8/1518 天漢 相向立而 吾戀之
題詞:山上<臣>憶良七夕歌十二首
題訓:山上臣憶良が七夕(なぬかのよ)の歌十二首
校異:巨→臣 [類][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌
8/1518
原文:天漢 相向立而 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈 [一云 向河]
訓読:天の川 相向き立ちて 我が恋ひし 君来ますなり 紐解き設けな
仮名:あまのがは あひむきたちて あがこひし きみきますなり ひもときまけな
(一云)
原文:天漢 向河 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈
訓読:天の川 川向き立ちて 我が恋ひし 君来ますなり 紐解き設けな
仮名:あまのがは かわむきたちて あがこひし きみきますなり ひもときまけな
***私的解釈***
修正:天漢 向相而立 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈
訓読:天の川 向き合ひて立てる 我が恋ひし 君来ますなり 紐解き設けな
仮名:あまのがは むかひてたてる あがこひし きみきますなり ひもときまけな
(一云)
修正:天漢 向河而立 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈
訓読:天の川 川向きて立つ 我が恋ひし 君来ますなり 紐解き設けな
仮名:あまのがは かはむきてたつ あがこひし きみきますなり ひもときまけな
~~~~~~
8/1519
原文:久方之 漢<瀬>尓 船泛而 今夜可君之 我許来益武
訓読:久方の 天の川瀬に 舟浮けて 今夜か君が 我がり来まさむ
仮名:ひさかたの あまのかはせに ふねうけて こよひかきみが わがりきまさむ
校異:漢 [京] 天漢 / <>→瀬 [類][矢]
***私的解釈***
修正:久方之 漢<>尓而 船泛 今夜可君之 我許来益武
訓読:久方の 天の川にて 舟浮かばし 今夜か君が 我がり来まさむ
仮名:ひさかたの あまのかはにて ふねうかばし こよひかきみが わがりきまさむ
~~~~~~
8/1521
題訓:(8/1520の)反し謌
原文:風雲者 二岸尓 可欲倍杼母 吾遠嬬之[一云 波之嬬乃] 事曽不通
訓読:風雲は 二つの岸に 通へども 吾が遠妻の 言ぞ通はぬ
仮名:かぜくもは ふたつのきしに かよへども あがとほづまの ことぞかよはぬ
(一云)
原文:風雲者 二岸尓 可欲倍杼母 吾波之嬬乃 事曽不通
訓読:風雲は 二つの岸に 通へども 吾が愛し妻の 言ぞ通はぬ
仮名:かぜくもは ふたつのきしに かよへども あがはしつまの ことぞかよはぬ
***私的解釈***
(一云)
訓読:風雲は 二つの岸に 通へども 愛しき吾妻の 言通はぬぞ
仮名:かぜくもは ふたつのきしに かよへども はしきあづまの ことかよはぬぞ
~~~~~~
8/1522
原文:多夫手二毛 投越都倍<吉> 天漢 敝太而礼婆可母 安麻多須辨奈吉
訓読:礫にも 投げ越しつべき 天の川 隔てればかも あまたすべなき
仮名:たぶてにも なげこしつべき あまのがは へだてればかも あまたすべなき
左注:右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云 帥家作]
校異:伎→吉 [類][紀]
たぶて:つぶて
~~~~~~
8/1523
原文:秋風之 吹尓之日従 何時可登 吾待戀之 君曽来座流
訓読:秋風の 吹きにし日より いつしかと 我が待ち恋ひし 君ぞ来ませる
仮名:あきかぜの ふきにしひより いつしかと あがまちこひし きみぞきませる
***私的解釈***
訓読:秋風の 吹きにし日より 何時しかと 我が恋ひ待ちし 君来ませるぞ
仮名:あきかぜの ふきにしひより いつしかと あがこひまちし きみきませるぞ
~~~~~~
8/1524
原文:天漢 伊刀河浪者 多々祢杼母 伺候難之 近此瀬呼
訓読:天の川 いと川波は 立たねども さもらひかたし 近きこの瀬を
仮名:あまのがは いとかはなみは たたねども さもらひかたし ちかきこのせを
***メモ***
訓読:天の川 いと川波は 立たねども さもらひかたし 近きこの背子
仮名:あまのがは いとかはなみは たたねども さもらひかたし ちかきこのせこ
~~~~~~
8/1525
原文:袖振者 見毛可波之都倍久 雖近 度為便無 秋西安良祢波
訓読:袖振らば 見も交しつべく 近けども 渡るすべなし 秋にしあらねば
仮名:そでふらば みもかはしつべく ちかけども わたるすべなし あきにしあらねば
***私的解釈***
修正:袖振者 見可波之都倍久 雖近毛 度為便無 秋祢安良西波
訓読:袖振らば 身交しつべく 近くとも 渡るすべなし 秋音あらにしは
仮名:そでふらば みかはしつべく ちかくとも わたるすべなし あきならにしは
~~~~~~
8/1526
原文:玉蜻蜒 髣髴所見而 別去者 毛等奈也戀牟 相時麻而波
訓読:玉かぎる ほのかに見えて 別れなば もとな恋ひむや 逢ふ時までは
仮名:たまかぎる ほのかにみえて わかれなば もとなこひむや あふときまでは
もとな:わけもなく、しきりに。
~~~~~~
8/1527
原文:牽牛之 迎嬬船 己藝出良之 <天>漢原尓 霧之立波
訓読:彦星の 妻迎へ舟 漕ぎ出づらし 天の川原に 霧の立てるは
仮名:ひこほしの つまむかへぶね こぎづらし あまのかはらに きりのたてるは
校異:<>→天 [類][紀]
***私的解釈***
訓読:彦星の 妻迎へ舟 漕ぎ出づらし 天の川原に 霧の立てるは[霧波立たし]
仮名:ひこほしの つまむかへぶね こぎづらし あまのかはらに きりのたてるは[きりなみたたし]
~~~~~~
8/1528
原文:霞立 天河原尓 待君登 伊徃<還>尓 裳襴所沾
訓読:霞立つ 天の川原に 君待つと い行き帰るに 裳の裾濡れぬ
仮名:かすみたつ あまのかはらに きみまつと いゆきかへるに ものすそぬれぬ
校異:還程→還 [類][紀]
***私的解釈***
修正:霞立 天河原尓 待君登 爲徃<還>尓 裳襴所沾
訓読:霞立つ 天の川原に 君待つと 行き帰らすに 裳裾湿らゆ
仮名:かすみたつ あまのかはらに きみまつと ゆきかへらすに もすそしめらゆ
伊→為。
~~~~~~
8/1529
原文:天河 浮津之浪音 佐和久奈里 吾待君思 舟出為良之母
訓読:天の川 浮津の波音 騒くなり 我が待つ君し 舟出すらしも
仮名:あまのがは うきつのなみおと さわくなり わがまつきみし ふなですらしも
***私的解釈***
修正:天河 浮津之浪音 佐和久奈里 吾待思君 舟出為良之母
訓読:天の川 浮津の波音 騒くなり 吾が待ちし君 舟出すらしも
仮名:あまのがは うきつのなみおと さわくなり あがまちしきみ ふなですらしも




