったからお母さんが縫ってくれたんだよな。」
「何もぬってないよ?」
「ああいや、うん、そうね〜。
……前置いてったぬり絵する?」
「する〜!色鉛筆取ってくる〜!」
美琴は飛ぶように立ち上がると、ドタドタと部屋を出ていった。
元気な子だ、と脳裏で私を罵倒するメリーと比較してしまう。
雑魚だ、残念な人だのと言われるより、年相応に遊ぼうとしてくれれば…いや、貴族のご令嬢に求めることではないな。
そうやって考え込んでいると、波木はこちらに向き直り、申し訳なさそうにする。
「せっかくお時間頂いたのにすみません。」
「いや、そのことなのだが、私は隣の部屋の者で……。」
「きゃあっ!」
ドアの向こうからおそらく美琴の小さな悲鳴が響いた。




