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推しアイドルの握手会に参加したら推しアイドルごと異世界へ飛ばされました。異世界でも推しを推してたら、なんか世界を救いそうです! ~推しとラブコメ? それは解釈違い!~  作者: tada
第二章 森林都市シンポジオ編

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39.幕間~シオンの変化

◇幕間~シオンの変化(Shion POV)


 気持ちいい、麗らかな午後。

 日の光で少し暖まった岩と、足先をさらう清流。


「……ギュエ!」

「あ、ケンチキもお水飲むの?」

「……ギュ! ギュ!」


 私の顔より大きいケンチキの嘴が、器用に川の水を摘まんでる。

 あー、本当に気持ちいいわね。

 森林都市を後にした私たちは一路、火の国へ。段々と木々も少なくなってきて、もう森林とは呼べないくらい。ここから先はさらに植物が減って、岩地になっていくらしい。

 なので、今日の旅程はここまで。

 半分休息ね。

 なんだけど……。


「ほら、俺の方がでかい! 明らかにでかい! 俺の勝ちだろ?」

「なに言ってるの。リクトのは"でかい"じゃなくて"長い"でしょう? 見なさい、この丸々と太ったお腹を! アタシの方がでかいわ!」


 ……またやってるわね。


「シオンさん、テント設営終わったんですね。あれ……またやってます?」

「そうなの。男の人って……男の人よね」

「そうですね。食べたら一緒なのに」


 リクトも、ビステッカさんも私より年上のはずなんだけどなぁ……。


「俺の釣った魚の方がでかい!」

「アタシの釣った魚の方がでかいわ!」


 ……どっちでもいいなぁ。


◇


 夜の帳の中心で、パチパチと弾ける焚き火。

 そこに何本も突き刺さっている魚たち。

 結局、決着はつかなかったみたい。


「くそ、次こそは……」

「しっ! リクトだめよ。その話は終わり。また怒られたいの?」


 この男の人たちは、さっきまでタルトさんに叱られていた。釣りすぎです。保存できないものをこれ以上釣る気ですか? 全部食べて貰いますからね?

 一言も反論できてなかった。


「もう焼けましたかね? あ、リクト、あれ取ってください」

「はいよ……ん?」

「あ、まだケンチキの荷物の中かもしれません」

「あ、取ってくるよ」


 あ、また。

 最近……リクトを見てると、なんかモヤモヤする。

 なんだろ、これ。


「……あれ? ビステッカ! 塩がない!」

「あ、アタシの荷物の中かもしれないわ」

「したらテントか」


 むー……?

 ビステッカさんでも、タルトさんでもないのよね。リクトだけ。

 なにかしら。別に……いつも通り、変わらないわよね? むーん……?


「あったあった」

「シオンさん、味付けは自分でしますか?」

「あ、うん!」


 お魚は……これにしよっかな。より取りみどりね。


「リクト、食べ終わったら今日はどうするの? 一応は休息予定だけど」

「ビステッカはどうするんだ? 熱っ! 旨そうに焼けたな」


 むー……やっぱりモヤる。なんか、引っ掛かる……。

 

「アタシはやるわよ、日課ですもの。逆にやらないと落ち着かないのよ」

「したらお願いしていいか? 最近、少しわかってきた気もするし」

「まぁ剣の道は一日にして成らず、よ」

「だよな。あ、ツキシオ!」


 ……ん? あれ?


「……どうかしたの?」

「いや、流石にかけすぎじゃないかなーと思って。塩」

「あ……」


 お魚、真っ白にまではなってないけど、明らかにかけすぎちゃった。


「シオンちゃん、それアタシが貰うわ。アタシどのみちそれくらいかけちゃうもの」

「ありがとうございます」

「ツキシオ。こっちのやつがもう焼けると思う」


 ……ん? あれ?

 …………んん?

 あ。


「あー! それだっ!」

「えっ? どれだ?」


 モヤモヤするの、そのせいだ!


「リクト!」

「あ、はい!」

「この人は?」

「え……? ビステッカ?」

「ん!」

「……タルト」

「私は?!」

「……ツキシオ?」


 私だけ……アダ名じゃない!

 ツキシオは愛称じゃないもん! 芸名のアダ名!

 みんな、”シオン”って呼んでくれるのに……この人だけ、ずっとアダ名!

 シンポジオを出たあたりから、リクトとビステッカさんは仲間、というより昔からの友達、みたいになってる。

 この前のすべり台のは、タルトさんと二人で飲んでたらしい。

 なのに……同じ仲間なのに、私だけ、まだアダ名で呼ばれてる!

 仲間なのに!

 

「……シオン」

「え?」

「シオンと呼ばない限り、私はもう返事をしません」

「……え? え……?」


 ずるい。私だってパーティーの一員だもん。ピアットでだって、シンポジオでだって絆イベントが色々あったのに……私だけ、なんかまだ距離感ある!


「つ、ツキシオ……?」

「つーん」

「え、マジでか……?」

「そう言えば、私たちは慣れちゃってましたけどフロランタン女王も最初戸惑ってましたよね。リクトだけ呼び方が違いますから」

「いい機会なんじゃない? 確かに周りは不便よ、アナタがツキシオって呼ぶの」

「ちょ……え……マジ?」

「リクト!」


 私の目を見なさい。わかるわよね?

 は、や、く、す、る!


「えっと…………シオン?」

「……よろしい」


 あー……すっきり!

 モヤモヤ晴れたぁ!

 

【おまけ】


「マドレーヌ司祭! こちらの飾り付けはこの位置でよろしいですか?」

「よろしいですよ! 順番が入れ替わってしまいましたが、やはり出発の式典は荘厳でなければなりません。私の魔力もバッチリ回復しましたし、シオン様たちもそろそろお戻りになるはず。皆さん! もうひと踏ん張りですよ!」

「マドレーヌ司祭、お手紙が届いております。二通。タルト様とフロランタン女王陛下から」

「……え? 文を出すより戻った方が早いのでは……? いただけますか」

 

 "マドレーヌ司祭へ。ビステッカ隊長の剣がまた折れてしまいました。フロランタン女王からも報告があると思いますが、魔族の状況が異常です。新しい剣の調達が急務であるため、ピアットには戻らず先に火の国へ向かいます"

 

「……え? み、見間違えでしょうか?」


 "マドレーヌ司祭へ。ビステッカ隊長の剣がまた折れてしまいました。フロランタン女王からも報告があると思いますが、魔族の状況が異常です。新しい剣の調達が急務であるため、ピアットには戻らず先に火の国へ向かいます"


「……」

「……マドレーヌ司祭? いかがされましたか?」

「……中止です」

「……え?」

「飾り付けは……中止します……」


次章 第三章 火の国ムトファク編

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