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令和百物語  作者: みるみる
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第八十四夜 ホームレス


私鉄の駅前広場には、いつも何人ものホームレスがいた。彼らはお互いにニックネームで呼び合い、近くの炊き出し情報を共有したり、病気の時に食べ物を与えやったりして、助け合いながら生きていた。


そんな彼らの間に、最近ある噂が流れていた。


彼らがベンチで寝てたり、落ちてるタバコを拾って吸っていると、スーツを着た若い外人がどこからか現れて、食べ物や飲み物を与えてくれるというのだ。


「ふぅーん、そんな噂があるんだ。‥‥で、皆んな無事なんだよな?後で殺されたりとかっていうのはないんだよな。」


「そうらしいよ。何か気になるよな~。俺達の所にも来ないかな‥。」


俺はつい最近ここの駅前広場にやってきたホームレスの新参者だった。ちなみに、今一緒に喋ってる奴は通称『先生』本人いわく元教師なんだそうだ。


俺も先生も、基本は車で過ごしつつ、洗面や食事等の日中活動は公園で過ごす、いわゆる車中泊ホームレスだった。


俺もつい三ヶ月前までは、まさか自分がホームレスになるとは夢にも思わなかった。


だが、俺のいた飲食業界が慢性的な不景気に陥り、俺のいた店も瞬く間に廃業となってしまい、貯金もなかった俺はアパートの家賃など払うあてもなく、とうとう住む場所を無くしてしまったのだった。


「はぁ、何かいい仕事ないかなぁ。」


思わず独り言を言ってしまった。


その時、俺の肩を叩く者がいた。振り向くと、スーツを着てサングラスをかけた金髪の男だった。


「いい仕事があるんだが、興味ないかい?食べ物や酒もたくさんあるんだが。」


「‥いや、俺はいい。しばらく予定が入っているんだ。」


「‥‥。」


俺が男の誘いを断ると、男は無言で去って行った。


見るからに怪しい男だった。金髪だが、あれは日本人だろう。例の噂の外人かどうかは分からない。


だが、この日を境に『先生』がいなくなった。


先生は、俺が怪しい男の誘いを断った時、自分からその男に声をかけていた。もしかしてそれが原因か?


あれから、とある動画サイトで人気の動画配信者が捕まったとニュースでやっていた。俺の携帯電話でその動画を見てみると、モザイクがかかっていたが明らかに『先生』が映っていた。



「はーい、どうも。ブラックマンです。今日もブラックマンの館に、お客様を連れて来ました。なんと、俺の元担任の先生でーす。先生は今公園でホームレス生活を送っているそうでーす。」


動画の中には椅子に座らされ、下半身をしっかり縄で椅子に固定された先生がいた。


先生の前のテーブルには、大量の食べ物やビールがあった。


はじめはなんて事ない会話と食事風景が映っていたが、段々と残酷な映像に変わっていった。


男の仲間達が先生の背後に現れ、先生が気絶しそうになると、暴行を加えて起こし、先生が嘔吐しても、じょうごを使って口にビールを流し込んでいくのだった。


先生の服は嘔吐物と食べこぼしでベトベトだった。排泄物も垂れ流しだった。とても見られたものじゃない常軌を逸した映像だった。


見ていた視聴者の通報で、彼らは逮捕された。先生は無事だったが、だいぶ衰弱していた為何日か入院したらしい。


逮捕された彼らには余罪があった。これまでにも言葉巧みにホームレスを連れてきては、その人達がガツガツ食べる様子を面白おかしく動画配信していたのだ。


これまでの動画配信では、先生に行った程の残虐性はなかったそうだが、何故先生にあそこまで酷い事をしたのか、その犯行動機については、容疑者は黙秘を貫いているそうだ。被害者の先生も何も語らないという。


先生がホームレスになった理由とも関係がありそうな話だったが‥‥。


先生は駅前の公園にはもう戻る事はなかった。



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